友達が「年金は早くもらった方が良いよ!お得だよ」これって本当ですか?
ファイナンシャルフィールド / 2019年11月12日 23時15分
「年金はもらえるようになったら、早くもらったほうが良いよ」「もらえる金額が少なくなるのは知っているけれど、いつまで生きられるか分からないよ」 年金を繰り上げて受け取っていらっしゃる方は、口々にそうおっしゃいます。早くもらえる分、得した気になりますが、本当にそうでしょうか?
友達が「年金は早くもらった方が良いよ!お得だよ」これって本当ですか?
公的年金は原則65歳から支給が開始されますが、60歳から70歳までの間で受け取り開始を選ぶことができます。
年金開始が65歳より後になると受け取る年金額が増えますが、65歳より前の場合は年金額が減ってしまいます。1ヶ月につき0.5%減額されます。
60歳まで繰り上げて受給する場合、年金額は5年×1ヶ月2×0.5%=30%の減額になります。
確かに3割減っても、65歳になるまでは繰り上げでないと受け取れないので得でしょう。しかし、その減額された年金額が一生涯続くため、ある時点からは繰り上げないほうが受け取る総額が多くなります。
65歳で受給できる年金額をA円、65歳からの年数をXとすると、
0.7A(5+X)=AX X≒11.7
となるため、「65+11.7=76歳9ヶ月」以降は、65歳から受け取りを開始した場合の総受給額のほうが多くなります。
平成30年の簡易生命表によると、日本人の平均寿命は女性87.32歳、男性81.25歳。76歳9ヶ月から4年~10年ほどあります。長生きすると繰り上げによる減額が大きく影響します。
ところで、繰り下げの場合は1カ月につき0.7%の増額です。
70歳まで繰り下げれば5年×12ヶ月×0.7%=42%となるので、同様に、
AX=1.42A(X-5) X≒16.9
となるため、「65+16.9=81歳11ヶ月」以降は、70歳まで繰り下げた場合の総受給額のほうが多くなります。
その他にも、繰り上げ受給のデメリット
繰り上げると早く年金を受け取ることができますが、減額の他にさまざまなデメリットがあります。
まず、前述のとおり、減額された年金を一生涯受け取ることになります(振替加算がある場合は、65歳になると振替加算分が増額されます)。繰り上げ請求をして受理された後で、取り消しや変更はできません。
国民年金の加入期間が40年なく満額を受け取れない場合、任意加入をして65歳からの年金額を増やすことができますが、国民年金に任意加入の方は繰り上げできません。繰り上げ請求後に任意加入はできません。
また、1人1年金が原則です。もし、繰り上げた後で障害を負って障害年金が受け取れる状態でも、障害年金を受け取ることができません。
繰り上げた後で、65歳より前に遺族厚生年金の受給権が発生し、遺族厚生年金を選んだ場合は、繰り上げにより減額された老齢基礎年金は支給停止されます。
65歳から厚生年金部分は有利な方法を選べますが、老齢基礎年金部分は減額されたままです。
特別支給の老齢厚生年金がある場合
そうはいっても、収入が不足して年金に頼らざるを得ない場合もあります。
昭和28年(女性は昭和33年)4月2日以降、昭和36年(女性は昭和41年)4月1日以前に生まれた方には、61歳~64歳の間に特別支給の老齢厚生年金を受給できますが、60歳に繰り上げ受給できます。
この場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金をセットで繰り上げますが、基礎年金部分と厚生年金部分とでは減額率が違います。
例えば、昭和36年3月生まれの男性は、64歳から特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)が支給されます。
そのため、60歳からの繰り上げ請求をした場合、老齢基礎年金については5年の繰り上げですが、老齢厚生年金(報酬比例部分)については4年の繰り上げです。よって、老齢厚生年金は4×12×0.5%=24%の減額になります。
公的年金は国民皆で支え合う保険
公的年金は年金保険です。よって、多くもらわなければ損というものではありません。
老齢年金は高齢により働けなくなった場合の生活を支えるもの。障害年金は、障害を負ったときの生活を支えるもの。遺族年金は、残された遺族の生活を支えるもの。
公的年金は、この3つのリスクのために国民全体で支え合い、支えが必要な人に支給するものです。「万が一」が起こって多くもらえることが得なのでしょうか?
働けなくなる年齢は一人ひとり違います。老後もバリバリ働き、結果的に老齢年金の受取期間が少なくなったとしても、「生きがいを持ち、元気で長く働けたこと」はありがたいことではありませんか。
(引用、参照)
日本年金機構「老齢基礎年金の繰上げ受給」
日本年金機構「繰上げ請求の注意点」
日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」
厚生労働省「1 主な年齢の平均余命」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者
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