お金が貯まる体質になるコツって?貯蓄するときのポイント
ファイナンシャルフィールド / 2019年11月12日 9時0分
前回まで2回、「お金の貯まる体質」になるコツについてお伝えしました。「家計のキャッシュフローと将来の目標」を把握することで「お金を使う目的だけでなく、お金を使わない目的も意識すること」の重要性と、さらになかなか手を付けにくい「固定費」を削減するヒントをご理解いただけたと思います。 もちろん、それぞれの家計で状況は違いますので、すべての人に当てはまるとはいえませんが、これだけ意識するだけでもだいぶ違ってくるはずです。今回はお金の貯まる体質になるための仕上げとして、「まず貯蓄分を差し引く」ことについてお伝えします。
損を避けたがる人の「心理」
「行動経済学」という学問があります。2002年にこの分野でダニエル・カーネマンとバーノン・スミスという学者が「行動経済学と実験経済学という新研究分野の開拓に貢献した」として「ノーベル経済学賞」を受賞しました。カーネマン氏はもともと心理学者ですので、受賞したのが「経済学賞」というのがおもしろいと思います。
それまで人間の経済活動は合理的な判断に基づいて行われると考えられてきたものの、実際には「心理」が深くかかわっていると考え、さまざまな実験などを行い観察された事実を経済活動の分析に取り込んでいくのが「行動経済学」です。
詳細をご紹介することはしませんが、人は心理状況によって必ずしも「合理的」とはいえない行動をします。人がお金を使うときの心理状態はさまざまなものに影響されます。身近な例を挙げてみましょう。
ほとんどのネットショッピングのテレビ番組では、はじめにある商品が非常に良いものであることをアピールします。価格は最後に発表されますよね。
しかも、「いつもなら2万9800円のところ、今だけの特別に1万円引きの1万9800円!」などと一度は発表します。「さらに、今ならさらにこの番組を見た方だけに便利な付属品をお付けしちゃいます!限定1000点のみの特別価格!これはもう今買うしかないでしょう!」などとお得感をアピールします。
この時、人間の心理はどのように変化するのでしょう。まず2万9800円という価格を聞いて「これだけの機能がついてこの価格ならまあ納得だな」と感じるかもしれません。
さらにそこから1万円引きの1万9800円になると聞いて「おっ!この値段なら買っても良いかな。しかも今だけの特別価格、ここで買わないと損かも」などと感じます。さらにおまけもついてダメ押しです。
最初に2万9800円の金額を示すのは「アンカリング効果」という人間の心理を突いたものです。アンカーというのは「錨(いかり)」のこと。もともとの値段を意識させ、安い価格を提示することで安さが強調されて伝わるようになります。
さらに「期間限定」「数量限定」や「おまけ」がつくと「今買わないと損するかも」と感じさせます。人は得することによる喜びよりも損することの痛みをより大きく感じるという「プロスペクト理論」によって購買意欲を刺激されるわけです。
こうしたネットショッピングで買い物をしたことがある人も多いでしょう。そして、その商品が届いた後、「つい買っちゃったけどそんなに必要じゃなかったな」などと感じ、結局ほとんど使っていないというものもあるのではないでしょうか。
筆者自身もかつて、わかっていても買ってしまうことがありました。世の中には「何とか買ってもらおう」とする誘惑がいろいろなところにあり、お金があればついつい使ってしまうのも当然のことだと思います。
お金を貯められる人はお金の使い方が上手な人
形は違うもののこうした誘惑はたくさんあります。誘惑から大切な資産を守り、貯めていくためにはどうすれば良いのでしょう。
世の中にはしっかり資産形成をしている人がいます。そうした人に共通しているのは、お金の使い方が上手な人だということです。決してお金を使わない「ケチ」な人ではなく、使うべきところには使い、必要のないことには使わないと判断できる人です。
そういう判断ができるようになるための一つの方法として、自分自身の資産を「今使っても良いお金」「もしもの事態に備えるお金」「当面使う予定がなく、蓄えておくお金」というふうに分けておくと良いのではないでしょうか。
まず貯蓄分を差し引く
そして、ここからが今回のポイント、「まず貯蓄分を差し引く」ことの重要性です。先ほど3種類に分けたお金のうち、「今使ってもよいお金」を抑え、「もしものためのお金」あるいは「蓄えておくお金」にあらかじめ資金を移しておくことです。
金融機関の口座も分けておくべきでしょう。「もしものためのお金」は例えば、病気になったときや冠婚葬祭の慶弔費、など突発的に発生する費用に対応するためのもの。ですので、いざというときのために引き出しやすい形で貯蓄しておくべきです。
一方、「蓄えておくお金」はすぐに引き出せなくてもよい口座に移します。そして大事なことは、使う前に移すことです。給与が支給されたら自動的に積立できるような仕組みにしておくと良いでしょう。自動積立定期預金・貯金や自動的に投資信託を毎月決まった金額購入する商品もほとんどの銀行などで扱っています。
これらの仕組みを活用しつつ、税制で優遇を受けられるのがつみたてNISAやiDeCoです。つみたてNISAやiDeCoの詳細についてはほかのコラムなどでもたくさん紹介されているのでここでは触れませんが、これらの仕組みは比較的手軽に投資を始め、資産形成を行いやすくするためのものです。
まとめ
前回までのコラムで書いたことを実践することで少し家計に余裕が生まれ、その余裕分を強制的に貯蓄に回すことで資産形成ができるようになるでしょう。貯蓄分を差し引いたあと、限られたお金でやりくりする習慣をつけることで貯蓄・資産形成ができ、家計は着実に「お金が貯まる体質」に改善されていきます。
「うちは毎月カツカツでとても貯蓄に回す余裕がない」と話す方は少なくありません。まず、ご紹介した方法を一つずつでも実践していくことが大切です。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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