103万、130万はどっちが得? 働く主婦が知っておきたい、年収の壁とは?
ファイナンシャルフィールド / 2019年11月15日 10時15分
現在、「働き方改革」が叫ばれ、所得税法や社会保険制度が変化しています。この流れは、労働者の「働き方」に対しても深く関わり、特に、「パートタイム」で働く方の働き方に影響しています。 そこで、「パートタイム」で働く方に影響が出る、所得税法や社会保険制度について説明していきます。
103万円の壁とは?
「103万円の壁」という言葉は、よく聞くと思います。そこで、「103万円の壁」とはどういうものかについてくわしく見ていきましょう。
・103万円の壁とはどういうものか、メリットは何かのおさらい
「103万円の壁」とは、給与収入が「103万円」を超えると、「所得税」が発生するということを指します。具体的には、給与所得から、給与所得控除額(65万円)に基礎控除(38万円)を加えた金額を引いた額が103万円を超えていれば、所得税が発生します。
ここで、「パートタイム」で働く方が103万円以下で働くメリットを挙げると、「パートタイム」で働く人の本人の所得税が発生しないことです。また、夫に「配偶者控除」が適用されるため節税につながり、世帯の収入が増えます。
・103万円の壁に関する改正内容
ここまで、いわゆる「103万円の壁」について書いてきましたが、これについて2018年に所得税法の改正がありました。具体的には、2018年の改正前は、「103万円」を超えると、夫に「配偶者控除」の適用がなくなり、これを超えると「141万円」まで段階的に「配偶者特別控除」が適用されました。
これに対し2018年の改正後は、「103万円」を超えると「配偶者控除」が適用されなくなるということは同じですが、「103万円」を超えると「配偶者特別控除」を適用することになり、「150万円」から段階的に減少し、「210万円」まで適用されることになります。
103万円以下で働いていたけど、130万円くらいまで増やしたい
「103万円の壁」については十分理解できたが、もっと収入を増やしたいと考える方もいると思います。では、「130万円」まで給与収入を増やした場合、どのようなことが生じるか考えてみましょう。
・130万円の壁は103万円の壁とは何が違う
「130万円の壁」とは、年収130万円までの年収の場合、夫の扶養範囲となるため社会保険料を自分で払わなくてよいとされている境界線です。これは、年収103万円未満のときに存在しなかったものになります。
・「130万円未満」まで年収を増やすとどうなるの?
妻が103万円を超えて130万円未満まで年収を増やすと、妻自身の所得税が発生することになります。給与控除の最低額である65万円と基礎控除の38万円の合計額である「103万円」を超えるからです。
・配偶者控除は受けられる?
上記の場合、配偶者控除については、妻の年収が103万円を超えるため受けられなくなります。ただし、「配偶者特別控除」が夫に適用されることになります。なお、この金額は夫の年収により異なってきます。
・もし130万円を超えたらどうなる
さらに、妻の年収が130万円を超えると、夫の扶養の範囲から外れます。そうすると、自分自身で国民年金と国民健康保険に加入することになります。
働く時間はどれくらい増える?
年収が増えた場合に負担する所得税や、社会保険料などの増加額を書きました。同じ時給なそれではどのくらい働くことが可能かなのでしょうか?
・130万円ギリギリまで働くとどれくらい働ける?
最低賃金が最も高い東京都を例にして、東京都の最低賃金の時給1013円で考えます。そうすると、年間約266時間、月に約22時間多く働くことができます。
103万円、130万円の壁に関するよくある勘違い
「130万円の壁」を意識して、夫の「所得控除」の「38万円」がなくなるのでは? と感じてしまう方もいると思います。
しかし、両者は全く違う「境界線」です。年収130万円の方も、夫の「所得控除」は、「配偶者特別控除」の38万円であり、年収103万円未満のときに適用される「配偶者控除」の38万円と変わりません。
これに対し、社会保険料は、年収130万円を超えると自分で支払うことになります。よって、両者を論じるときには、所得税法と社会保険制度を区別する必要があります。
まとめ
「103万円の壁」と「130万円の壁」は、いずれも制度が適用されるかどうかという境目になります。これらの「壁」を超えないように働こうと思う人もいるかもしれませんが、「壁」のギリギリを狙って働くことは、お勧めできる働き方ではありません。
今後も所得税法や社会保険制度に関して、改正がされる可能性があります。その度に、「こういう働き方が効率よく働ける」と考えるのではなく、ご自身やご家庭の事情を考慮し、最もふさわしい働き方を日頃からご家族と話し合ってみるのもよいと思います。
執筆者:伏見昌樹
ファイナンシャル・プランナー
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