親が相続税対策していなさそう…何も対策してなかったら相続税はどれだけかかる?
ファイナンシャルフィールド / 2019年11月20日 22時30分
![親が相続税対策していなさそう…何も対策してなかったら相続税はどれだけかかる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_63125_0-small.jpg)
親が年を重ねるにつれて、親自身はもちろん、子どもの方も相続のことが気掛かりになってくるのではないでしょうか。 親の保有資産の状況がよく分からない人は、例えば、「相続税は課税されるのか」、「節税対策はできているのか」、「手元資金で相続税を支払うことができるのか」といった漠然とした不安をお持ちかと思います。 本稿では、相続税対策を行った場合と、行わなかった場合に税額がどれくらい違ってくるのかを具体例を挙げて示すとともに、子が親に対して相続について考えることを促すポイントを整理します。
相続税対策の効果は?具体的な事例で確認
まずは、具体的な事例で相続税対策の効果を確認してみます。相続税対策については、さまざまな方法が考えられますが、ここでは実行しやすい贈与と生命保険を活用した例を挙げます。
また、試算に際しての前提条件は下記のとおりとします。なお、以下の事例は相続税対策の効果を伝えるための簡易的な試算であり、記載した以外の条件は考慮していません。
<前提条件>
・法定相続人は子が1人
・現時点における保有資産の相続税評価額は、不動産3000万円、現預金5000万円の計8000万円。
相続開始時点においても保有資産の総額は変わらないと仮定。
試算結果は下表のとおりです。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2019/11/75e53d4448e1e2458319d198b7c42715-32.jpg)
【ケース1】は相続税対策を全く実施しなかった場合で、相続税が680万円課税されます。
【ケース2】は相続税の節税を考える際の鉄則である「時間をかけて少しずつ財産を承継する」ことを実践した例です。
生前から少しずつ贈与を行うことで相続財産を減らし、その結果として相続税額が引き下げられることをねらったものです。
このケースでは、10年間にわたって贈与税の基礎控除額である110万円を毎年、子に贈与することとします。その後、相続が開始したときの課税遺産総額は、贈与により1100万円減少し、6900万円になります。
これに伴い、相続税額は460万円になります。何も対策を行わなかった【ケース1】の場合と比較すると220万円の減少です。なお、基礎控除の範囲内で贈与を行っているため、贈与税は課税されません。
【ケース3】は【ケース2】よりも毎年の贈与額を増やして、年間310万円を贈与した場合です。相続の際の課税遺産総額は贈与により3100万円減少し、4900万円になります。このときの相続税額は145万円です。
ただし、毎年、基礎控除額を超えて贈与する前提であるため、贈与税が毎年20万円、10年間で計200万円が課税されます。相続税と贈与税を合わせたトータルの課税額は345万円となり、【ケース1】の場合と比較して335万円減少します。
このケースでは、相続税の限界税率(適用される税率区分の中で最も高い部分の税率)が15%になるのに対して、贈与税率が10%に収まる範囲で贈与を行っています。
このように相続税よりも贈与税の方が低い税率となる範囲で贈与額を増やすことで、さらなる節税効果を期待できます。
【ケース4】は、【ケース3】の贈与に加えて、生命保険の非課税枠を活用する例です。すなわち、契約者(保険料負担者)と被保険者が被相続人であり、保険金受取人が相続人である場合は、「500万円×法定相続人の数」が非課税となりますので、これを利用した節税策になります。
ここでは契約者(保険料負担者)と被保険者を親、保険金受取人を子として、保険金額が500万円、保険料が450万円の生命保険契約を締結したものとします。
このときの相続税額は85万円、贈与税額は200万円で、トータルの課税額は285万円となります。【ケース1】の場合と比較すると課税額は395万円減少します。
以上のように、この事例では、相続税対策を行うかどうかで400万円近くの税額の差が生じる場合があり、節税対策の重要性についてご理解いただけるかと思います。
親とともに相続について考えるために
相続に関する話題については、非常に重要なことであるにもかかわらず、デリケートな部分があるため子から親に話をもちかけにくい面があるかと思います。
しかし、相続の内容によっては、財産を継承する側の子に対して大きな影響を与える場合があります。例えば、前項の試算結果から分かるように、親世代が適切な相続税対策を行っていない場合は、継承できる財産の額が大きく変わります。
また、親の保有資産が不動産に偏っていて流動性に欠けるようなときは、すぐに現金化できないため、親の資産をそのまま相続税の支払いに充てることが難しい場合があります。
あらかじめ子自身が納税資金を準備しておかないと、相続の際に相続税の支払いができず困ることになります。このようなことから、子の側からも親にうまく働きかけて適切な対策を行うよう促していく必要があるのです。
そのためにも、単なるお金の話とするのではなく、親の老後のライフデザインやリタイアメントプランなどの意向を聞きながら、その一環として、相続についても併せて考えるというかたちをとると相談しやすいでしょう。
その際には、子の側も自身の保有資産をしっかりと整理したうえで、相談に臨むといった姿勢も必要です。あくまで、親と子の双方にとって「将来に対する安心感を得る」という共通の目的があることを説明したうえで、一度、話し合いの機会を設けてみてはいかがでしょうか。
執筆者:廣岡伸昌
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)
宅地建物取引士 ※試験合格
貸金業務取扱主任者 ※試験合格
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