【パート・主婦の年収の壁】配偶者控除を受ける為の年収ラインをFPが解説
ファイナンシャルフィールド / 2019年11月27日 10時0分
最近では、家計の事情などから夫婦共働き世帯が多くなっています。そうなると、夫(妻)の稼ぎのみならず、配偶者の稼ぎによって、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の適用金額が変わり、世帯で納税する「所得税」の金額が変わってきます。 そこで、所得税のうち配偶者が受けられる「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の制度について見ていきましょう。
配偶者控除とは?
配偶者控除とは、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられる、所得控除項目の一つです。
・配偶者控除を受けるための条件
控除対象配偶者となるのは、その年の12月31日時点で、次の四つの要件すべてに当てはまる人です。
(1)民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)
(2)納税者と生計を一にしていること
(3)年間の合計所得金額が年収38万円以下(2020年以降は年収48万円以下)であること
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の条件が改正
前述したように、家計の収入が共働きによってもたらされることが多くなり、多様な働き方をする世帯が増えてきました。これを契機に、2018年に「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の改正が行われました。
これに伴い、以下で書く「年収103万円の壁」や「年収130万円の壁」をよく耳にすると思いますので、これらについて解説することにします。
・「年収103万円の壁」とは?
配偶者がパートで働く主婦などで、その給与所得が103万円以下である場合、自分の所得税を支払う必要がなくなります(基礎控除38万円と給与所得控除65万円の合計である103万円で、給与所得がすべて控除できるため)。そして、夫の所得控除に配偶者控除の適用があることを意味しています。
・「年収150万円の壁」とは?
前述の「配偶者控除」の適用のある「年収103万円」に加えて、2018年から「年収150万円」を超えると「配偶者特別控除」が段階的に減少する分岐点となりました。
・「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の控除額とは?
「配偶者控除」は、年収103万円までは、38万円になります。これに対し「配偶者控除特別控除」は、年収103万円から年収150万円までは38万円ですが、年収150万円を超えると段階的に減少していき、年収201万円を超えると控除額がゼロになります。上記は控除を受ける納税者の合計所得金額が900万円以下(年収換算1110万円以下)の場合です。
・改正して変わった点・変わらない点
(1)2018年に改正した点
2017年以前は、「配偶者特別控除」の段階的減少額が「年収103万円」であったものが、「年収150万円」に引き上げ
(2)変化のない点
・給与所得から所得税が発生するか否かの分岐点である「年収103万円」
・条件を満たす企業でアルバイトしている人の場合、「年収106万円」を超えるとその企業の社会保険に入らなければならなくなる
妻の年収でこんなに変わる? 世帯の手取り額
(1)ケース1
・夫の年収:500万円
・妻の年収:103万円
・住まい:東京都(勤務先は同一市町村)
このケースは、配偶者の年収から所得税や社会保険料が控除されないため、妻の年収が世帯の手取りを増加させるケースです。
(2)ケース2
・夫の年収:1000万円
・妻の年収:108万円
・住まい:東京都(勤務先は異なる市町村)
このケースは、夫の年収が、1000万円となっているため、夫に配偶者控除および配偶者特別控除が適用されなくなります。また、妻の年収は、ケース1と異なり108万円なので、所得税と社会保険料が発生します。
加えて、妻は、遠方より勤務しているため、交通費が多額になると、交通費の支給により年収が多くなることに注意が必要です。
(3)ケース3
・夫の年収:900万円
・妻の年収:210万円
・住まい:青森県
このケースは、妻の年収が210万円であるため、夫の配偶者特別控除が適用されなくなり、夫の手取り額が減ります。また妻は、最低賃金が最も低い青森県で勤務しているため、最低賃金が最も高い東京都で勤務するよりも長い時間働くことができます。
配偶者控除のFAQ
Q1 内縁の妻は配偶者控除の対象になるの?
A1 内縁の妻は、民法上の婚姻関係にあるものに該当しないため、配偶者控除の対象になりません。
Q2 配偶者控除を受けるための手続きとは? (夫が会社員の場合)
A2 会社から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する必要があります。また、この書類を年末調整が行われる12月までに提出することになります。
Q3 配偶者控除を受けるための手続きとは? (夫が個人事業主の場合)
A3 事業を開始する際に国税局に提出する「開業届」を提出し、「青色申告」をする必要があります。ただし、夫に妻が雇われていて、その年に給与を一度でも受け取った場合は、「配偶者特別控除」を受けることができなくなるので注意が必要です。
まとめ
今回、配偶者にまつわる税制について見てきました。しかし、所得税・住民税を計算するために必要となる所得控除は、まだほかにもあります。各種所得控除を受けようとするためには、一定の要件を満たす必要があります。
これを考慮すると、働き方や家計に影響を及ぼします。日頃から「税金の損得」のみならず、家族にとってどういう働き方が適しているのか話し合う必要があるといえるでしょう。
執筆者:伏見昌樹
ファイナンシャル・プランナー
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