老後資金2000万円問題。年金は本当に100年破綻しないのか?
ファイナンシャルフィールド / 2019年12月4日 8時30分
![老後資金2000万円問題。年金は本当に100年破綻しないのか?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_64232_0-small.jpg)
老後資金2000万円問題が国会で審議されたとき、安倍晋三首相は「年金100年安心」と答弁しました。本当に年金は100年破綻しないのでしょうか? その答弁の根拠となったのが、マクロ経済スライドです。その仕組みを簡単に解説したいと思います。
マクロ経済スライドとは?
マクロ経済スライドとは、厚生労働省のHPによると、「『社会全体の公的年金制度を支える力(現役世代の人数)の変化』と『平均余命の伸びに伴う給付費の増加』というマクロでみた給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組み」と説明されています。
こう言われてもよく分からないかもしれませんが、現在の年金は賦課方式で世代間扶養ですから、お金を稼いでいる現役世代が、すでに引退した老齢世代に給付される年金を支える仕組みになっています。
現在の日本における問題は、少子高齢化により年金を支える現役世代が徐々に減少し、年金を支える資金が先細りになっていく一方で、支えられる立場の老齢世代が増加して年金給付額が増加しているのです。このアンバランスを解消しようとする仕組みが、マクロ経済スライドです。
物価や賃金が上昇したときは?
本来、年金給付額は物価や賃金の上昇に伴って上がっていかなければなりません。ところがマクロ経済スライドの仕組みは、物価や賃金が上昇した場合でも、その上昇率の全てを年金の給付額に反映せず、一部を差し引いて、将来の年金給付額の原資とするものです。
式で表すと次のようになります。
年金給付額=前年の年金給付額×(物価または賃金の上昇率-マクロ経済スライドによる調整率)
マクロ経済スライドによる調整率=「公的年金全体の被保険者の減少率の実績」+「平均余命の伸びを勘案した一定率」
ですから、マクロ経済スライドは、物価・賃金の上昇率から、年金保険料を支払う現役世代の減少率と平均寿命の伸びに相当する比率を引くという仕組みということになります。
物価や賃金が下落したときは?
物価や賃金が下落したときは、実際の賃金の下落率に従い、年金給付額も減少します。この場合は、調整率を引くことまではしません。
まとめ
簡単に言えば、マクロ経済スライドは、物価または賃金の上昇分を全て年金の上昇に反映せず、それにより獲得した原資を使って、年金制度の延命を図るものです。具体的には100年後に年金給付費1年分の積立金を持つことができるように設計されています。ですから、「年金は100年安心」ということになります。
ただし、物価や賃金の上昇に従って、年金給付額は上昇せず、実質的に目減りすることになります。その減少率を何とか抑えるためには、現役世代の人口や労働参加人口の増加と経済成長率の上昇が必要です。
そう考えれば、現在政府の行っている年金に関する施策の理由がみえてきます。定年延長は、年金保険料の増収を意図したもので、最近報道されているパート厚生年金を従業員501人から50人超の企業へ拡大しようという動きも、それにより、厚生年金保険の被保険者を増やし、年金保険料の増収を図ろうというものです。
しかし、悪いことばかりではなく、経済成長による賃金の上昇や被保険者数の増加が実現すれば、マクロ経済スライドの調整期間が短縮され、将来的に年金給付額が増えることもあるというシナリオも2019年度の厚生労働省作成の「2019(令和元)年財政検証結果のポイント」に明記されています。
厚生労働省 いっしょに検証!公的年金 「マクロ経済スライドってなに?」
日本年金機構 マクロ経済スライド
厚生労働省「2019(令和元)年財政検証結果のポイント」
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
関連記事
今さら聞けない年金の話「マクロ経済スライドって、私たちの生活にどう影響するのですか?」
【2019年】公的年金の受け取り額が800円上がる理由
えっ!年金定期便に記載通りの金額は貰えない?その理由はこの2つ。
この記事に関連するニュース
-
80歳以上長生きするなら年金は69歳受給開始がお得…いつ受け取ればいいか一目瞭然の「損益分岐点一覧表」
プレジデントオンライン / 2024年7月18日 8時15分
-
月収30万円、32歳サラリーマン…最新の政府試算で判明した、65歳でもらえる「衝撃の年金額」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月5日 5時15分
-
順風満帆の老後のはずが…月収65万円・59歳の勝ち組サラリーマン、〈まさかの年金減額〉に悲鳴「なにかの間違いでは」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月4日 11時15分
-
年金水準、30年後に2割低下 「現役収入の半分」は維持
共同通信 / 2024年7月3日 13時31分
-
【令和6年度改定】「年金額」「国民年金保険料」「在職老齢年金」について確認してみよう!
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月27日 9時30分
ランキング
-
1物議醸す「ダイドー株売却」の内幕を丸木氏語る 大幅増配公表直後で批判を向けられた物言う株主
東洋経済オンライン / 2024年7月19日 18時0分
-
2「みんなの意見は正しい」はウソである…ダメな会社がやめられない「残念な会議」のシンプルな共通点
プレジデントオンライン / 2024年7月20日 16時15分
-
3システム障害、影響続く=航空便、正常化に数日
時事通信 / 2024年7月20日 9時40分
-
4AI利用で6割が「脅威感じる」 規則・体制整備に遅れも
共同通信 / 2024年7月20日 16時50分
-
5セキュリティーソフト世界シェア1位があだ…ウィンドウズ障害、「過去最大規模」の見方も
読売新聞 / 2024年7月20日 6時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)