中学受験のために月5万円以上の塾代を出す家庭も…考えたい子どもの教育と受験費用のこと
ファイナンシャルフィールド / 2019年12月10日 9時30分
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2020年度から始まる大学入学共通テストで予定されていた英語の民間試験の活用の見送りが発表されました。直前に見送りとなった要因はさまざまありますが、地方在住者も受けやすい会場数の確保や家計が苦しい生徒の受験料の軽減策が進まなかったことが挙げられます。 筆者自身、子育て家庭として、そしてファイナンシャルプランナーとしてもお金と教育について考えるべき出来事です。
地方在住者の負担が大きくかつ不公平な制度
今回見送られた制度は「読む・聞く・書く・話す」の4技能をテストするため、英語の民間試験を活用し、2020年4~12月の間に受験生が最大2回受験するものでした。東京をはじめとする首都圏・大都市に住んでいる生徒は、試験会場も実施回数も豊富で、近くて便利な会場と日程を選ぶことができます。
しかし、地方在住の生徒はそもそも試験会場が県庁所在地や大都市にしかなく、交通費や宿泊費の負担が大きくなります。移動時間も長くなりますし、試験日程が少なく部活動の大会等と重なればさらに選択できる日程が少なくなります。地方在住の生徒は十分な準備が整わない中で、限られた受験可能な試験日程を選ばざるを得ないかもしれません。
また、高校1年生や2年生の頃から何度も英語の民間試験を受けることができるため、首都圏・大都市に住む高校生は数百円の安い交通費かつ多くの日程から負担の少ない日程を選んで事前テストを受けることができます。つまり「試験慣れ」することができます。
しかし、地方在住の高校生は一度「試験慣れ」するためには、数万円の交通費・宿泊費と日程調整が必要となる場合もあり、とても不公平です。今回の導入はしばらく延期となりましたが、どのように不公平を解消していくのか注目です。
受験費用の他にも多額の教育費
英語の民間試験の「試験慣れ」には受験料もかかるため、裕福な家庭は何回も試験慣れのための受験ができるという点も不公平と指摘されました。しかし、裕福な家庭ならば子どもが小さな頃から塾や家庭教師の費用を払えるという根本的な不公平は数十年前から続いています。
1970年代の「一億総中流」と呼ばれた時代では、教育への費用負担の格差はそれほどではありませんでした。しかし、ちょうどその頃の第二次ベビーブームの子どもたち、いわゆる「団塊ジュニア」が成長していくにつれて受験戦争という言葉が広がり、受験のための塾や家庭教師への支出が増えていきました。
今回の導入は延期となりましたが、2020年度の導入を信じて長年準備をしてきた生徒や保護者も多くいらっしゃるでしょう。裕福な家庭のみならず、英語の民間試験対策のために厳しい家計の中から塾代や受験費用を捻出した方もいらっしゃるかもしれません。子どもの受験勉強への支出が、実のある支出となる確実性が無いことがわかる出来事でもありました。
中学受験のための教育費
かつては受験は高校受験からでしたが、今は中学受験・小学校受験も珍しくありません。中学受験のためには、多くの子どもたちが小学校低学年の頃から夜遅くまで塾で勉強や習い事をしています。
子どもが希望しての勉強ならともかく、親の思いだけで子どもから友達と遊ぶ時間を奪い、多額の塾代等を家計から無理に捻出して長年塾に通わせるべきかはよく考えるべきだと思います。ご相談者の中には1人月額5万円以上を中学受験のための塾代等に何年も支出している方もいらっしゃいました。
確かに多額の塾代を支払っても無事中学受験に合格し、系列校への推薦等で高校受験や大学受験の負担が軽くなればメリットも大きいでしょう。しかし、中学受験で不合格となったときにしっかり家族が円満な状態でいられるでしょうか。
さらに何年も高校受験・大学受験に向けての塾代で家計に無理が出てこないでしょうか。そこまでしっかり考えたうえで中学受験のための塾等の利用と支出を考えてください。そして、受験のための勉強だけではなく、将来生きていくためや好きな仕事をするための勉強をすることも大切ではないかと考えることも必要です。
親が子どもに教える時間を大切に
前回の記事で、幼児教育・保育の無償化について記載したとおり、0歳~2歳児は住民税非課税世帯以外は無償化の対象外です。その時期の働き方を変えて保育所に預けずに親元や自分たちで育児をする時間を増やしていく生き方や子育て方法を選択できるかもしれません。
副職として自宅でできる仕事を始めることもできます。子どもがある程度大きくなっても塾や習い事教室に任せっきりにするのではなく、自分たちで書店や図書館で本を選び、手にとって子どもたちと一緒に学んでいく子育て・教育方法もあります。
政治の事情で変わる受験制度に振り回されることなく、教育業界の宣伝に惑わされずにしっかりと家計、子育て、教育方針、子どもの将来を家族で話し合っていくことが素晴らしいライフプランニングにつながります。
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士
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