騙されないために知っておきたい不動産業の実態(3)~「未公開物件」「物件の囲い込み」とは?~
ファイナンシャルフィールド / 2019年12月25日 9時30分
街を歩いていると「未公開物件」という触れ込みのチラシなどを見かけます。「未公開」と聞くと「プレミア感がある」「掘り出し物」という特別感を感じるかもしれません。しかし、ここにも人の心理を狙ったカラクリがあります。 また、宅建業者が何としても「両手取引」に持ち込むためにお客さまの希望に反して「物件を囲い込む」行為が今も少なくありません。 今回は「不動産業の実態」シリーズの最終回として、これらの実情と宅建業者に仲介を依頼する際に心得ておくべきことについて、ファイナンシャル・プランナーであり、宅建マイスター(上級宅建士)でもある筆者からお伝えします。
ときどき見かける「未公開物件」とは?
電柱などに「未公開物件」と書かれたチラシの入った袋などがぶら下がっているのを見たことはありませんか? そもそも、電柱に貼ってあったりするチラシの多くは「不動産広告の表示規約」に違反したものです。
それはさておき、「未公開」というのはどういうことでしょう。「未公開物件」とは、「他の業者では手に入らない物件情報」「ほかの業者に公開していない物件情報」という意味です。
つまり、前回までにご紹介した不動産業者間の物件情報共有サイトであるレインズに掲載していない物件と言い換えても良いでしょう。
新築マンションや新築戸建住宅を自社で開発し分譲する業者の場合、販売するのは自社が所有している物件、すなわち「業者が売り主」の物件です。この場合、不動産業者に仲介手数料を支払って媒介を依頼する必要はなく、レインズに情報を掲載する義務もありません。
自社による販売活動を行っている期間は、自社で独占して販売できます。確かにほかの不動産業者では情報がありませんので「未公開」ということになるのです。こうした自社物件を販売する業者が、当初設定した価格で売却できれば売り主も買い主も仲介業者に手数料を払う必要がなく、買うほうも得なように感じます。
確かにそういう側面もあるのですが、不動産は唯一無二のものであり、その不動産につけられた価格が適正なものなのかどうかを一般の人が判断するのは難しいでしょう。高めに設定された価格であることも十分に考えられます。
自社の不動産を販売する業者は一定期間自社独占の未公開物件として販売活動を行い、一定期間売れなかった場合には価格を下げたり、物件情報を「レインズ」に掲載したりして「公開情報」に切り替え拡散します。
レインズに掲載されている「業者が売り主」の物件情報を見た業者が買い主を見つけた場合、その業者は売り主である分譲会社と買い主の双方から手数料を得ることができます。仲介業者にとっては両手取引ということになります。
こういう場合、良心的な業者は「買い主からは仲介手数料を受領しない」あるいは「片手分相当額を物件価格から値引きするよう売り主と交渉する」などで還元したりするケースもあります。
今もはびこる悪質な業者の「囲い込み」
「未公開」にはもう一つ、「不動産を買いたい」と考えている人からの直接の問い合わせに対してのみ「これは未公開の物件です」として紹介し、業者からの問い合わせには対応しないケースがあります。
先述のように「専属専任」「専任」の媒介契約を結んだ場合、業者は原則として一定期間内に「レインズ」に登録することを義務付けられています。レインズは売却不動産の情報を広く業者間で共有し、売り主の希望に合う条件で購入を希望する買い主とスムーズにマッチングすることを目的としています。
媒介契約締結後はなるべく早く公開すべきなのですが、宅建業者には情報公開の前にやらなければならないことがあります。それは「物件の調査」です。本来、調査結果は物件価格に影響するものでもあり、査定前に行うべきものともいえますが、「無料査定」「簡易査定」の段階では多くの場合「机上」での調査にとどまります。
媒介契約を締結した後に業者は、現地やその周辺はもちろん、役所での敷地に係る規制や道路に関する調査、関連するインフラなどの敷設引込状況などさまざまな調査を行います。物件によってはかなり多くの調査項目にわたることになるため、すぐには公開できない事情もあるので「一定期間」が定められています。
業者には媒介契約締結後「専属専任」であれば5日以内、「専任」であれば7日以内にレインズに公開することが義務付けられています(一般媒介契約の場合は公開そのものの義務がないことは先述のとおりです)。
ところが、レインズは不動産業者しか見ることができないことから、この期間内に公開しない業者もあります。
また、公開していても業者からの問い合わせに対して「すでに買い主と交渉中」などと答えたり、悪質な場合、担当者が逃げて話ができないようにしたりするなどして、業者への情報提供を行わない悪質な業者も存在し、問題にもなっています。
このように本来公開すべき情報を公開せず、あるいは公開してはいるものの事実上情報提供をシャットアウトし、情報を独占している状態のことを業界では「囲い込み」といいます。
媒介契約を結んだ際、売り主は「レインズに情報を公開したら証明書をください」と伝えてください。業者は売却物件の情報をレインズに公開すると、公開したことの証明書をダウンロードできます。これを行うだけでも囲い込みの手段の一つは防ぐことができます。
ただし、一度情報を公開し、証明書の発行(ダウンロード)後に非公開にしてしまうことも可能ですし、他の業者に情報提供を拒むケースなどの行為に対して売り主にはそれを防ぐ有効な対策がありません。最終的には「その業者が信頼できるか、本当に売り主のために尽くしてくれるか」を見極める必要があります。
まとめ
宅建業者の良しあしを一般の方が判断するのはとても難しいことです。不動産の購入・売却を考えていらっしゃる方には「有名な会社だから」という基準ではなく、お客さまに親身に対応してくれる不動産屋を探すことから始めていただきたいと思います。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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