法改正でも意外と難しい自筆証書遺言。家庭裁判所の検認が必要って知ってましたか?
ファイナンシャルフィールド / 2019年12月29日 9時0分
遺言の方式には、本人が自筆で書く「自筆証書遺言」、本人の口述を証人立ち会いのもと公証人に書かせる「公正証書遺言」、本人が自筆で書いたものを証人、公証人の前で住所、氏名、日付等を記入して封印する「秘密証書遺言」があります。 この3種類の遺言のなかで「自筆証書遺言」は、費用もかからず、手軽に書けると思われがちですが、意外と難しい面があります。2019年の相続法改正で自筆証書遺言の書き方と保管方法が変わった内容を中心に、そのほか注意したいポイントをまとめました。
財産目録はワープロ作成が可能になりました
自筆証書遺言は、本人が遺言本文、日付、氏名等を自筆で記入し、印鑑を押して作成します。
日付は、「何年何月何日」や「何年何月の誕生日」などの書き方なら、記入した日にちが特定できるので大丈夫ですが、「何年何月吉日」などとしてはだめです。
印鑑は実印でなくても良いのですが、なるべく本人を特定できるものにしましょう。母印でも可能です。
このように自筆での作成が原則とされている自筆証書遺言ですが、相続法が改正されたことで、2019年1月13日から、財産目録に関してはパソコンやワープロで作成したり、不動産の登記事項証明書や銀行の預金通帳をコピーして添付することが可能となりました(※1)。
ただし、本文とは別の用紙で作成し、すべてのページ(両面の場合は両面)に本人の署名と押印が必要です。また訂正する場合は、本文と同じように変更場所を指示し、理由を書いて署名し、変更箇所に押印しなければなりません。
遺言執行者と付言事項
遺言書の体裁のほかにも、信頼でき、相続の実務に詳しい人(法人でも可)を遺言執行者として事前に依頼し、遺言書に書いておくことが重要です。遺言執行者を書かないと法的に無効になるわけではありませんが、遺言の内容を確実に実行してもらうには遺言執行者を書いておくことをお勧めします。
相続人の間で「争族」とならないために、なぜそのような遺言内容となったかという理由を一緒に書くことを、「付言事項を書く」と言います。例えば、孫にも財産の一部を相続させたい場合などでは、最後に(付言事項)として「孫のXXにYY万円を相続させる理由は、小さい頃から一緒に暮らしてきて、今まで自分が面倒を見てもらっていたからです。」などと書いておきます。
こうすれば、相続人の全員が納得することでしょう。ただし、付言事項に法的な効力はありません。
保管がより安全になります
従来から遺言書の保管には苦労がつきものでした。火災や盗難から守るために金庫に入れたり、誰かに改ざんされないように秘密の場所に隠したりするのです。
しかし、いざ亡くなったときは、相続人が発見し、読んでもらわなければ意味がありません。信頼できる人に預けても、その人が先に亡くなる可能性もあります。
そんなわけで、2020年7月10日より新しい保管制度が施行されます。自筆証書遺言の保管を法務局に依頼することができるのです。ただし、遺言書は封のされていない法務省令で定める様式に従って作成しなければなりません。
また、申請は必ず本人が法務局まで出向いて手続きをする必要があり、仮に入院中であっても、代理人では受け付けてもらえません。
法務局では様式のチェックをおこない、原本を保管すると同時に画像情報等も保管します。また、これにより家庭裁判所での検認も必要なくなります。詳しくは法務局のホームページ(※2)を参照してください。
家庭裁判所の検認が必要
自筆証書遺言には家庭裁判所の検認が必要です(※3)。遺言書を発見した相続人は速やかに家庭裁判所に検認の申請をしなければなりません。勝手に遺言書を開封して執行してはならないのです。
家庭裁判所では、遺言書の様式が正しく書けているか、偽造されたものでないかなどを確認します。また、封印のある遺言書は、相続人立ち合いのもと家庭裁判所で開封しなければなりません。
終わりに
自筆証書遺言は手軽に書けるように思われますが意外と難しいところがあります。せっかく書いた遺言書が無効になったりしないためにも、なるべく弁護士や相続診断士などの専門家に相談して書くことをお勧めします。
出典
(※1)法務省 自筆証書遺言に関するルールが変わります
(※2)法務省 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度について
(※3)裁判所 遺言の検認
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)
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