最高裁が正式に「養育費算定表」の改定を発表
ファイナンシャルフィールド / 2020年1月8日 10時15分
離婚後、配偶者から受け取る『養育費』。東京都・新宿に事務所を構える私の下に相談にくる方の多くは首都圏で暮らしています。 物価の高い首都圏に住む方には、全国統一の養育費算定表はかなり酷なもの。夫婦問題関係者の間では、以前から物議がありました。その養育費算定表度改定が、この度発表されました。
養育費・婚姻費用の算定表、改定の概要
最高裁は令和元年11月12日、養育費の算定表の改訂版を12月23日に公表すると発表しました。報道内容によると、改訂版では社会情勢により「最低生活費」の変化を反映させる見通しだそうです。
現在のものは低額で「シングルマザーの貧困を招いている」と、評判はよくありませんでした。実は今までの算定表は、有志の方により作られたものだったとか。そこでこの度、算定表が改定され、正式に最高裁が公表することになったそうです。
裁判所のホームページのトップページを見るとよくわかります。そこには「東京および大阪の家庭裁判所所属の裁判官を研究員とする司法研究が行われてきた」「その研究報告が公表される予定となりました」とあります。
そうなのです、この算定表は、裁判所の目安としての資料の一環に過ぎません。ですから、この算定表の金額が法律で決められているわけではないのです。
他にもある“算定表”
すでに弁護士さんの中では、他の算定表を使用されている方もいます。
前述した「有志の方が作った算定表(裁判所の算定表)」とは、2003年に「判例タイムズ1111号」に発表されたものです。判例タイムズとは、法律の実務家(おもに弁護士・裁判官・検察官など)向けに全国の判例情報と実務に役立つ論文を掲載した月刊誌です。
しかし、日本弁護士連合会は、2018年2月、新しい算定表を発表しました。それが「新・算定表」です(※1)。
裁判所の「算定表」を目安にする弁護士が多いと思われますが、日本弁護士連合会の「新・算定表」は従来のものに比べると、かなり大きな金額となっています。日本弁護士会は、この「新・算定表」を公表するまでに、全国の弁護士会・研究者・行政機関などに意見を求めるなどして研究を深めたそうです。
このように、“婚費”・“養育費”が改善されるのは喜ばしく、今後シングルマザーの貧困問題にも歯止めがかかるかもしれません。
現場での養育費あるある
離婚時の養育費は、できたら口約束ではなく“公正証書”を作成しておくことをおすすめします。理由は「不払いがあるから」です。
厚生労働省発表の「平成28年度 全国ひとり親世帯等の調査の結果」などによると、養育費を受けたことがない人は全体の56%。現在も養育費を受けている人は24.3%となっています。
この数字の裏を返せば、44%の人が離婚当初は養育費を受けていたのに、そのうちの約20%の人において、その後受け取れなく(支払われなく)なったというわけです。筆者自身も関係者からよく聞きます。
特に、元夫が再婚すると「止まった」というケースが多いようです。心理的にも経済的にも厳しいのでしょう。
口約束ではなく“公正証書”で約束する
離婚をする際に口約束、または一筆書いてもらい養育費の約束をする人もいるでしょう。しかし、これだけ不払いが多いのです。そこは対策が必要です。
筆者は仕事柄、企業の総務担当者にお目にかかることが多いのですが、その方々いわく「元妻から給与の差し押さえ請求がくる」ということは珍しくないそうです。
この「給与の差し押さえ」は、どうすれば行われるのでしょうか。それは“公正証書”を作成しているということです。“公正証書”には執行力があります。裁判の判決と同じこと。ですから給与の差し押さえ請求ができるのですね。
弁護士・行政書士、または夫婦問題に強いカウンセラーは、離婚問題に強い士業の方とつながっていますから、離婚を考えていて、かつ養育費に対して心配のある方は、一度相談に行かれると良いかもしれません。
また、相手に非がありその割合が大きい時の離婚では、“養育費保証制度”の加入を条件にしてはいかがでしょうか? こちらに関しては、以前のコラムをご参照ください(※2)。
別れても父親と母親には変わりはないはずなのに、お金のことでもめるのは嫌なものです。ケジメはケジメとして、準備を整えてください。
(※1)日本弁護士連合会発表「養育費・婚姻費用の新算定表とQ&A」
(※2)ファイナンシャルフィールド「【逃げ得】を許さない。養育費の未払いの実態と対策方法」
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
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