これも一種の「シェアリング・エコノミー化」 ~お坊さんもネットで手配できる仕組みとは?
ファイナンシャルフィールド / 2020年1月9日 9時15分
「人生100年時代」といわれる長寿高齢化が進展したことで、人口に占める高齢者層の割合が増えて「多死社会」が進んでいるとも指摘される昨今です。人が亡くなれば葬儀がとり行なわれ、その後も節目ごとに法要・法事をいとなむケースが多いと思われます。
葬儀等は、どんな形で実施されるの?
葬儀やその後のセレモニーのやり方はいろいろありますが、仏式が多いといわれています。しかし、核家族化、都市化など社会のスタイルも大きく変容しており、「菩提寺と檀家」の関係に基づいて葬儀や法要等を実施する家庭は、決して多くないような気がいたします。
仏式の葬儀では、戒名の授与や読経をしてもらうケースが大半です。近年では、先祖の位牌を納めている菩提寺がなく、葬儀業者の紹介で派遣された(面識もない)お坊さんにお願いする場合も多いでしょう。
その後の法要でも、葬儀のときの方に再依頼する場合もあれば、別のお坊さんを改めて手配することもあります。
ネットでお坊さんが手配できる仕組みとは?
お坊さんを手配する場合、何かのつてを頼ることもあるでしょうが、今や簡単にネットで見つけることができます。
例えば「葬儀 法要 お坊さん」でネット検索すると、かなりのヒットがありました。そのひとつを詳しく見てみると、まずメニューとして、(1)お葬式の読経、(2)戒名の授与、(3)法事・法要の読経 の3つが設定されています。
(2)では宗派ごとに費用が明示され、代表的な戒名は次の通りでした。
(信士・信女) 2万円
(居士・大姉) 6万円
(院居士・院大姉) 20万円
また(1)・(3)の読経の費用も定額。一部を例示してみましょう。
<お葬式>
・一日葬
(告別式・火葬場) 6.5万円
・家族葬
(お通夜・告別式・火葬場) 14万円
<法要>
・四十九日 3.5万円(利用2回目以降は4.5万円)
・一周忌 3.5万円(利用2回目以降は4.5万円)
・三回忌 3.5万円(利用2回目以降は4.5万円)
いずれも、「お車代」・「お膳料」・「心付け」・「お布施」などを含めた数字でした。
これまでは、お坊さんに渡す費用には明確な価格表がなく、“お気持ち次第“とあいまいにされることもしばしば。一方で、ランクや相場がかなり大きな幅の中で語られたりするなど、ともすれば不明瞭な印象がありました。
葬儀業者から提携するお坊さんを紹介されて面会したところ、業者のスタッフは「あくまでもお気持ちです」といいつつ相場めいた数字を耳元でささやき、「居士」の戒名に数十万円を支払った、というケースを耳にしたこともあります。
それが今やメニューごとに込み込みの定額費用で明示され、しかも現金払いだけではなくてカード払いや後払いができる場合もあるなど、ちょっとした“買い物感覚”で利用できるようになっているのです。
もちろん、運営する業者が提携している寺院などの正式な宗教者のお坊さんが派遣されますが、その寺院の檀家になる必要もありません。まさに、定型化された料金体系の中で必要なときだけ利用できる、シェアリング・エコノミー化された仕組みといえます。
利用エピソードからうかがえること
筆者も、利用した人のエピソードをいろいろ聞く機会があります。中でも印象的だったのが、司法書士をしていた故人の三回忌を自宅でとり行った際の話。仏壇の近くの本棚には、仕事関係の蔵書が多数残っていました。
ネット手配で初派遣されたお坊さんが読経を終えた後にその書籍を目にして、「実は私も、本業は司法書士なんですよ」と思いがけないコメントがあったそうです。まさに兼業のお坊さんで、1回限りの読経依頼なのに不思議な縁だと、未亡人がしみじみと語ってくれました。
この仕組みは、菩提寺と檀家の関係を崩す側面がある一方で、檀家依存だけでは業態を維持できない寺院にとっては、生計の途のチャンネルを広げることにつながっているのかもしれません。
まとめ
老後が長くなって「終活」のことを考える時間もより多くなり、しかも社会のスタイルや価値観もどんどん変わっていく昨今。お墓のスタイルも、そして今回の葬儀や法要のやり方もかなり多様化しています。
お墓は生前に本人が現物を決めておくケースも少なくない一方、自分の目でそのさまをじかに確認することがない点は対照的ですが、葬儀や法要に対する意識や考え方についても、折々に世の中の情報やトレンドを集めながら“アップデート”し続けていく必要性があると実感されます。
出典:「お坊さん便」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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