老後に必要な貯蓄額が分かる「キャッシュフロー表」って?
ファイナンシャルフィールド / 2020年1月10日 8時30分
金融庁の金融審議会・市場ワーキンググループが作成した報告書「高齢社会における資産形成・管理」において、老後のための貯蓄が2000万円ほど必要という報告がなされ、世間で大きく話題になりました。 この2000万円という金額はあくまで平均値に基づいて計算されたものであって、実際は個人個人で違います。そのため、自身の条件ならいくらくらいになるのかを知ることが大事です。 老後のためにいくらの貯蓄が必要なのかを知るためには「キャッシュフロー表」を作るのがベストです。そこで今回は、簡単なキャッシュフロー表の作り方を解説します。
キャッシュフロー表を作って老後の収支を俯瞰しよう
キャッシュフロー表とは年間の収支を予測して、貯蓄がどのように推移するかをシミュレーションするためのツールです。これを作れば、老後のためにいくら貯蓄したら良いかということがおおまかに分かります。
以下の条件で、5年単位の簡易なキャッシュフロー表を作成してみましょう。
・60歳時点での貯蓄は2000万円
・60~64歳の間は働いて毎月10万円を稼ぐ(10万円×12ヶ月×5年=600万円)
・65歳以降は毎月15万円の老齢年金を受給する(15万円×12ヶ月×5年=900万円)
・60~64歳の支出は年間160万円、65歳以降は200万円
そうすると、以下のようになります。
※「年初」「年末」とは、各5年間の開始時と終了時です。
これをみると、以下のような点が分かります。
・60~64歳の間は5年間で200万円の赤字、65歳以降は5年ごとに100万円の赤字が生じる
・60~64歳の間は1年あたり40万円、65歳以降は20万円の赤字なので、生活を切り詰めたり収入を増やす努力をしたりすれば黒字にできる可能性が十分にある
・89歳の時点で1300万円の貯蓄が残る
仮に毎年の収支がこのとおりになれば、60歳の時点で2000万円もの貯蓄がなくてもおそらく何とかなるでしょう。このように、キャッシュフロー表を作ると老後の貯蓄がいくらくらいあれば大丈夫なのかということが分かるようになります。
なお、このキャッシュフロー表はあくまで簡単に作ったものです。そのため、実際に作成するときはExcelなどの表計算ソフトを用い、1年単位で作るのがおすすめです。
キャッシュフロー表の作り方
次に、キャッシュフロー表を作るときの手順やポイントについて解説します。
○年齢の決め方
そもそも人はいつまで生きているかが分かりませんので、キャッシュフロー表を作るときに何歳まで作成すれば良いか悩むはずです。
厚生労働省が公表している平成30年簡易生命表によると、60歳時点での平均余命は男性が23.84歳、女性が29.04歳となっています。つまり、60歳の時点で生存していれば男性はおよそ84歳、女性はおよそ89歳まで生きるのが普通ということです。
そのため、この年齢くらいまでで作成すれば良いですが、長生きをして生活費が不足するリスクが心配ならもう少し長めに設定してください。
○年金額は「ねんきんネット」で
老後の年金額は郵送で届く「ねんきん定期便」でも分かりますが、50歳未満だとそれまでに納付した保険料を元にした年金額しか分かりません。
しかし、ねんきんネットを利用すれば条件を変えて年金額を試算できるので、できるだけねんきんネットを利用しましょう。年金額を知ると、老後のイメージが少し具体的になるはずです。
○支出の予測は難しい
支出を予測するときは、以下の3種類に分けて考えましょう。
・毎月かかる費用(家賃・住宅ローン、駐車場代、食費、通信費、交際費など)
・毎月ではないが、毎年かかる費用(医療費、自動車税など)
・数年に1度程度かかる費用(車検代、住宅の修繕費、葬儀費用など)
こうした費用は家計簿をつけたことがあればすぐ分かるでしょう。家計簿をつけた経験がない場合、食費や交際費などの費目については2~3ヶ月、支出を記録して把握してください。
また、医療費や介護費用は予想がしづらいかもしれません。特に介護費用については要介護度や施設に入居するかによって大きく金額が変わります。そのため、見当がつかなければ取りあえずおおまかな金額(200~300万円程度)を計上しておいてください。
おおまかな収支が分かったら、徐々に精度を上げる
キャッシュフロー表を作るときはかなり先のことまで予測する必要があるので、金額がはっきりしなくて悩むかもしれません。しかし、それが当たり前です。
大事なことは、1年に1回くらいの頻度でキャッシュフロー表の数値を見直し、より精度の高い予測をすることです。年をとればとるほど金額がはっきりしてくるはずです。
老後のための貯蓄がいくら必要なのかが予想できないと、具体的な対策をしようと思っても「何となく」になりがちです。そのため、まずはおおまかで良いのでぜひ、キャッシュフロー表を作ってみてください。
[出典]
厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」
執筆者:横山琢哉
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
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