認知症や相続の心配をするシニアの間で関心が高まっている「家族信託」とは
ファイナンシャルフィールド / 2020年1月14日 9時15分
「家族信託」をご存じですか。信託銀行などで扱っている商品と思われている方も多いようですが、実はまったくの別物です。認知症や相続の心配をするシニアの間では、この「家族信託」に関心が高まっています。シニアの悩みを解消する手段になるかもしれません。
運動はしているけど認知症になったらどうしよう、という心配
長寿国となった日本ですが、課題は健康寿命を延ばすことです。「ピンピンコロリが理想よね」と、シニアの中でも健康に対する意識が高まっています。
テレビでも食事や足腰を鍛える健康番組は人気があるようですし、青汁やサプリなどのCMを見ることも頻繁です。平日昼間のスポーツジムは、汗を流すシニアでにぎわっているようです。
身体は大丈夫でも頭はどう? という問題があります。内閣府「平成29年版高齢社会白書」によると、2025年の認知症患者数は約675~730万人と推測されています。2012年に65歳以上の高齢者の7人に1人でしたが、2025年には5人に1人が認知症という予測だそうです。
「認知症になる前に何か準備できることはないか」という中で、家族信託が注目されているのです。
信託とは“信じて託すこと”
認知症と診断されると「判断能力がない」と見なされてしまいます。そうなってしまうと、不動産の売却、遺産分割などの協議を始め、預金の管理もできなくなってしまいます。具体例を2つ見てみます。
(1)賃貸不動産を持っていて、家賃収入を得ているとします。入居者が入れ替わるタイミングでリフォームが必要なら工事の契約書、入居者とは賃貸借契約書を交わす必要があります。これらの契約ができないと業務は進みません。
(2)事業をしていない場合も、他人ごとではありません。介護施設に入居することになり、自宅を売却して費用に充てようとした時、認知症になっていたらどうでしょう。名義人であるのに、売却がままならないのです。
家族信託の契約には、委託者(財産の持ち主)・受託者(財産を託される人)・受益者(利益を受ける人)が登場します。今回は母が委託者兼受益者、長男を受託者と仮定します。
母は不動産の売却・賃貸・管理など全てを長男に託します。母は受益者なので、(1)の場合は家賃収入を、(2)の場合は居住権を得ます。もし不動産を売却することになれば、その実行者は長男ですが売却益は母のものとなります。
家族信託は信託契約書を作成することで成立します。信託財産ごとに受託者を決めることや、内容を事細かく指定もできます。さらに受託者が亡くなった後のことまでも言及できます。
制度の違いを知り、自分にあったものを考える
認知症になった時の法律的な支援制度として、成年後見制度があります。この制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。
「法定後見制度」は本人の判断能力が喪失した時に、家族などが家庭裁判所に申し立てをして、裁判所が後見人を選任するものです。一方「任意後見制度」は、事前に本人が後見人を選び、契約を結んでおきます。
本人の判断能力が喪失したら、後見人は家庭裁判所に申し立てをし、後見監督人を選任してもらいます。どちらも家庭裁判所が介在しますが、“自分で選んだ人に事前にお願いをする”という意味では、家族信託と任意後見制度は似ています。
後見制度は、認知症が発症した後亡くなるまでの期間に効力があります。家族信託は、この期間にとらわれず、現在から死後も含めて将来にわたり財産の管理や活用法などを定けることが可能です。どちらを選べば良いのかは、それぞれの事情によって異なりますので、司法書士などの専門家に相談することがお勧めです。
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
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