【知らないと損する年金の話】免除制度や納付猶予制度を活用した方がいい理由
ファイナンシャルフィールド / 2020年1月15日 23時15分
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全員が加入しているにもかかわらず、学校でも習わないし、周りに知っている人も少ない年金制度。そのような理由からか、「さあ、もらおう」とすると、すでに手遅れになっている場合も。「しまった!」と、ほぞをかむ思いをしなくてもすむように、あらかじめ知っておきたい知識の数々をお伝えします。 第7回は「免除制度や納付猶予制度を活用しよう」です。
保険料を支払う余裕がないときに
国民年金の保険料を支払う余裕がないときに活用したいのが、免除制度や納付猶予制度です。
障害年金や遺族年金を受給するときに、保険料を全額支払っている人と同じ扱いにしてもらえるうえ、老齢年金を受給するときの免除期間についても一定の給付が受けられます。将来のために、しっかりと手続きをしておきましょう。
免除額は前年所得で決まる
免除制度は、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や失業した場合などに利用できます。免除される額は、全額、4分の3、半額、4分の1、の4種類です。免除を受ける基準は、前年所得が次の計算式で算出された金額以下であることです。
・全額免除……(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
・4分の3免除……78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
・半額免除……118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
・4分の1免除……158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
納付猶予と学生納付特例
納付猶予制度は、50歳未満の人で本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合に利用できます。納付猶予を受ける基準は、前年所得が次の計算式で算出された金額以下であることです。
・納付猶予……(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
学生で、本人の所得が一定額以下の場合に活用できる「学生納付特例」も納付猶予制度の一環といえます。ただし、所得の基準が納付猶予の場合とは異なり、本人の前年の所得が次の計算式で算出された金額以下であることが求められます。
・学生納付特例……118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除額等
学生の範囲はかなり広く、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校、修業年限が1年以上の課程の各種学校、一部の海外大学の日本分校などに在学する人です。夜間・定時制課程や通信課程の人も含まれるので、ほとんどの学生が対象となります。
障害年金を請求するときに大きな恩恵
免除申請や納付猶予申請をして認められれば、恩恵が大きいのが障害年金や遺族年金を請求するときです。障害年金を請求するには、次の2つの納付要件のうち、どちらかを満たしていることが必要です。要件に適応しているかどうかの判断は初診日の前日の時点で見ます。
・3分の2要件=初診日が属する月の前々月までの被保険者期間のうち保険料納付済期間と免除期間、納付猶予期間の合計月数が3分の2以上であること。
・直近1年要件=初診日が属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。つまり、保険料納付済期間と免除期間、納付猶予期間、海外居住期間など年金に加入しなくても良い期間だけであること。
どちらの要件でも、免除期間と納付猶予期間は保険料納付済期間と同等に扱われます。
遺族年金を請求するときも
遺族年金を請求する場合も、3分の2要件と直近1年要件の2つの要件があります。障害年金の場合との違いは、障害年金は初診日を基準にしますが、遺族年金は死亡日を基準にすることです。遺族年金の場合も、免除期間と納付猶予期間は保険料納付済期間と同等に扱われます。
老齢年金を請求するときの恩恵も小さくはない
老齢年金を請求するときの恩恵も小さくはありません。保険料を全額納付した場合と比べて年金額は少なくなりますが、次の年金額が受給できます。
・全額免除期間……平成21年4月分からは、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(ただし、平成21年3月分までは3分の1)
・4分の3免除期間……平成21年4月分からは、保険料を全額納付した場合の年金額の8分の5(平成21年3月分までは2分の1)
・半額免除期間……平成21年4月分からは、保険料を全額納付した場合の年金額の4分の3(平成21年3月分までは3分の2)
・4分の1免除期間……平成21年4月分からは、保険料を全額納付した場合の年金額の8分の7(平成21年3月分までは6分の5)
なお、納付猶予や学生納付特例の期間は、各種年金を受け取るために必要な受給資格期間にはカウントされますが、老齢年金の受給額には反映されません。
未納は避けよう
このように年金制度では、保険料を「払えるけれど払わない人」と「払えないから払わない人」とでは、その扱いがはっきりと区別されています。保険料を支払う余裕がないときにあきらめて未納にしてしまうのではなく、免除制度や納付猶予制度を活用するのが賢明です。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
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