医療費控除を確実に受けるための確定申告の方法って?
ファイナンシャルフィールド / 2020年1月24日 8時30分
医療費控除という制度をご存じですか? 一定以上医療費を支出した場合、税制上において優遇措置を受けられるというものです。知らない方は知らないうちに損をしているかもしれません。
そもそも医療費控除ってなに?
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が一定の金額を超えるとき、最大で200万円まで所得控除を受けることができるという制度です。
医療費控除の適用を受けることで、所得税や住民税の計算の基礎となる所得が低くなるため、同じ所得であってもその分支払う税金を少なくすることができます。
医療費控除の計算方法
それでは、実際に医療費控除について計算し、どれほどの効果があるのか確認していきましょう。医療費控除の計算式は次のようになります。
実際にかかった医療費の合計額-保険などで填補された金額-10万円
※その年の総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%
上記計算式で出した金額がマイナスになった場合は医療費控除を受けることができません。なお、保険などで填補された金額とは、契約している生命保険から支払われる入院費給付金や健康保険から支払われる出産一時金などが該当します。
・還付金の計算方法
医療費控除によって還付される金額は医療費控除分に所得に応じた税率をかけることで計算できます。
・シミュレーション
それでは実際にシミュレーションしてみましょう。
<課税される所得金額が400万円>
<医療費が総額で60万円>
<生命保険で20万円填補された>
この場合、医療費控除の金額は次のようになります。
60万円(実際にかかった医療費)-20万円(保険などで填補される金額)-10万円=30万円
次に実際に還付される金額を計算するとこうなります。
30万円(医療費控除の金額)×20%(課税所得金額が400万円なので税率は20%)=6万円
医療費控除を受けるための確定申告の流れ
医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。仮に勤務先で年末調整を受けていたとしても確定申告は必須です。
・必要書類は?
医療費控除を受けるための確定申告には次の書類が必要です。
<医療費控除の明細書>
⇒国税庁HPなどで入手できます。
<確定申告書>
⇒基本的に会社員やパート・アルバイトなどであればAを、自営業であればBを使うことになります。
<医療費通知書>
加入している健康保険組合から送られてくる、支払った医療費の額などが記載された書類です。必須ではありませんが、これを添付することで医療費控除の明細書の記載事項を簡略化できます。
なお、上記のほか、収入を証明する書類やマイナンバー証するものや本人確認書類のコピーなど、一般的な確定申告に必要な書類も必要になります。詳細については国税庁のHPでご確認ください。
・確定申告までのステップをおさらい
医療費控除を受けるための確定申告までのステップは次の順になります。
(1)1月1日から12月31日までに支払った医療費を計算する。
(2)必要な書類を集め確定申告書などを作成する。
(3)確定申告の期間(例年2月中旬から3月中旬)中に住所地を管轄する税務署へ必要書類を提出。
知っておきたい妊娠や出産、介護に関する医療費控除
医療費控除の対象となる支出には次のようなものがあります。
・通院や入院のための交通費(自家用車の燃料代は除く)
・妊娠中の定期健診
・助産師による分娩の介助料
・医師の証明がある場合のおむつ代やケアハウス利用料
・病気やけがの治療のために購入した医薬品の代金
・医師の処方により購入した医薬品の代金
・虫歯の治療や入れ歯など歯科治療の費用
上記のように幅広い医療費が対象となっています。
特に妊娠や出産、介護など私たちにとって身近でありながら費用が高額になりがちなものも対象となっていることに注目してください。治療目的の費用が対象となり、美容や疲労回復、健康増進のための費用は対象とならないのが原則です。
Q&A
ここでは医療費控除に関連してよくある質問をQ&A形式で解説していきます。
・「セルフメディケーション税制」とは?
セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例にあたるようなものです。一定の要件のもと、ドラッグストアなどの店頭で販売されている医薬品の購入費用のうち1万2000円を超える部分の金額(8万8千円を限度とする)を控除できるというものです。
ただし、本制度を適用する場合は通常の医療費控除の適用を受けることができないなどのデメリットがありますので、うまく使い分けましょう。本制度の詳細については厚生労働省のHPなどをご参照ください。
・医療費10万円以下でも医療費控除は受けられますか?
総所得金額(収入から一定の控除などを引いたもの)が200万円未満であれば、医療費が10万円以下でも医療費控除の適用を受けられる場合があります。その際に控除される金額は、総所得金額×5%を超えた部分となります。
医療費が10万円を超えていないからとあきらめる前に、一度自身の所得を確認して計算しておくとよいでしょう。
・医療費控除の対象はなんですか?
医療費控除の対象となる支出はその病状などに応じ、一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額です。医療費控除の対象となる支出はその病状などに応じ、一般的に必要とされる範囲になります。
例えば、医師による診療または治療の対価は医療費控除の対象となります。しかし、健康診断の費用(病気が発見されたような場合は対象)であったり、治療などの対価ではなく謝礼金として支払った場合は医療費控除の対象となりません。
具体的にどのような支出が医療費控除の対象となるのかは最寄りの税務署へお問い合わせください。
まとめ
医療費控除は医療費の支出が一定額を超えた場合にその超える部分を所得から控除できるという制度です。入院や病気などで多額の医療費の支出が見込まれる場合、領収書を保管しておき、医療費控除に備えておくとよいでしょう。
執筆者:柘植輝
行政書士
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