確定申告近づく 税務調査を受けないためには
ファイナンシャルフィールド / 2020年1月26日 11時0分
毎年3月は確定申告の時期です。 正直に申告を済ませれば何ら問題はないのですが、個人で多額の収入があるのに申告をしなかったり、会社組織の形態をとっていながら、利益を過少に申告したり、海外に財産を隠そうとすると、「税務調査」の対象になりかねません。そうならないために、納税に対する正しい理解が必要です。
面倒だから「無申告」では済まされない
会社員の場合は、勤務先で所得税などすべて税務処理してもらえるため、他の収入がなければ確定申告の必要はありません。しかし、フリーランスなど個人で事業をしている人などは、収入が少なくても確定申告をする必要があります。不動産賃貸やタレント活動で、多額の収入を得ている人であれば、なおさらです。
個人としてではなく、会社組織にして活動している場合も同様です。収入が多くなるほど、経費計上の方法や減価償却への対応が必要になるため、税理士などの専門家の手を借り、確定申告をするのが一般的です。
ところが「税金を払いたくない!」とか「計算が面倒だ!」として、確定申告をしなかった場合は、税務調査の対象になります。副業収入が10万円以下ならば、申告しなくても問題にならないかもしれませんが、個人経営もしくは会社組織をつくり、1000万円を超える売り上げがあると「面倒だ!」では済まされません。
無申告が続くと「税務調査」の対象に
通常は「無申告」の状態が続いていると、税務署から「おたずね」という形で、収入や経費などに関する調査が入ります。この時点で誠実に対応すれば、重加算税が課せられる事態は避けられるかもしれません。
しかし、これを無視し続けると「悪質」と判断され、厳しい追及の手が待っています。
ここ数年の傾向を見ても、個人の所得税だけでなく、無申告法人に対する法人税や消費税の追徴課税額が年々増えており、2018年時点で、法人税で80億円以上、消費税で70億円以上が追徴課税されています。特に消費税については、無申告はもとより過少申告するケースでも、捕捉される可能性が高くなっています。
さらに最近の注目点として相続税の無申告が増えています。これは数年前から課税対象額が引き下げられたため、5000万円の相続財産でも、相続人が少ないと十分に課税対象になります。
しかし、この変更を知っているにも関わらず、相続税が無申告の人もおり、税務当局が本格的な調査に乗り出しています。特に高収入の人ほど金融資産を中心に、保有財産額は税務当局で把握されていると考え、相続人は行動したほうが良さそうです。
不正な還付請求も見抜かれる
消費税は事業規模の大小に関係なく、事業者が支払う税金です。
消費税額は、商品やサービスを販売した際に受け取った消費税額から、仕入れの際に支払った消費税額を差し引いて、その差額分を納付します。その際、受け取った消費税額よりも支払った消費税額が多ければ、納付はせずに消費税の還付を受けることができます。
このため、還付を受けようとする不正申告が後を絶ちません。多くの場合、仕入れの際の消費税額を水増しするなどの方法が行われています。
2019年10月から消費税率は例外を除き10%に変わり、税収の大きな柱となりました。そのため税務署もこの「消費税の還付申告」には厳しい眼で臨んできます。特に仕入れの金額が大きく見せられれば、その分納付する消費税額は少なくなるか、場合によっては還付を受けられます。特に仕入れ金額を巡りせめぎ合いになります。
一概に不正とは言い切れないものも多く、税務当局との攻防は続いています。例えば、消費税は国内の取引に関して課税されるため、国内で仕入れたモノを海外で販売する場合は、国内で仕入れた際に支払った消費税は還付の対象です。海外で販売したモノについては海外の税制が適用されます。
このため、国内の消費税を水増しするだけでなく、海外の架空取引を計上することで、消費税の還付を受けようとする不正行為が見られます。こうした行為は厳しく追及されます。特に2020年の申告時には、2019年の10月から消費税の値上げもあり、不正への対応も厳しくなると思われます。
税務当局は、消費税に関する調査を強化しています。消費税の担当職員が仕入れ伝票など還付を裏付ける資料を任意で提出してもらい、還付請求には事前に審査を進めています。
そのため仕入れ金額の水増し請求などがあれば、相当高い確率で不正を見抜かれます。現に、不正を指摘されるケースも増加しています。特に2020年の納税時期には税務署はかなり準備して臨んでくるため、還付請求については、書類を整理し不正がないことを説明することが求められます。
海外移転による所得隠し対策も監視
海外に資産を保有している、または海外で所得を得ている個人や法人に対しても、税務当局は監視を強化しています。
10年ほど前は富裕層が租税回避地などへ多額の資金を移し、課税逃れをする行動が見られましたが、最近では海外資産に対しても、マイナンバーの義務付けによる所有者の特定、海外の税務当局との金融口座情報の交換など連携強化により、預金額の捕捉が可能になってきました。
このため資産の海外移転に関しても、税務当局が実態を把握できます。財産調書などを提出せずに所得隠しなどが行われていると、所得税法違反などで告発されます。しかし、この海外財産調書の提出は決して進んでいません。
その理由はペナルティーよりも、多額の税が徴収される上に、将来の相続税が多額になることのほうが大きいからです。今後とも海外資産に対する捕捉は確実に進んでいくと思われます。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
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