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【事実は小説よりも奇なり】叔父と姪の内縁が認められ、遺族年金を受給したケースとは?

ファイナンシャルフィールド / 2020年1月30日 11時0分

【事実は小説よりも奇なり】叔父と姪の内縁が認められ、遺族年金を受給したケースとは?

所得税制上、配偶者控除や配偶者特別控除を利用できる配偶者や、相続における配偶者は「入籍している」ことが前提です。   ところが、社会保険の場合、例えば第三号被保険者や遺族厚生年金の受給などの配偶者は、入籍している必要はなく、いわゆる「事実婚」や「内縁」でも受給要件を満たすことができます。  

事実婚と認められないケース

そもそも、事実婚や内縁とは、どのようなケースを指すのでしょうか?
 
厚生年金保険法第三条では、「事実上、婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする」と定義しています。つまり、「いつでも婚姻届を出すことができる」状態を指しています。例えば、結婚を前提としたカップルが同棲しているようなケースです。
 
お互いの連れ合いを亡くした熟年の男女が、それぞれの子どもや親戚をおもんぱかって、入籍せずに暮らしているケースもそうです。このケースですと、男と女の間に相続の権利はないので、子どもには相続に関する影響はなさそうです。しかし、内縁の妻もしくは夫は遺族厚生年金の受給はできる可能性があります。
 
筆者が実際に話を伺った事例として、叔父とめいが同棲しているケースをご紹介します。
 
叔父とめいは三親等の間柄です。身内同士の結婚で婚姻届が受理されるのは四親等(いとこ同士)ですから、三親等の間柄では婚姻届は受理されません。民法734条では「直系血族または三親等内の傍系血族」の間では結婚できないと定められているからです。
 
先述の厚生年金保険法第三条で定義するところの「事実婚」や「同棲」には当たらず、遺族厚生年金をもらう権利は生じません。「婚姻届が受理されないから入籍していないだけ」となり、相続権もありません。
 

「事実は小説よりも奇なり」という判例

ところが、「事実は小説よりも奇なり」という判例があります。平成19年(2007年)3月8日最高裁判所第一小法廷における判決では、叔父と内縁関係にあっためいの遺族厚生年金の受給を認めています。
 
ただし、遺族厚生年金の受給を認めるに至った理由には、以下のとおりさまざまな背景があります。
 
まず、地域特有の事情があります。判例の言葉を借りるなら「かつて、農業後継者確保の要請」から、親族間の結婚が行われていたそうです。判例のケースでも、叔父とめいとの「結婚」は少なからず行われていて、地域においても抵抗なく受け入れられていたそうです。
 
続いて、内縁関係に至った経緯です。判例のケースでは、叔父の子どもを養う目的で内縁関係が始まり、また続けられました。
 
最後に内縁関係に対する社会的な認知です。2人の生活は円満で、安定的に42年間継続したことも評価されています。また、そうした評価は、親戚の間はもちろん、地域や職場でも「夫婦」として認知されている点が裏付けとなったようです。
 
以上の点を踏まえ、この判例では遺族厚生年金の受給が認められました。社会保険審査会の裁決に対する不服申し立てに始まり、最高裁まで闘い抜いて得た、貴重な判決といえるでしょう。
 

まとめに代えて

これまでご覧いただいたとおり、今回のケースはかなり細かな事情を配慮しての判決です。叔父とめいとの間に遺族厚生年金の受給権が生じるのは、かなりまれなケースであるといえるでしょう。
 
(参考文献)裁判所・裁判例より
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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