役職定年でどれくらい給与はダウンする?もし給与が減ってしまったらどうすればいい?
ファイナンシャルフィールド / 2020年2月6日 23時10分
多くの会社員は、会社の辞令によって地方だけでなく海外への転勤も受け入れ、家族の生活や自分の出世のためにがむしゃらに働いて、課長や次長、部長といった管理職になっていくのではないでしょうか。しかし、ある年齢に達すると、「役職定年」という制度により、待遇や給与が減少するという事実と向き合うことになります。 役職定年になる年齢は、企業によって違いはありますが、おおよそ55歳前後です。人生100年時代を考えると、まだまだ人生の折り返し地点を過ぎたばかりであり、昔と違って気力・体力もあるシニアにとっては納得がいかないかもしれません。 そして、住宅ローンが残っていたり、子どもへの教育費がかかったりしている方もいらっしゃるでしょう。そして、老後の資金も準備しなくてはならない。あるいは、親の介護をしなければない方もいるかもしれません。 役職定年を迎える人の中には、給料が激減することで家計のやりくりが大変になるだけでなく、これまでの役職を失うことにより自分のプライドが許さないという方もいるかもしれません。つまり、役職定年は、老後の生活も含めて家計や働き方、大げさにいえば生き方を大幅に見直すきっかけであるともいえます。 今回は、役職定年についておさらいし、どう対応していったら良いかについて考えてみたいと思います。
役職定年でどれくらい給与がダウンするのか?
■役職定年とは?
役職定年とは、役職を解かれて専門職などで処遇される制度です。大企業では、1980年代から行われた55歳定年制から60歳定年制への移行に際して、組織の新陳代謝・活性化の維持(次世代育成のため)や人件費の増加の抑制、ポスト不足の解消などの狙いから導入された制度です。
■給与ダウンの実態
2018年7月に発行された公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団の報告書によると、役職定年により9割以上の人が年収減となり、現状維持ができるのは1割弱という調査結果が報告されています。
もう少し詳しく見てみましょう。年収が役職定年前を100とした場合に、年収が50〜75%未満になったと答えた人がもっとも多く32.6%。続いて25〜50%未満が31.1%、75〜100%未満が21.7%、25%未満が7.7%と続いています。
100%以上、つまり役職定年前よりも年収が同等もしくは増えたと答えた人も6.9%と、少数ではありますがいらっしゃるようです。
この報告書の中には、年収のダウンだけでなくモチベーションの低下についても触れられています。年収が下がった人のうち6割前後の方が、モチベーションが下がったとしています。また、年収が変わらなかった人でも4人に1人にモチベーションの低下が見られたと報告されています。
定年退職後の年収ダウンもさることながら、役職から外されたモチベーションダウンの問題もあるようです。
役職定年にどう対応する?
役職定年になると、上記のように年収はダウンします。もちろん、会社の制度や個人によってその減少額は異なりますが、9割以上の方は給与が下がるのが現実のようです。役職定年後には早い方は60歳の定年が控えており、老後のことも視野に入れた対策が必要になります。その対策について、いくつか具体策を紹介します。
■2つ目の収入を確保する
収入が減ったのですから、増やすためには副業を行う、もしくは配偶者に働いてもらうことが手っ取り早いと思います。
もちろん、相応のスキルの持ち主であれば、転職でさらに高い年収を確保する方法もあるでしょう。また、モチベーションを向上させ、やりがいを求めて独立開業する方法もありますが、長年独立の準備をしてきた人は除いて、たやすくお金を稼げるほどそう世の中は甘くないと思います。
■生活コストのダウンサイジングをする
給与が減ったのですから、生活費を見直す必要があります。食費や光熱費、小遣いといった日常で使うものを見直すだけでなく、住宅ローンがある人は低金利のローンへ借り換えの検討や、生命保険の見直しも行う必要があります。
また、自動車を保有している人は、カーシェアリングの活用など流行のシェアリングエコノミーを使う方法もありますので、役職定年をきっかけに生活コストをダウンサイジングできる方策をいろいろと試してみるのはいかがでしょうか。
■運用で資金を増やす
資産運用というと株やFX、不動産投資を思い浮かべる人もいらっしゃるでしょう。しかし、役職定年を迎えた年齢では、時間を味方につけた運用は難しくなります。また、老後資金のことも真剣に考えなければならないので、あまりリスクの高い投資は避けたほうがよいでしょう。
ネット銀行の定期預金や国債といった低リスクの投資を中心に、老後の趣味を兼ねて余裕資金で運用等を行うのがよいと思います。
無料の資産運用セミナーも開催されているので、興味があれば聞きにいくのもよいでしょう。リスクの高い商品に手を出して、大切な老後の資金がなくなってしまうことは絶対に避けなければなりません。
■長く働く
前述のような、給与ダウンをカバーする対策をやってみても老後資金が不足しそうな場合、無理な副業などを行ったり、あせって資産運用を行って高リスク商品に手を出したりすると、痛い目を見るかもしれません。
したがって、健康なうちは働くという選択がもっともリスクが低く、簡単です。定年後の再雇用制度の活用も視野に入れて、長く働くことを検討してもよいでしょう。
(出典)
独立法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「役職定年の定義」P.267 5章「役職定年制」・「役職の任期制」の役割とキャリア・シフト・チェンジ — 求められる「役職定年制」・「役職の任期制」の再構築 —
公益財団法人 ダイヤ高齢社会研究財団「50代・60代の働き方に関する調査報告書」P.5
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
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