超高齢化社会は「ゴミ問題」抜きには語れない
ファイナンシャルフィールド / 2020年2月8日 3時0分
近年、ゴミ屋敷が社会問題化しています。公道にゴミがはみ出していたり、夏場の悪臭が近隣住民とトラブルになっているというニュースを、ご覧になられた方も多いのではないでしょうか? ゴミ屋敷になる要因はさまざまあるといわれています。中には自らの意思でゴミを集める人もいますが、高齢の単身世帯や障がい等を抱えているためにゴミを出すこともままならず、仕方なくため込んで、その結果ゴミ屋敷化してしまうのは、もはや1人の力では解決できないと言わざるを得ません。 こうした背景の中、総務省は、2019年11月29日に「高齢者等世帯に対するゴミ出し支援」の創設を発表しました。 ゴミを捨てることが困難な、単身の要介護者や障がい者に対する“支援”を対象に、自治体がその支援に要した費用の半額を、国が負担するというものです。 この負担には、国から地方自治体に交付される“特別交付税”が使われます。 今回、この発表が画期的なのは、ゴミ問題はもはや個人の問題ではないと政府が考え始めたということです。 ただこの支援は、個人に現金が支給されるわけではありませんので、政府が経費を負担してくれたからといって、すぐに目に見える支援となるかどうかは今後の課題でしょう。 これまで、ゴミ出し支援に要した費用はすべて“自治体負担”となっていましたが、その半分を国が負担することで、制度の充実を図ろうという狙いがあります。そのため、お住まいの地区によっては支援の内容が変わってくる可能性があります。
ゴミ出しの支援はどんなこと?
今回の制度では、次の費用が支援の対象と定められています。
これらの費用について、国から交付されたお金が使われることになります。これまでは、全額が自治体となっていました。
東京都八王子市の例を挙げてみましょう。2018年度、ゴミ出し支援事業に要した費用は5800万円に上りました。これが全て自治体のお金で賄われていたのです。
今後、国がゴミ出しの経費を半額負担するため、自治体の負担が軽減されることになるでしょう。その結果、これまで支援を見送っていた自治体が参入しやすくなり、また八王子市のように、これまで同事業を行っていた自治体にとっては、さらに制度を充実させることができるようになることでしょう。
現在行われているゴミ出し支援を振り返ると
このような、ゴミ出し支援を行う制度を実施している自治体はこれまでにもありました。東京都の杉並区や八王子市ではすでにゴミ出し支援が行われています。
しかし、2019年に環境省が調査した結果によると、全国でゴミ出し支援が行われている自治体は387市町村。これは全体の23.5%にしかなりません。とても制度が整っているとはいえない状況でした。
支援を要する人は年々増加している中、費用のすべてが自治体の負担であることから、なかなか制度を整えることができず、今回の制度が国によって決定されたのです。
結局ゴミ出し支援は誰のため?
「“高齢者”である」この一点で誰でも支援が受けられるとは限りません。各自治体が対象者を定めています。
例えば、横浜市の「ふれあい収集」という制度をご紹介しましょう。これは週に1回、自宅にゴミの回収に来てくれるという内容ですが、対象者は以下のように定められています。
1人でゴミ出しを行うことが困難であり、かつ、その理由が障がいによるものなのか、年齢によるものなのかを『客観的に証明できる』ことが求められます。単に「足が痛いから」という理由だけでは支援対象者として認められないこともある点には注意が必要です。
まとめ
今回の制度は国と自治体間でのやり取りですから、個人としては「関係ない」と思う人もいるかもしれません。しかし、国が半額を負担することで、自治体としてはゴミ出し支援に対する取り組みに力を入れることができるようになります。
支援の内容は、NPO法人に依頼するのか、自治会に依頼するのかなどさまざまな案があるでしょうが、高齢の親と離れて住んでいる方にとっては、親の家を片付ける苦労が減るという意味で、親の住んでいる自治体の制度をしっかり把握することが重要になってきます。
特別交付税は、元をたどれば税金です。みんなが支払っている税金を特定の人に使用するという制度に対しては、少なからず否定的な意見が出るものです。
しかし、ゴミ出し支援には、“みまもり“の効果もあります。定期的にゴミの回収を行い、そこで支援対象者の様子を伺うことができるのです。
そのため、この支援を受けることができる人には積極的に制度を利用されることをお勧めしたいものです。高齢の方が制度を理解するのが難しいのであれば、その子ども、もしくは近所の方などがまず制度を理解し、支援が必要な人につなげてあげることが必須となるでしょう。
ゴミ出し支援が充実し、ゴミ屋敷問題が少しでも軽減することで、地域も活性化する。このように、自治体の住人がみんなで利益を享受できるような制度にしてもらいたいものです。
執筆者:長崎元
行政書士/特定行政書士
長崎元行政書士事務所 代表
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