2020年4月から白内障手術が医療保険の先進医療保障の対象外に。その影響は?
ファイナンシャルフィールド / 2020年2月13日 10時0分
2020年4月以降、白内障手術(「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」)、「歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法」が、厚生労働大臣の定める先進医療から削除される見込みです。これを受け、生命保険会社の医療保険の「先進医療保障」でも、これらが対象外になる予定です。
先進医療の技術料は全額負担
公的医療保険の適用対象となる治療を受けたとき、病院の窓口で支払う自己負担割合は、年齢や所得に応じて1~3割の間です。仮に自己負担割合が3割とすると治療費が100万円でも30万円ですみます。しかし、医療費の一部とはいえ、医療費が高額の場合は大変な負担です。
そこで、自己負担割合とは別に、1ヶ月あたり自己負担額の限度額が年齢や所得に応じた一定額を超えた場合、申請によって超えた分を後日払い戻してもらえる「高額療養費制度」があります。
この制度により、例えば、70歳未満・年収約370万円~770万円の方の医療費が1ヶ月100万円かかった場合、病院の窓口での負担は3割負担の30万円ですが、自己負担の上限額は8万7430円(8万100円+(100万円-26万7000円)×1%)ですので、21万2570円(30万円-8万7430円)を高額療養費として取り戻すことができます。つまり、最終的には実際の負担額は8万7430円ですみます。
30万円の支払いが厳しい場合は、加入している保険者に「限度額適用認定証」の交付を受け、保険証とともに提示すれば窓口での支払いは8万7430円(自己負担の上限額)ですみます。さらに、「世帯合算」や「多数該当」による負担軽減の仕組みもあります。
しかし、先進医療を受けた場合、先進医療の技術料は公的医療保険の対象外ですので「高額療養費制度」も利用できず、全額自己負担です。なお、技術料以外の診察・検査・投薬・入院料などは公的医療保険の対象です。
例えば、70歳未満・年収約370万円~770万円の方の医療費が1ヶ月300万円、そのうち先進医療の技術料部分が200万円かかった場合、先進医療の技術料200万円は全額自己負担ですが、技術料以外は公的医療保険が適用され、自己負担限度額は8万7430円です。したがって、このケースでの医療費の自己負担額は208万7430円です。
生保の先進医療保障って何?
先進医療の費用は少額のものから高額のものまでさまざまです。中央社会保険医療協議会の資料によると、がんの重粒子線治療は約300万円ですが、ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)は約2万4000円です。実施件数の最も多い白内障の多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は約66万円となっています。
これらの費用をカバーするのが生命保険の先進医療保障です。多くは医療保険に先進医療特約を付加して加入します。
この保険に加入していると、厚生労働大臣の定める先進医療による療養(令和元年12月1日現在で86種類)を受けたときに、先進医療給付金として技術料相当額を受けることができます。通算500万円~2000万円が限度です。
厚生労働大臣が定める先進医療の実施医療機関は少ないので、交通費なども給付の対象となっている商品もあります。保険料は年間数千円程度です。がんの治療や白内障の治療に備えて加入する方が多いようです。
生保の先進医療保障の留意点
先進医療保障の支払いの多くを占めるのは、白内障の手術である「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」です。多焦点眼内レンズは、近方と遠方の両方にピントが合うので、メガネの使用頻度を減らすことが可能となり、QOL(Quality of Life)が向上できるというメリットがあります。
中央社会保険医療協議会「平成30年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」では年間の実施件数が2万3859件とダントツの1位です。
報道によると、厚生労働省が昨年末、これまで先進医療として認めた「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」「歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法」を外す方針を決めたようです。
もし、先進医療から「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」等が外された場合、費用負担はどうなるのでしょうか。先進医療と認められない場合、技術料だけでなく、診察料・検査料なども含め全額自己負担です。
では、すでに、生保の先進医療保障に加入している場合どのような影響になるのでしょうか。
例えば、某保険会社の「ご契約のしおり・約款」には次のように記載されています。
「この特約の保険期間中に、新たに厚生労働大臣の承認を得て先進医療の対象となった医療技術は、先進医療給付金および先進医療一時金のお支払いの対象となります。一方、ご契約時に先進医療の対象であった医療技術でも、療養を受けた日現在において、公的医療保険の対象となっている場合や、承認取り消し等の事由によって先進医療でなくなっている場合は、先進医療給付金および先進医療一時金のお支払いの対象とはなりません」
白内障の手術である「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」が対象外となると先進医療保障の魅力が落ちますね。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
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