天然マグロ1億9000万円の初競り! その一方、200円台で楽しめる「天然もの」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2020年2月15日 3時0分
令和となって初めての正月、今年もいろいろな新春行事がありました。恒例のもので毎年注目を集めている一つが、マグロの初競りです。豊洲市場での最高落札額は1億9320万円で、昨年の3億3360万円に次ぐ歴代2位の高値でした。 競り落とされたのは、今年も青森県大間産の黒マグロ(本マグロ)で、もちろん漁師が一本釣りした天然ものです。初競りは「ご祝儀相場」になり、しかも世間の注目を集めてマスコミでも多数報道される「宣伝効果」をねらって、通常よりもはるかに高い価格がつく場合が多いようです。
魚の「天然もの」には、高そうなイメージがありますが…
マグロの天然ものは、高そうなイメージがあります。初競りのような特殊要因をさておいても、いつも養殖より高いのでしょうか。そして、ほかの魚ではどうなのか。いくつかの例を大阪市中央卸売市場の公表データ(※1)で見てみましょう。
これは2019年11月の1ヶ月間だけの平均値ですが、実際には豊漁・不漁や季節・年ごとの需給関係などによって価格は常に変動するのでしょう。とはいえ、いつでもどんな魚種でも天然ものが養殖より高いわけでもないことはわかります。
魚の代表のようにいわれる「まだい」でも、養殖の方が高く、前年比の数字で割り戻してみると[天然:約778円、養殖:1228円]とさらに差は大きくなる計算でした。
こちらの「タイ」にも、天然と養殖があるの?
ところでお菓子の世界の「タイ」でも、天然と養殖の差があることをご存じでしょうか。[タイ焼き 天然 養殖]とネット検索してみると、ちゃんとヒットがあるのです。
最近は少なくなりましたが、個人経営の小さなお店でのタイ焼きの様子をご記憶の方もいるでしょう。長い持ち手ではさむ金属製の焼きコテで、1枚1枚ひっくり返しながら焼く姿が思い出されます。
このような焼き方は「一丁焼き」と呼ばれます。1枚ずつ手焼きするのでアンコも隅ずみまで入り、細かな火加減や焼き具合も調整できてパリッとした薄皮に仕上がります。重い焼きコテを忙しく動かしながらの作業になるため、焼き手の負担も多くて大量生産には向きません。漁師がさおなどの手作業でタイを捕るさまに例えて「天然もの」と呼ばれるようです。
一方、大判焼きや今川焼きに使うような鉄板タイプの焼き台で一度にたくさん作るやり方も多いです。タイ焼きを均一に大量生産できることから「養殖もの」といわれます。
火加減、皮の厚さやアンコ充当の調整も、1枚ごとに細かく行うことはできません。しかし、焼くのに職人技までは必要なく仕上がりも短時間のため、手焼きよりも安い価格で提供しやすいといわれます。
全国に133店しかない「絶滅危惧種」?
タイ焼きの「天然もの」は、個人経営の職人技のお店が多そうなイメージから、廃業などによりどんどん減っている印象を受けます。東京都杉並区の繁盛店「たいやき ともえ庵」が公表した調査結果(※2)によれば、調査時点(2018年9月下旬)において全国で133店ありました。前回調査(2017年5月初旬)の104店よりは増えているのです。
その背景として「天然鯛焼 鳴門鯛焼本舗」というチェーン店の拡大が挙げられています。同調査では全国133店のうち59店がこのチェーンで、占有率は実に44%です。また133店の全国分布では[東京都42、大阪府22、兵庫県11、三重県8]などが上位でした。
個人経営の中小店が減る一方で大規模なチェーン店が増えていく構造は、食料品、衣料、電器、本などのジャンルで耳にします。「天然」タイ焼きの世界でも同じような状況が進展しているさまは、いわれてみるとそうなのかもしれません。
まとめ
冒頭の1億9千万円マグロは、すしネタにすると1カンで2万2千円くらいの原価になるそうですが、実際には1人1カン限定で大トロでも398円(税別)の通常価格で振る舞われました。
一方、タイ焼きの世界では「養殖」でも「天然」でも、価格は1枚100円台~200円台くらいと安定して楽しむことができます。結構目にする機会の多い「養殖」店に比べると、「天然」の方は“絶滅危惧種”ともいえるような少ない店数の状況。旅先やお出掛け先で目にするチャンスがありましたら、一度味わっておきたいものです。
[出典]
(※1)大阪市中央卸売市場「市況情報:月報」「生鮮水産物」(2019年11月)
(※2)たいやき ともえ庵(有限会社ともえ産業情報)「全国一丁焼きのたい焼き店調査」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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