どこからがパワハラ?パワハラの定義についておさらい
ファイナンシャルフィールド / 2020年2月15日 9時30分
以前のコラムで、「男の育児休業」について取り上げさせていただきましたが、いよいよ国家公務員の男性にも1ヶ月程度の育児休業を義務化するという動きが現実化されそうです。 国家公務員ではワークライフバランス推進のため、全体的に定員が389人増えたそうです。2020年4月には、猶予されていた働き方改革関連法が中小企業にも適用されますが、中小企業では、安易に人材を増やすことは人件費の増加につながります。 少ない人材で仕事を分担していると、休業する人たちにとって肩身が狭くなり、会社の雰囲気が悪くなるかもしれません。今回は、パワハラセクハラなど、会社が注意すべき内容についてお話しします。
パワーハラスメント対策は事業主の義務!
企業の規模によって義務化の時期は異なりますが、パワーハラスメント対策の法制化がされます。職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることは事業主の義務となったのです。
この「適切な措置を講じていない」場合には、是正指導の対象となったり、最悪な場合には訴訟を起こされたりすることもあります。
いったんパワハラ問題が起こると、適切な防止対策を採らなかったときはもちろん、相談対応等の対応しだいで、民法上、会社の管理責任を問われることもあります。これまで何もなかったからといって、今後も何もないとは限らないのです。
おさらい! パワハラの定義とは
ここで、パワーハラスメントの定義をおさらいしておきましょう。パワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものをいいます。
(1)優越的な関係を背景とした、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、(3)就業環境を害すること(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)の3つ、すべてです。
もう少し簡単に説明してみましょう。まず、「職場」とは、単に、普段就業している場所だけを指しているわけではありません。業務を遂行する場所も指すということもあります。
また、「優越的関係」ですが、これも単なる上司だけではありません。同僚や部下についても含まれるというのが、誤解しやすい点です。
相談者を保護する仕組みが強化される
これまで、パワハラを相談するということはなかなか勇気がいることでしたが、今回の改正では、実効性を向上させようとしていることがポイントとなってきます。
事業主にセクハラ等、相談者に対して、「不利益な取り扱い」を行うことが禁止されたり、自社の労働者が他社の労働者に対してセクハラなどをしたりした場合にも、事実確認のために、協力に応じるよう努めることとされています。
また、調停の出頭・意見聴取などの対象者が拡大されるようになります。調停制度について、関係同意者の同意の有無に関わらず、職場の同僚等も参考人として、出頭に応じて、意見聴取をされたりすることも覚悟しないといけないでしょう。
会社としてやっておくべき対策とは
誰しもすぐに意識は変えられません。ただ、今後、有給や産休、育児休業など、ワークライフバランスの推進とともに労働者の権利が主張されると、「昔はそんなの取れなかった」など管理職から本音が出てくることもあるかもしれません。
職場の雰囲気がギスギスするなどは回避しなければなりません。「昔は昔。今は今」です。会社としては、以下のような準備を始めましょう。
厚生労働省の資料より筆者作成
会社が作成した就業規則があっても、ちゃんと読んだことがない労働者の方も多くいらっしゃいます。社内ネットワークの中に掲示しているという場合もありますが、今は、「言った言わない」が争いになりがちな時代といえます。
「ちゃんと説明した」という文書を残しておき、会社の方針をしっかりと労働者に理解してもらうという手間を省いては、争いのもとです。
4月に新入社員を受け入れる会社も多いでしょう。新たな社員が入社する前に、しっかりと社内規定を見直しておきたいものです。
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
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