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高齢者の医療費は誰がどのぐらい負担すればいいのか

ファイナンシャルフィールド / 2020年2月19日 23時15分

高齢者の医療費は誰がどのぐらい負担すればいいのか

誰でも高齢になればなるほど、病院のお世話になることが多くなります。それだけに高齢者の医療費は、若い現役世代に比べてかなり大きなものです。   一方、高齢者は多くが年金生活者で、収入はそれほど多くはありませんので、現役世代が高齢者の医療費を負担する必要があります。問題は、誰がどれくらいの負担をするべきか、という点にあります。

後期高齢者医療〝制度〟

まだ現役で健康保険に加入している人も、国民健康保険の被保険者も、家族の扶養となっている人も、75歳になったら「後期高齢者医療制度」に移行します(一定の障害がある場合は65歳から移行します)。
 
「後期高齢者医療制度」は、75歳以上のすべての国民を対象にした医療制度です(生活保護の受給者は対象外です)。「健康保険」ではなく、「医療制度」となっているのは、〝保険〟とは言えないような体制にだからです。
 
〝保険〟は加入者(被保険者)の保険料で、病気などのトラブルに見舞われた人を救う互助の制度です。「後期高齢者医療制度」は加入者のことを「被保険者」とは言うものの、その保険料では医療にかかる費用の1割程度を賄っているに過ぎません。
 
およそ5割は国や自治体の税金から、4割は現役世代からの支援で賄っています。〝医療保険〟というよりは、〝福祉制度〟と言った方が実態に近いのです。
 
「後期高齢者医療制度」について確認すると、被保険者は所得に応じた保険料がかかります。それまで健康保険などの被扶養者となっていた人は保険料がかかっていませんでしたが、75歳になって後期高齢者医療制度に加入すると、新たに保険料の支払いが必要になります。
 
制度を運営しているのは、都道府県の後期高齢者医療広域連合という組織です。都道府県ごとに運営しているため、保険料も都道府県で異なります。同じ所得でも、高い県と低い県では1.5倍程度もの違いがあります。
 
一方、医療機関で受診すると、窓口での自己負担は原則として1割です。現役並みの所得がある人については3割負担となります。

後期高齢者医療制度支援金

費用の4割を負担している現役世代の支援ですが、直接支払うわけではなく、それぞれの医療保険を通じて支払われます。健康保険の保険料または共済組合の掛金として徴収された金額から、「後期高齢者支援金」が支払われています。
 
給料からは「健康保険料」として引かれているので気が付かないのですが、実はその保険料のうち、4割前後は後期高齢者支援金や前期高齢者納付金といった高齢者の支援のための費用です。
 
国民健康保険は自治体の運営ですが、税金とは別に保険料から支援金を払っています。こちらも国民健康保険料(税)として納めるようになっていますが、6月に送られてくる保険料(税)の通知書には「支援分」として記載があります。これが後期高齢者支援金に充当される分です。

のしかかる負担

健康保険組合の場合、75歳以上のための後期高齢者支援金だけでなく、65歳から74歳までの人の医療費を支援する前期高齢者納付金もあります。中には被保険者の医療費の支出が少ない健康保険組合も少なくありません。
 
これらの費用が負担となり、健康保険料の引き上げや健康保険組合の解散に至るケースもあります(健康保険組合が解散すると、被保険者は全国健康保険協会に加入します)。
 
以前は、後期高齢者支援金の負担は、1人当たりの金額が一律で、健康保険組合の加入者の人数分を納めるようになっていました。そのため、加入者の収入が低めの健康保険組合は特に負担が重くなっていました。
 
移行期間を経て、2017年からは加入者の収入に応じて支援金の額が決まるようになりましたので、その点は解消されましたが、負担が重いことには変わりありません。
 
高齢者の医療費を、誰がどのくらい負担するのか。厚生労働省に設けられている社会保障審議会などで、たびたび議論がされています。しかし、加入者が直接支払うのではなく、集めた保険料から支払われるようになっているためか、今一つ実感が伴わない議論になっている印象を受けます。
 
費用の負担を避けたいのは、高齢者も現役世代も同じです。誰がどのくらい負担するのか、という議論も大切ですが、医療費を抑える努力も大切です。75歳以上の人の窓口負担を2割にする、高額な医療費は保険の対象から外す、といった、〝言いにくい〟議論に踏み込む必要がありそうです。
 
執筆者:村井英一
国際公認投資アナリスト

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