子どもが生まれる、すなわち「保険が必要」はホント?
ファイナンシャルフィールド / 2020年2月27日 8時30分
お子さんが生まれる際には、教育費や生活保障などが心配で、すぐに「保険」を思い浮かべる人も多いでしょう。確かに子どもを養っていくには、経済的負担も増え、不安に思うことは親として当然です。 しかし、かといって保険の店舗へ駆け込み、セールスパーソンの言われるままに加入すると、後で「保険に加入しすぎではないか」「本当にこれで良かったのだろうか」という疑問を持つこともあります。 では、お子さんが生まれる際に備えるためには、どうすれば良いのでしょうか。本当に必要な保険とは何なのでしょうか?
肝心なのは保険の種類
経済的は面で一番の心配は教育費でしょう。大学まで進学する場合には、1人当たりおよそ1000万円~2000万円かかるといわれています。この数字の幅は、どれだけ私立に行く期間があるかによって変わります。
私立に行く期間が長ければ、それだけ教育費が多くかかりますので、後者の数字が目安になってきますし、全学齢を私立へ通学すると、学校によっては2000万円以上かかる場合もあります。
これだけの金額を一度に貯金するのは難しいので、「保険」という手段に頼るのは、考え方としては間違いではありません。ポイントは、どんな保険に何のために入るかを理解して、その種類をうまく選ぶことです。
■学資保険
大学の教育費などを準備する目的で加入するのが一般的です。返戻率(支払った保険料に対する保険金受取率)が100%を超えると、受け取り保険金額が支払い保険料を上回る仕組みです。契約者(親)に万一のことがあると、以降の保険料の払い込みが免除になり、保障はそのまま続くという保険のメリットがあります。
ただし、商品によっては、100%を下回るものもありますので、注意が必要です。大学費用などの教育費を用意するための保険で、定期的に保険料を支払うことで確実に準備できます。
■低解約返戻金型終身保険
最近は、学資保険の代わりとして販売されることも多いようですが、気を付けなければいけない点があります。
「終身保険」は、被保険者が亡くなったときに必ずもらえる貯蓄性がある保険ですが、予定利率の低い昨今では、保険料が高くなってしまいます。そこで登場したのが、通常の終身保険よりも保険料を低く抑えるかわりに、保険料の払込期間中に解約をすると元本割れする(解約返戻金が払込保険料を下回る)「低解約返戻金型」終身保険です。
この保険を学資保険のように、子どもが大学入学する前に学費として使うためには、子どもが18歳になるまで、例えば15年などと保険料の払込期間を短めに設定する必要があります。保険料の払い込みを契約者が65歳で組んで、例えばそのときに子どもの大学生時など最も教育費のかかる時期を過ぎてしまっては、元本割れを覚悟しない限り学資保険として使えないことになります。
では、生活保障として利用するならば良いのではないかと思われますが、2018年に販売された保険の中には、契約者30代男性で65歳払い込み終了でも、95歳になるまで解約返戻金が支払い保険料を上回らないものもあります。
つまり、解約して生前に使うのは実質不可能で、死亡保険金のためにかける保険といえます。これでは、自分の老後資金にも充当できません。
外貨建てでは、為替差益が出れば、95歳以前に元本割れしないですむ場合もあるかもしれません。生前給付型という特定疾病になると、生存中にも保険金が下りるものもあります。
しかし、為替の動向がどうなるかは運しだいですし、生前給付の保障が必要ならば、別途掛け捨ての医療保険などに入れば、安い保険料で同様の効果が期待できます。
「外貨建て保険は運用になる」はホント?
日本円だけでは心配だから、運用もかねて、と勧められるのが外貨建て低解約返戻金型終身保険でしょう。最低利率の保障が2~3%ついているのが一般的です。支払い保険料、受け取り保険金ともに外貨建ての場合が多く、常に為替リスクが契約者負担としてあります。
確かに、外貨で運用しているのかもしれませんが、あくまでも保険ですので、保険としてのコストがかかります。低解約返戻金型であれば、日本円の場合と同様に解約するタイミングをかなり先にしないと、外貨ベースでも元本割れすることが多いので注意が必要でしょう。
外貨で運用するなら、運用は運用で別途行うと効率的です。例えば米ドル建てで2~3%の利率の債券を買うなどをすれば、為替リスクは同様に受けますが、運用期間や売買のタイミングも自分で選ぶことができます。必要な時期に必要な分だけ取り崩すことも可能でしょう。保険は保険としてしか使えません。自分で運用すればそのお金は、どんな用途にも使えます。
本当にほしい保険だけを買う
では、どんな保険が必要なのでしょうか。子どもの学費と生活保障を別々に考えることです。子どもの学費は学資保険で準備するのも良いですし、自分で確実に貯蓄ができる自信があれば、給与天引きなどで貯蓄をしても良いでしょう。
一方、生活保障は、万一親が亡くなったときの遺族の生活費の保障ですから、一時的に大きな金額が必要となるでしょう。これこそ、小さな掛金で大きな保障をもたらす「保険」を買えば良いのです。
いつか亡くなったときに必ずもらえる終身保険は、保険料が高い上に、子どもが成長すれば、必要となる保障額も減ってくるはずなので、常に1000万円などの高額な保障が必要なわけではないので非効率です。ですので、子どもが独立するまでの一定期間のみ、遺族の生活保障として2000万円などの大きな金額を保険でかけておく、というのが合理的です。
その方法は、掛け捨てにはなりますが、保険料が安い「定期保険」あるいは「収入保障保険」です。期間中に万一のことがなければ保険金を受け取れませんが、安い保険料で大きな保障と安心を買うことができます。
できれば、低解約返戻金型終身保険と定期保険の保険料の差額で浮いた金額は貯蓄へ回して、その貯まったお金を教育費・住宅費・老後の費用などに上手に振り分けていくと良いでしょう。
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
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