高齢・認知症のリスクに備える。家族信託を知っていますか?
ファイナンシャルフィールド / 2020年3月8日 9時30分
![高齢・認知症のリスクに備える。家族信託を知っていますか?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_71810_0-small.jpg)
ご自身がご高齢になってくると、または家族がご高齢になってくると、不安なことが増えてくると思います。不安材料の1つに、お金や資産の管理が挙げられると思います。 介護にも医療にもお金がかかりますが、その費用をどこから出すのか?高齢の家族が認知症になったらどうするのか?これらの疑問にも対応策はあります。ご自身で判断できるうちに知識を蓄え、不安に備えましょう。
家族信託とは? 成年後見制度との違い
自分や家族が高齢になったときの、お金の管理方法の1つに家族信託があります。家族信託は、「財産を託す人(委託者)」「財産を託される人(受託者)」「託された財産から生じる恩恵を受け取る人(受益者)」を家族間で決め、お金や資産の管理を家族に託す制度です。
受益者は委託者本人か第三者になるわけですが、よくあるケースとしては、委託者が認知症などで判断できなくなった状態になったときです。
受託者である家族が本人の代わりに介護費用、医療費用を管理したり、契約を結んだりします。自分のお金が適切に支払われ、自分の資産や暮らしが守られるのですから、受益者は委託者本人になる場合がほとんどでしょう。
一方で、2000年から始まった成年後見制度というものもあります。これは、認知症や知的障害、精神障害など判断能力が不十分になった方々の保護と支援のための制度です。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。前者は家庭裁判所に選定された人が成年後見人となり、後者は本人が十分な判断能力のあるうちにあらかじめ自ら選んだ人が任意後見人になり、本人の判断能力が不十分になったときに、本人に代わってお金や資産の管理をします。
ただ、法定後見制度には、法定後見開始の審判の申し立て、任意後見制度には任意後見契約公正証書の作成や任意後見監督人の申し立てなどの手続きを要します。手続きに時間がかかる、一部ではなくすべてのお金・資産の管理を任せることになる、積極的な資産運用は不可、といった点にも注意が必要です。
家族信託の活用事例。空き家対策にも有効
家族信託で管理できるのはお金だけではありません。不動産などの資産の管理も可能です。
例えば自身が介護施設に入居し、家が空き家になった場合です。管理を子どもやその他の親族に信託することができます。空き家を放置しておくと、防災性・防犯性の低下、衛生・風景・景観の悪化を招くかもしれません。
また、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策法)」が施行され、行政から「特定空家等」に指定されると撤去費用が所有者に請求されることも。勧告を受けると、固定資産税等の負担軽減(住宅用地の軽減特例)の対象から除外され、固定資産税が最大6倍となる可能性もあります。
こういったリスクにも家族信託で備えることができますよね。
家族信託の注意点は?
家族信託は、信託法に定められていますが、「家族信託」などの用語は使われていません。士業と呼ばれる弁護士、税理士、司法書士、行政書士などの専門家を頼る場合があるかもしれませんが、報酬基準はないので、相談する場合は信頼できる専門家を選んでください。
また、制度の仕組みをご理解したうえで、相談されることをおすすめいたします。つまり、自己防衛として、家族の意思が反映されているか、不明瞭な点はないかなど、依頼した専門家が作成した信託内容をよくチェックしましょう。
場合によってはセカンドオピニオンを求めるなどして、信託をスタートさせる前に内容を十分に確認する必要があるということです。
また、この制度は、以前からある遺言、成年後見制度の不便なところが使いやすくなったという便利な制度ではありますが、今後、もし新しい制度、法律が成立すると、不利になるかもしれないというリスクもはらんでいます。
家族のみなさんが納得し、意思が反映されていると確信を得てから、始める方がよいといえます。
(出典)
法務省「成年後見制度~成年後見登記制度~」
厚生労働省/三井住友信託銀行「高齢期の認知機能低下に関連した金融サービス」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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