家の財産は隠居して守る?生きているうちに財産の管理を任せる方法とは
ファイナンシャルフィールド / 2020年3月10日 8時0分
![家の財産は隠居して守る?生きているうちに財産の管理を任せる方法とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_72080_0-small.jpg)
昭和22年5月2日以前の旧民法では、60歳を超えると隠居が認められていました。長男などに生前に財産を全て譲るのです。 このため、認知症などによる財産のトラブルはあまり発生しませんでした。今の民法では認められていませんが、信託法を使うと隠居みたいなことが可能になります。
所有者の権利義務は死亡するまで
財産には所有者がいます。所有者は、財産を管理・利用・処分する権利(=所有権)を持ちます。例えば、所有者がハンコを押さなければその不動産を売ることはできません。
契約などの法律行為は、判断能力が無ければできませんので、所有者が認知症などで判断能力が無くなると財産は凍結してしまいます。親が認知症になったからと言って、子が代りに不動産を売却することはできません。
認知症になる前に財産を子に譲れば、認知症による凍結の心配は無くなりますが、高率の贈与税がネックとなってできないのです。
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例)①40歳の子に80歳の親から3500万円の財産を贈与した場合(法定相続人4人)
贈与税=(3500万円-110万円)×0.45-265万円=1260.5万円
・贈与税は子が、税務申告し現金で支払う。
・不動産の登録免許税2%。不動産取得税3%も課税される。
注)相続時精算課税制度を利用した場合2500万円まで非課税で、支払った贈与税が相続時に還付されることもあります。
②上の例で生前贈与をせず相続した場合
相続税=遺産5400万円までは0円
・基礎控除以下の場合、相続税の税務手続き不要。
・不動産の登録免許税0.4%。不動産取得税非課税。
旧民法で認めて認められていた隠居
上記のような理由で、認知症で凍結しても相続まで財産の処分を待つのが一般的になっています。
しかし、旧民法化では隠居制度による生前の家督相続により、財産が凍結することはありませんでした。60歳を過ぎたら、長男などに家督を譲り面倒な財産管理などから解放されてのんびり老後を過ごすことができたのです。
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生前の相続だからと言って、高い税金がかかることはなかったのです。(相続税率も今より低い)さらに、単独相続ですので分割方法を話し合う必要もなく、争族はあまり発生しませんでした。
民事信託で隠居生活
民事信託では財産管理を信頼できる受託者にお任せにできます。必要なお金などは、受託者に請求して受け取ることができます。手元に余分なお金を持つ必要がないため、「悪質業者に騙されて大金を振り込む」などと言う被害を受けることはありません。(振り込むお金を持っていないので)
隠居の場合は、家督相続した長男などが所有者となります。一切の財産に対する権利が移動するのです。
対して、民事信託の場合には財産の名義は受託者になりますが、財産の利益を受ける権利は受益者として受けることになります。お金が必要になれば受託者に請求できますし、ちゃんとルール通りに使っているか受託者を監督することもできます。
万一、認知症などで判断能力が無くなったとしても、名義は受託者になっていますので財産が凍結することはなく、受託者のハンコで処分できます。施設に入居し空き家になった自宅を売って、施設の利用料や医療費にあてることも受託者の判断で可能となります。
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まとめ
契約など法律行為ができない状態になってしまったとき、所有者としての権利を行使することができません。いわゆる、凍結状態です。財産は有るけど使えないのです。所有者が死亡して、相続人が処分できるようになるまでこれが続きます。
民事信託では財産の利益を受ける権利は持ちながら、面倒な手続きを受託者に任せることが可能です。新しい信託による隠居です。そして、認知症などで判断能力が無くなっても、財産は受託者が有効に活用できます。
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士
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