【FP解説】年金の「知らないと損!」 病名の確定診断日が初診日?
ファイナンシャルフィールド / 2020年3月21日 0時30分
全員が加入しているにもかかわらず、学校でも習わないし、周りに知っている人も少ない年金制度。そのような理由からか、「さあ、もらおう」とすると、すでに手遅れになっている場合も。 「しまった!」と、ほぞをかむ思いをしなくてもすむように、あらかじめ知っておきたい知識の数々をお伝えします。第11回は「病名の確定診断日が初診日?」です。
ほんの3、4年前からの取り扱い
慢性疲労症候群、線維筋痛症など、いわゆる難病とされる病気で障害年金を請求した場合に、病名の確定診断日が初診日として認定されるケースが多くなっています。日本年金機構がそのように判断しているのです。
ところが、こうした取り扱いが行われているのは、ほんの3、4年前からのこと。かつて、障害年金の請求を検討したものの、初診日が判明しなかったり、初診日が分かっていても保険料の納付要件が満たされなかったりして請求を断念した人も、あらためて障害年金の請求を考えてみてはどうでしょうか。
初診日の考え方
障害年金の初診日とは、障害認定基準によると、「障害の原因となった傷病につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」とされています。
そして、年金事務所の職員向けに配布されている業務の手引書(※1)にも「傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名が記載されていた場合であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日となります」と書かれています。
したがって、例えばA病院で不眠症と診断され、後日B病院を受診して同じ症状でうつ病と診断された人が障害年金を請求する場合、初診日はA病院を初めて受診した日となるのです。A病院の診断が誤診であった場合でも、同じ症状で受診しているのでA病院となります。
運用で対処している
一方、前述の難病とされる病気の初診日の取り扱いは、これらの規定とは異なります。厚生労働省や日本年金機構は、こうした対応を公式には明らかにしていません。法令ではなく、運用で対処しているわけです。
批判の声、支持の声
このため、関係者の間で「従前からの運用と異なっており、障害年金が受給できなくなるケースが発生する」「裁定請求の時期によって不公平が生じる」などの批判の声があります。
一方、難病とされる病気の場合、確定診断を求めていろいろな病院へ行くドクターショッピングをする人が多いことなどから「症状を自覚して初めて受診した日を正確に把握するのは極めて困難」「障害年金の認定担当者によって判断にばらつきが出るよりも良い」など支持する声もあります。
障害年金の額に関係する場合も
初診日の判断は、受給する障害年金の額にも関係します。体調に異常を感じたときは会社勤めで厚生年金保険に加入していたのに、病気のために退職した後で確定診断が出た場合は、そのときが初診日となり、おそらく国民年金に加入中でしょうから、年金額が少なくなってしまいます。
障害の程度が障害等級3級相当だったりすると、国民年金では障害年金そのものが支給されません。
厚生年金保険に加入中のままで確定診断が出た場合は、年金額の計算で用いる被保険者期間の月数が一般的には多くなって有利ですが、退職をされた方の場合、厚生年金保険に加入中のままの人は多くはないと思われます。
化学物質過敏症なども
病名の確定診断日が初診日として認定されるケースには、前述の病気以外にも化学物質過敏症、脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)などがあります。
ただし、脳脊髄液減少症は交通事故などで頭や体を強打したことが原因になりやすいためか、厚生労働省は2019年12月に、事故の日を初診日と認定する場合があることを明らかにした通知文(※2)を出しています。
(※1)「国民年金・厚生年金保険障害給付(障害厚生)受付・点検事務の手引き」(平成28年4月版)
(※2)「脳脊髄液漏出症に係る障害年金の初診日の取扱いについて」(事務連絡、令和元年12月18日)
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
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