ふるさと納税「ワンストップ特例」申請内容に過不足や変更があった! そんなときはどうすればいいの?
ファイナンシャルフィールド / 2020年3月23日 3時0分
ふるさと納税の利用が、かなり増えています。2008年度の開始以来、もうすぐ丸12年。初年度に約81億円だった受入額は、2014年度に約388億円、2015年度に約1652億円、そして2018年度には約5127億円と急増し、受入件数も大きく増えました。
昨年6月から新制度に
まるで新興の急成長企業の売上高推移のようですが、急な成長にはひずみが生じることもあります。
ふるさと納税でも自治体どうしでサービス競争が激化し、その是正のために返礼品について【返礼割合を3割以下、かつ地場産品とする】などの基準による新制度が2019年6月からスタート。一部の自治体は新制度の指定期間を6月から9月までの4ヶ月間に短縮され、指定そのものから除外される自治体も出ています。
ところで、ふるさと納税は「納税」といわれますが、実態は自治体への寄付で、寄付額から2000円を差し引いた額が、所得税や住民税から控除(特例控除)される制度です(控除額には上限があります)。
2015年度から導入されたワンストップ特例制度
2015年度の受入額が前年比で4倍以上に急成長したのは、この年度から次の2点の制度改正(拡充)があったためです(※)。
(A)控除限度額を約2倍に引き上げ
⇒ 自己負担額(2000円)を除いた全額が控除される限度額が、ほぼ倍増
(B)ワンストップ特例制度の創設
⇒ 年末調整を済ませたサラリーマンなどが、本来は必要な確定申告をせずに寄附金控除を受けられることに
ワンストップ特例を受けるためには、次の条件を全部満たすことが必要です。
ふるさと納税をすると、返礼品とは別に寄付した自治体から書類が届きます。お礼状、寄附金受領証明書、そしてワンストップ特例申請書(以下「特例申請書」と略します)と返送用封筒などです。
ワンストップ特例制度の手続きは、特例申請書をマイナンバーの書類や本人確認書類とともに返送することで完了するのです。
予定外のことが起きた場合、どうなるの?
それほど難しい条件や手続きではないようですが、例えば、次のようなケースが生じた場合は、どうなるのでしょうか。
(ア)返礼品の多彩さに気をとられてしまい、よく数えたら6つ以上の自治体にふるさと納税をして特例申請書を送っていた。
(イ)特例申請書を一部の自治体に送付し忘れたことに提出期限後に気づいた。
(ウ)年の途中で転居したり、氏名などが変更となった。
(ア)で、このうち5自治体分だけワンストップ特例が受けられることはありません。(イ)も提出済の自治体だけワンストップ特例適用とはなりません。
(ウ)でも、全部の自治体に対してもれなく「特例申請事項変更届出書」を1月10日までに提出しないと特例は受けられません。結構、“オール・オア・ナッシング”な制度なのです。
仮に特例を受けられなかったとしても、もちろん罰則はありません。もらった返礼品の3倍を超える寄付をしただけのこと。でも、税金の還付(軽減)も期待していたとしたら、ちょっとがっかりですね。
確定申告の手間を省いて利用しやすくした制度のはずなのに、ちょっとした“うっかり”で、期待がはずれる場合だってありうるのです。
リカバリー策とは? そしてまとめ
そんなとき、提出期限の1月10日を過ぎた後でもリカバリーできる場合があります。ふるさと納税ごとに自治体から届く、先述の寄附金受領証明書を全部取ってあれば、それを添付して確定申告をしてしまえばよいのです。
確定申告をしないで済むはずの制度で確定申告をせよ、というのは矛盾しているようです。しかし、上記の(ア)(イ)(ウ)いずれの場合でも、すでに出してしまった特例申請書の内容を1発で「上書き」できてしまいます(国税庁のホームページでの確定申告手続きは、意外と簡単です)。
そして、この制度の条件(3)の「確定申告が不要な(ほかには確定申告が必要な事項がない)」にもご注意を。
例えば、年末調整は済んでいるけれど医療費控除を受けたい場合には、確定申告をします。そして確定申告をするとなると、医療費控除だけではなくふるさと納税の寄附金控除も申告しなければなりません。
全部のワンストップ特例申請書を期限までにキチンと提出していたとしても、確定申告をすると、ワンストップ特例は未手続き状態に「上書き」されてしまうのです。
ふるさと納税で税金上のメリットを受けるためには確定申告をするのが原則で、ワンストップ特例制度はあくまでも「特例」にすぎません。確定申告によって「上書きできる」こともありますが、「上書きされてしまう」点にも要注意です。
[出典](※)総務省「ふるさと納税ポータルサイト」~「制度改正について」(2015年4月1日。「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設などを告知したもの)
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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