2020年の年金改革で、得をするのはだれ?
ファイナンシャルフィールド / 2020年4月12日 23時30分
![2020年の年金改革で、得をするのはだれ?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_74963_0-small.jpg)
厚生労働省では、現在開会中の国会に2020年度から公的年金制度を改正するための法案(※1)を提出しています。 私たちの生活に大きく影響する年金ですが、これからどのようになっていくのでしょうか。今回は、その改正内容や、それによってどんな人が恩恵を受けられるのかについて解説します。
老齢年金受給開始時期の選択肢を拡大
65歳から受給できる老齢年金は、従来、60~70歳の範囲で受給開始年齢を繰り上げ、または繰り下げることができました(※2)。今回の改正では、その範囲が60~75歳に拡大される見込みです。
年金を繰り下げると、繰り下げた月数分、0.7%ずつ年金額が増えますので、仮に75歳まで120ヶ月繰り下げると、1.84倍の年金を終身で受け取ることができるのです。
したがって、65歳以降も働き続ける方などで年金に頼らずに生活できる方は、年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げることにより、その後の年金額を増やすことができるようになります。
なお、在職老齢年金制度により支給停止された分は、繰り下げの対象とはなりませんので注意してください。
在職老齢年金制度の減額基準を見直し
年金が受給できる年齢になっても仕事を続ける人は多くいると思います。
そのように、70歳未満の方が会社員や公務員として働きながら老齢厚生年金を受給する場合は、その給与などの収入に応じて年金の一部または全額が支給停止される「在職老齢年金制度」(※3)(※4)というものがありますが、これについても一部見直されます。
改正内容は、65歳未満の方が受給する「特別支給の老齢厚生年金」において、年金が減額される基準額が28万円から65歳以上の方と同額の47万円に引き上げられるというものです。
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この改正による恩恵を受けることができるのは、会社員として働く昭和36年4月1日以前に生まれた男性と昭和41年4月1日以前に生まれた女性に限られます。なお、公務員として働いていた女性は、男性と同様の年齢制限があります。
65歳以上で働いている人の老齢年金を毎年再計算
また、65歳以上で働きながら老齢厚生年金を受給している方は、働いている間に支払った保険料が年金額に反映されるのは、今までは退職時または70歳到達時でした。今回の改正では、「在職定時改定」制度が導入され、毎年1回再計算して年金額に反映されるようになります。
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この改正により、働きながら年金を受給されている方にとっては、働いた分の年金が翌年には反映されるようになり、より働きがいを感じることもできるようになるでしょう。
厚生年金の適用範囲の拡大
今回、現役世代に関する最も大きな改正点が、パートなどで働く短時間労働者に係る厚生年金の適用拡大です。
現在は、以下の条件(※5)を全て満たす方が厚生年金の被保険者となる条件でしたが、このうち従業員数の基準が段階的に拡大され、2022年10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上に拡大されます。
また、雇用期間は、2020年10月からは2ヶ月を超えた場合に適用されるようになります。なお、学生は対象となりません。
<現行の条件>
(1)週の所定労働時間が20時間以上あること
(2)雇用期間が1年以上見込まれること
(3)賃金の月額が8.8万円以上であること
(4)常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること
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この改正により、より多くの短時間労働者が厚生年金の被保険者となり、勤め先の健康保険に加入することになります。その結果、病気などで休業した場合の傷病手当金などの保障が充実するとともに、老後の年金額を増やすことができるようになります。
特に、国民年金の第1号被保険者として働いていた方にとっては、年金と健康保険の保険料を会社が半分負担してくれるため、社会保険料の負担が減るうえ、保障を充実させることができます。
まとめ
年金を受給されている世代の方も現役世代の方も、公的年金制度と、その改正内容をよく理解して人生100年時代に備えましょう。なお、実際の改正時期などは、国会における審議を経て決定されることになります。
出典
(※1)厚生労働省 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案の概要
(※2)日本年金機構 年金の繰上げ・繰下げ受給
(※3)日本年金機構 60歳台前半(60歳から65歳未満)の在職老齢年金の計算方法
(※4)日本年金機構 65歳以後の在職老齢年金の計算方法
(※5)日本年金機構 適用事業所と被保険者
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
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