学生納付特例制度の必要性、社会人1年目に奨学金の返済と猶予の年金、2つの負担は大丈夫?
ファイナンシャルフィールド / 2020年4月19日 9時10分
高校を卒業して、さらに専門性を高めようと4年制大学や短大、高等専門学校などに進学した学生の2人に1人は、奨学金を受けているといわれています。2017年からは貸与型奨学金のほかに、給付金の奨学金もできました。 2020年4月からは給付金の奨学金の上乗せとして、無償化(減免)も開設しました。今まで、経済的理由により、進学を諦めていた学生に朗報です。しかし給付型の奨学金は一定の基準を満たした人が受けられる制度のため、多くの学生は貸与型奨学金を受けています。
学生納付特例制度とは
1991年(平成3年)4月より20歳以上の学生も国民年金の第1号被保険者として加入が義務化となりました。基本的に収入のない学生が、保険料を納付しなければならないのです。
そのため学生に代わって親が保険料を納めていることが多く、負担になっていました。
2000年に学生納付特例制度ができ申請することで、学生のあいだは保険料の支払いを先送り(猶予)できるようになりました。この制度を、学生納付特例制度といいます。
学生納付特例制度の必要性
学生納付特例制度は、保険料の支払いを先送り(猶予)する制度です。もし保険料を納めず、学生納付特例制度の申請もしなかった場合、その期間は未納期間になります。
未納期間は将来受け取る年金の期間や、万が一の保障となる遺族、障害年金を受け取るに大きな影響を生じる危険性があります。
ご相談にいらした学生や家族の人に、「未納」ということだけにはしないよう、お伝えしています。学費など多くの出費が重なる年齢のため、学生納付特例制度は重要です。
社会人1年目の10月から2つの返済が始まる?
貸与型の奨学金(日本学生支援機構)を受けると、社会人1年目の10月より返済が始まります。
一方、学生納付特例制度で先送り(猶予)された期間の保険料を、加算額の負担がないように納めようとするなら、猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して、2年度以内に納めなければなりません。
仮に学生納付特例制度で先送りされた保険料を返済と考えた場合、社会人1年目の10月に国民年金の保険料と奨学金の返済、2つの返済が生じてしまいます。
学生納付特例制度はさかのぼって納めること(追納)ができる
学生納付特例制度の申請をしていれば、将来受け取る年金額(受給額)には反映されませんが、年金を受け取るための期間(受給資格期間)には反映されます。
先送り(猶予)を受けた期間は、10年以内であればさかのぼって納めること(追納)ができます。将来受け取る年金額を増額するためにも、追納することを考えてみましょう。
ただし、承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降さかのぼる際には、加算額がつくので注意する必要があります。
まとめ:無理せず1つずつという考え方
国民年金の保険料の納付と奨学金の返済を、社会人1年目に2つ同時に支払うことができる人は問題ありませんが、初任給から2つの負担が生じると大変な人もいるでしょう。そんなとき、まずは奨学金の返済を優先しましょう。
将来、満額の年金を受け取るには保険料の納付が必要です。学生納付特例制度で先送り(猶予)された期間について、前段のように「追納」という方法があります。
さらに将来60歳を迎えるときに国民年金の加入者であれば、60歳以降満額になるまで任意加入できます。厚生年金保険の加入者であれば、70歳誕生日の前々日まで加入し年金を増やすことができます。
社会人1年目に、奨学金と猶予した年金の2つの負担の大変な人もいることでしょう。そんなときは、1つずつという選択肢を考えましょう。社会人として、給与の使い道と将来のライフプランを考えることは大切です。
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、三藤FP社会保険労務士事務所 代表、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
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