あの有名商品にこんなバージョンがあった! 駅弁の容器にも見られる環境配慮の流れとは?
ファイナンシャルフィールド / 2020年4月25日 3時0分
「峠の釜めし」という駅弁をご存じでしょうか。各種の駅弁人気ランキングの常連商品で、デパートなどで催される駅弁フェアなどでもよく見かけます。具材の豊富さや味付けで人気を博していますが、もうひとつ の大きな特徴は、その容器です。
「峠の釜めし」は、こんな商品
製造販売元のある信越本線の横川駅はかつて、軽井沢駅方面への碓氷峠が急勾配のため機関車の連結や開放が必要で、すべての列車が長時間停車するところでした。そんな商機の中で開発され、1958年2月に発売開始されました。
容器はお釜とふたを模した益子焼の陶器製で、ずっしりと重いものです。食べ終えた後にリサイクルする利用法も公開されていて(※1)、持ち帰った容器がうちにもあるよ、という方もいらっしゃるでしょう。
北陸新幹線の部分開業にともない1997年10月以降、横川駅は在来線の終着駅となりました。モータリゼーション普及の流れも先取りして、「峠の釜めし」は、周辺各地にドライブイン・レストラン型店舗も展開し、高速道路サービスエリアなどにも進出。
今や、発祥駅の駅弁という枠を超えた全国区の人気商品で、販売価格(2020年4月時点)は1100円(税込)です。
こんな容器のバージョンもあります
このように人気と特徴がある駅弁ですが、実は、陶器製以外のバージョンがあるのをご存じでしょうか。中身はもちろん同じですが、サトウキビの搾りかすを利用した紙製の真っ白な容器が使われています。
商品を包むカバーには、「この釜型の容器は、お客様から寄せられた『益子焼の器が重い』というご意見を受け、制作しました。峠の釜めしの象徴ともいえる益子焼の釜容器。その丸くなめらかな形・質感を和紙の風合いで表現しています(後略)」と表示されています。
もちろん、従来の陶器製容器のものも販売されています。新容器はいわば発展型の“もうひとつの選択肢”という位置づけで、2013年3月から利用開始。2013年度のグッドデザイン賞を受賞しています(※2)。
どちらの容器も、省資源や省エネを意識
筆者も以前に 、長野県内のドライブイン店舗で新容器の釜めしを食べる機会がありました。頭にすり込まれているあの焼き物の色目や風合いがなくて無機質な感じもしましたが、軽くて食べやすく、何よりも食べ終わった後のゴミ捨てがとても楽でした。
そして、店舗の食器等下膳口には空容器(陶器製)の回収箱が設けられ、こんな表示がありました。「お客様より回収させていただきました空容器は徹底した衛生管理のもと入念な洗浄を行い、再利用させていただきます。再利用できない空容器は地球環境に配慮し容器を粉砕した後、リサイクルしております」。
陶器製容器にはそれなりのおカネがかかっていることもあってか、食べ終わった後は持ち帰るものという先入観がありました。しかし持ち運びは結構面倒ですし、列車内や駅でゴミとして捨てられた場合には、処分するのもひと苦労でしょう。
もともとは容器と中身が一体となって、商品のイメージやブランドを形成していた商品でした。しかし、容器のあり方や価値観を中身から分離することで、軽量化・省エネ(製造、配送、廃棄など各段階)、環境配慮(廃棄面やリサイクル面)などの効果が期待できる点は、今の時流にとても合っているような気がいたします。
まとめ
「峠の釜めし」の陶器製容器のコストは、発売当初で1個38円と聞いたことがあります。その後約60年間の物価変動からすると、今では200円くらいかもしれません。
そうなると持ち帰って再利用したい気持ちにもなりますが、不要と思う人にとっては捨てるのも手間がかかる“邪魔モノ”になってしまいます。
豆腐、醤油、そしてお酒などでも、容器を持参して店頭で買うことが一般的な時代がかつてありました。これから省資源・省エネを指向した世の中がどんどん進むと、今まで中身と容器が一体化してイメージが形成されていた商品などでは、「何に対しておカネを払っているのか」という視点がより問われることになるかもしれません。
※ 2020/04/27 記事を一部、修正いたしました。
[出典]
(※1)株式会社荻野屋「峠の釜めし」~「よくある質問」~「ご飯の炊き方」
(※2)公益財団法人日本デザイン振興会「2013年度グッドデザイン賞受賞概要」~「パルプモールド容器 [おぎのや釜型紙器]」
※ 2020/04/27 記事を一部、修正いたしました。
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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