パート主婦が知っておきたい「103万円の壁」って? わかりやすく解説!
ファイナンシャルフィールド / 2020年4月27日 3時10分
かつてヨーロッパの同じ民族が住む東と西の国に、壁がありました。そう、ベルリンの壁です。日本にも暮らしに直結する「103万円の壁」があります。今回は、この「103万円の壁」を多角的に考察したいと思います。
「扶養」って何? ~税法編~
「扶養」は多義的
そもそも「103万円の壁」を理解するためには、「扶養」の意味を知る必要があります。「扶養」という言葉は、人それぞれのイメージをお持ちなのではないでしょうか? 「夫、妻、親に生計を頼っている」というのが、一般的なイメージでしょう。
この「扶養」という言葉は、簡単にいえば「助け養うこと」ですが、税制上、社会保険制度上で使う場合は、厳格な定義があります。では、そのあたり、まずは所得税と住民税について紐解いていきましょう。
「扶養」に入るって? 所得税法上の控除
よく、「夫(妻)の扶養に入る」「子の扶養に入る」という言葉を聞きますが、「入る」というのは、一般的な言い方です。まず、所得税法上の「扶養親族」の意義について確認しましょう。
以下、所得税法上の扶養親族の主な要件を示します。
・控除対象扶養親族……以下の所得税法上の扶養親族で一定の要件に該当する者をいいます。以下、主な要件を示します。
・配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)
・納税者と生計を一にしていること
・年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
※ 国税庁「No.1180 扶養控除」参照
上記の要件から分かる通り、配偶者は所得税法上の扶養親族ではありません。また、控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の者なので、16歳未満の子は、控除対象扶養親族ではありません。これは、児童手当の制度と関係しています。
住民税法上の扶養控除
納税義務者に下記の要件すべてを満たす扶養親族がいる場合には、住民税法上の控除を受けることができます。
・生計を一にしていること
・前年中の合計所得金額が38万円以下の方(事業専従者を除く)
なお、住民税法上も年齢が16歳未満の者は、控除対象親族に当たりません。
配偶者控除・配偶者特別控除とどう違うの?
ここまで見てきたとおり、所得税法上、配偶者は控除対象扶養親族となりませんが、配偶者控除・配偶者特別控除という制度があります。配偶者控除とは、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられる制度のことです。
また、配偶者の所得金額が一定額を超えているために配偶者控除を受けることができない場合でも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除を受けられる制度が、配偶者特別控除です。
源泉控除対象配偶者って何?
配偶者に関する税法上の言葉に「源泉控除対象配偶者」がありますが、以下の者のことです。
・給与所得者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者として給与の支払を受ける人および白色事業専従者を除く)
・かつ、合計所得金額が 85 万円 (給与所得だけの場合は給与等の収入金額が 150 万円) 以下の人)
※国税庁「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに関するFAQ」参照
パート主婦でよく聞く「103万円の壁」って?
103万円の壁?
先ほど見た所得税法上の要件が、この103万円の壁という言葉を生みだしています。
配偶者特別控除を受けるための主な要件は
・民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人を除く)
・納税者と生計を一にしていること
・給与のみの場合は給与収入が103万円以下
・年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であること
この「給与のみの場合は給与収入が103万円以下」が「103万円の壁」ということですね。
正社員で年間給与収入が103万円ということは少ないと考えられるので、一般的に103万円までのパートなら、納税者である夫(妻)が配偶者控除を受けることができます。これ以上働くと配偶者控除を受けられなくなるから、「103万円の壁」となるのです。
150万円の壁って?
配偶者の「壁」という言葉をいくつか聞くと思いますが、「150万円の壁」とは、配偶者特別控除の上限額の控除という恩恵を受けることができるラインが、配偶者の給与収入が150万円であるためです。これは、平成30年の法改正により取り上げられるようになった「壁」です。
103万円の壁を超えても問題ないですか?
所得税発生ライン
配偶者の給与収入が年間103万円を超えなければ、配偶者に所得税は発生しませんが、給与所得控除額と基礎控除額の関係ですが、103万円を超えれば所得税がかかります。
なお、給与所得控除額と基礎控除額は、令和2年分以降変更になりますが、所得税の発生ラインが103万円であることに変わりはありません。この103万円のラインは、後述する配偶者控除適用のラインでもあります。
住民税発生ライン
ただし、103万円の壁のみを気にしていると、住民税発生ラインを見逃してしまうので、注意しましょう。年間のパート収入が100万円(自治体によっては98万円)を超えると、住民税が発生します。
これは、所得割の住民税の非課税限度額が35万円であるためです。
※国税庁「家族と税」参照
扶養内で働けるか?
配偶者控除・配偶者特別控除は受けられるか?
「扶養内で働ける」かどうかは、パート収入を得ている主婦(主夫)の方にとっては、気になるところかと思います。
ただ、先ほどお話したとおり、「扶養」という言葉は、所得税法と住民税法で違う要件で使われています。配偶者控除・配偶者特別控除を受けられるかどうかと、100%一致するわけではありません。
そのあたりを押さえたうえで、パートの給与収入を配偶者控除・配偶者特別控除の要件内に納めるかどうか、検討する必要があるでしょう。ただし、配偶者特別控除も配偶者控除と同じく、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1000万円を超える場合は、控除を受けられません。
<配偶者控除の給与収入要件>
・配偶者の給与収入が年間103万円以下
<配偶者特別控除の給与収入要件>
・配偶者の給与収入が年間103万円を超え201.6万円未満(※ただし、控除額は収入により変わります)
※国税庁「家族と税」参照
社会保険の「130万円の壁」
ここまでご紹介してきた税法上の「壁」のほかにも、社会保険の「壁」があります。つまり、パート収入が130万円を超えてしまうと、夫(妻)の社会保険の扶養に入れなくなってしまうということです。
この場合は、自身で国民健康保険や国民年金、組合健保、協会けんぽなどに加入しなければならず、それなりの支出になります。
よくある質問
106万円の壁って何ですか?
A これは、一定規模以上の会社で働く場合は、社会保険加入義務があるという意味です。正社員が501人以上、収入が月8万8000円以上、雇用期間が1年以上、所定労働時間が週20時間以上の学生以外の人に当てはまります。
妻の年収が103万円を超えたら、夫の年末調整のやり直しは必要?
A 多くの会社では、年末調整の際、従業員の提出した資料に基づいて、配偶者の収入を確認し、年末調整をしています。このため、やり直しが必要になることは少ないでしょう。
まとめ
100万円の壁、103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁、150万円の壁……なんと「壁」の多いことでしょう。
小さなお子さんを抱えているなど、妻(夫)がフルタイムで働くのは難しい事情があるご家庭では、この「壁」を超えた収入を得るべきかどうかは、非常に悩ましいところです。特に、社会保険料は結構な額になりますので家計に大きく影響します。
しかし、これらの要件は、社会保障制度の観点から設けられた数値です。決して、家庭の総収入を低く抑える意図で設けられた数値ではありません。
「壁」といわれる数値はあくまでも、家計を考えるうえでの客観的な数値ととらえ、夫婦の将来や互いのキャリアプランについて考えるときは、壁を取り払って話すことも大切です。
[出典]
国税庁「No.1180 扶養控除」
国税庁「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに関するFAQ」
国税庁「家族と税」
執筆者:石井美和
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