町じゅうがどこでも図書館に! シェアリングエコノミーによって身近で手軽に実現できた、その仕組みとは?
ファイナンシャルフィールド / 2020年4月28日 8時30分
![写真](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_76175_0-small.jpg)
以前、あるニュースをテレビで見る機会がありました。内容は、奈良県吉野町に関するもの。桜の名所「吉野山」で有名な、人口7000人足らずの山間の町ですが、これまで公民館内の図書室以外に専用の図書館がありませんでした。 そんな町に開設されたのが、「吉野まちじゅう図書館」。ユニークなのはその形態です。専用の土地建物の施設ではなく、その名のとおり、住民が所有するものを含めてまちじゅうの本を活用して、本のあるところがそれぞれ図書館となるのです。
図書館の整備には、手間と資金がかかります
図書館の多くは、市区町村などが公共サービスとして設置・運営する公立図書館です。「図書館の設置及び運営上の望ましい基準(平成24年12月19日文部科学省告示第172号)」では、設置基準として次のようなポイントが示されています。
・住民に対して適切な図書館サービスを行うことができるよう、住民の生活圏、図書館の利用圏等を十分に考慮し、市区町村立図書館及び分館等の設置に努める。
・必要に応じ移動図書館の活用を行う。
・市区町村立図書館と公民館図書室等との連携を推進することにより、当該市区町村の全域サービス網の整備に努める。
そうはいっても、図書館を新設するとなると、用地確保や建物新築工事だけでも(規模にもよりますが)ふたケタの億円単位くらいにはすぐに達してしまうようです。さらに、蔵書の購入や更新に加えて施設の運営や維持のための人件費や諸経費などのランニングコストもずっと掛かるのです。
吉野町の解決策とは?
吉野町の一般会計予算規模は、2019年度で59億3300万円(※1)。同町に限らず人口減少・過疎化が進む自治体にとって、上記のような図書館への財政負担はとても重く、限られた予算を配分するうえでの優先度合いを高めたくてもままならないのが実態だと推察されます。
こうしたジレンマの解決策の1つが、「吉野まちじゅう図書館」のような新たな手法です。しかし、あちこちに散在する本の貸出・返却や在庫状況をどう管理するのでしょうか。
同町のホームページ(※2)では、「吉野町は、総務省のモデル事業としてシェアリングエコノミーを活用した地域課題解決に取り組んできました。
その発展事業として、吉野町はハコモノの図書館を建設するのではなく…(中略)…誰もが図書館と同じように書籍の貸し出し管理を行える『リブライズ』というサービスを利用して実施するものです。」と解説されています。
このシステムを運用・展開しているリブライズ合同会社のサイト(※3)では、「すべての本棚を図書館に」というスローガンとともに、「リブライズは、Windows/Macとバーコードリーダーだけで、みんなが集まる場所の本棚を図書館にできるサービスです。
蔵書の登録・管理・検索・貸出のほか、本の購入機能(β)などを備えます。小学生からご年配の方まで使える手軽さが好評です。2019年夏現在で、1900箇所以上の場所に導入されました。」とPRしています。その手順のポイントは、【図1】のとおりです。
【図1】
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2020/04/75e53d4448e1e2458319d198b7c42715-46.jpg)
まとめ
リブライズのサイトでは、図書館ごとに所在地図や蔵書が表示され、本のタイトルや著者名で検索もできるようになっています。拠点が散在していても、どこにどんな本があるのかは、分かりやすくなっています。
吉野町でも、カフェや宿泊施設、商店、公的施設、寺院などがそれぞれのテーマや個性を持った本を提供し、町じゅうで人と本の交流が生まれているようです。
新型コロナウイルス問題で、図書館が一時閉鎖されるケースも相次いでいます。今回のシステムによる人や本の交流も、当面は自粛モードにならざるをえないでしょう。
しかし平時に戻れば、蔵書がそれぞれの所有者のもとで「死蔵」されることなく、利用し合いながら前向きに活用されるという仕組みには、シェアリングエコノミーの新たな可能性を感じさせられます。
[出典]
(※1)奈良県吉野町「平成31年度 一般会計予算書」
(※2)奈良県吉野町「『吉野まちじゅう図書館』事業について」
(※3)リブライズ合同会社「リブライズとは」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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