75歳からの繰下げ受給で年金84%増!? 本当にお得なの?
ファイナンシャルフィールド / 2020年5月6日 23時10分
![75歳からの繰下げ受給で年金84%増!? 本当にお得なの?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_76597_0-small.jpg)
これまで70歳まで繰下げ受給ができていた年金制度。2022年4月からは、75歳までと受給開始年齢が拡大されました。繰り下げることで、最大84%も支給額が増額されるといいます。 人生100年時代といわれていますが、本当に84%はお得なのでしょうか。現在の統計データを見ながら考えてみたいと思います。
繰下げ受給の新制度
老齢年金の受給開始年齢は、現在65歳まで段階的に引き上げられています。
これまで65歳から70歳までの間で、1ヶ月単位で繰下げ受給ができていましたが、今回の改正では70歳までの期間が75歳までと拡大されました。
繰下げ受給をした場合、1ヶ月毎に0.7%ずつ受給額が増額されます。仮に、5年間繰り下げて70歳から受給開始する場合、増額率は、0.7×12×5=42%となります。
今後10年間繰り下げて75歳から受給する場合は、0.7×12×10=84%の増額となるという計算です。
令和2年の平均的な月収43.9万円(賞与含む)で40年間就業した場合を考えてみましょう。夫婦の年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金)の給付水準は、22万724円となっています。
これを70歳から受給する場合、加算額は22万724×42%≒9万2704円となり、合計では1ヶ月31万3428円が受給できることになります。
75歳まで受給開始を繰り下げると、22万724×84%≒18万5408円が加算され、合計で1ヶ月40万6132円が受給できることになります。
繰下げ受給前に亡くなった場合は?
繰下げ受給しようと思っても、「受給前に亡くなってしまった場合、年金を受け取れないのでは?」と思っている方もいるでしょう。
しかし、そんな場合でも、未払い年金を受け取ることのできる遺族が、それまでの未支給年金を一時金として受け取ることができます。
このようなケースでは、本人が65歳から亡くなるまでの間に受け取れるはずだった年金受給額を、遺族が一時金で受け取ります。ただ、この額は通常で受給できる額での計算となります。
繰下げ受給と平均余命で考えてみる
では、75歳から繰下げ受給を開始したときと、65歳から受給した場合では、どの時点でお得になってくるか確認してみたいと思います。毎年受給額が変わりますが、今回は目安として令和2年の受給額で計算しています。
65歳から満額受給した場合、令和2年の受給額では月額22万724円となります。厚生労働省が公表している65歳の平均余命の19年8ヶ月で考えると、生涯に渡って5209万864円を受け取ることになります。
計算式は、22万724円×(19×12+8)=5209万864円となります。
75歳まで受給開始を繰下げして、月額40万6132円を受け取るとします。75歳の平均余命は12年3ヶ月で、生涯では、5970万1404円を受け取れるという計算です。
計算式は、40万6132×(12×12+3)=5970万1404円です。
65歳から受給したケースでは、75歳からより全体の受給額が少なくなっていることが分かります。
では、65歳から受給して、75歳の平均余命と同じ87歳3ヶ月まで生存した場合を考えてみましょう。
22万724×(12×22+3)=5893万3308円を受け取ることができ、やはり、75歳から繰下げ受給をした方が得になると分かります。
逆に、75歳から繰下げ受給をし、65歳の平均余命まで生存した場合、40万6132×(12×9+8)=4711万1312円となり、65歳から受け取った場合より、500万円くらい少なくなってしまうことが分かります。
分岐点を考えてみると86歳11ヶ月です。受給額は、65歳から受け取った場合5805万412円、75歳から繰下げ受給をした場合5807万6876円となるからです。
ただ、厚生労働省が公表している平成30年簡易生命表で、男性の寿命中位数(出生数の半数が亡くなる年齢)が84.23歳とある点に注意が必要です。84.23歳からの生存率が5割を下回っていることになるからです。
まとめ
今後、平均寿命や平均余命も延びる可能性はあります。そのときの健康状態や生活費などを考えた上で、繰下げ受給をするのか否かを検討する必要があるでしょう。
[出典]
厚生労働省「令和2年度の年金額改定についてお知らせします」
厚生労働省「平成30年簡易生命表 2 寿命中位数等生命表上の生存状況」
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
関連記事
65歳以降も働く場合、年金を繰り下げ受給した方がいい?
年金の「繰り下げ受給」 3つの落とし穴
年金の繰上げ・繰下げ受給ってどんな仕組み? 一体、どれくらい利用されてるの?
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
年金の受給を「70歳」にすると年金額が42%増える!?65歳と70歳の受給額を比較するとどうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月8日 4時40分
-
夫が年金「月15万円」を増やすため、繰下げ受給をしています。もし受給前に死亡してしまったらどうなりますか?「遺族年金」など受け取れるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月8日 4時30分
-
65歳になり年金が自動的に振り込まれると勘違い! 1年後に請求が必要と気がつきましたが1年分の年金をもらうことはできますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月4日 4時10分
-
もうすぐ定年です。60歳で退職もできますが、「65歳」に延長しようか悩んでいます。将来もらえる年金はどのくらい変わりますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月1日 10時10分
-
「基本月額」+「総報酬月額相当額」が50万円を超えたら、年金が減る? その場合、受け取るはずだった年金はどうなるの?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月28日 23時0分
ランキング
-
1「土用の丑の日」物価高でも…あの手この手の“うなぎ商戦” 大手スーパーの目玉は「超特大」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月22日 19時59分
-
2小林製薬、会長と社長が辞任へ…「紅麹」サプリ問題の対応遅れで経営責任明確化
読売新聞 / 2024年7月22日 21時37分
-
3「地方に多いホームセンター」が都会進出を狙う訳 人口減少が進む中、大手を軸に再編が進行
東洋経済オンライン / 2024年7月23日 8時30分
-
4世界最大級・ファンボロー国際航空ショー開幕…三菱重工など日本企業14社も出展
読売新聞 / 2024年7月22日 21時54分
-
5「最高益の会社」の株価が上がらない当然の理由 相場に影響を与えるのは過去のデータではない
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 16時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)