【おさらい】6月に株主総会が集中するのはどうして。そして「3つの密」にはどう対処するの?
ファイナンシャルフィールド / 2020年5月10日 1時0分
新型コロナウイルス感染拡大問題で、ヒトやモノの動きが大きく停滞しています。「ていたい」を漢字変換しようとすると、「停滞」のほかに「手痛い」も選択肢に表示されますが、まさにそのような状況ですね。 株式相場でも、今年3月末の日経平均株価の終値[1万8917円01銭]は、昨年3月末の[2万1205円81銭]に比べて10.8パーセントも下落。3月末で1万9000円台割れするのは2017年以来のことでした。
株主の権利、そして6月に株主総会が集中する理由とは
ここ数ヶ月で株価が(大きく)下落した銘柄も多い中、3月末決算の会社の株式を3月31日の時点で保有している人にとって、6月に開催される株主総会が次の大きなイベントとなります。
ここで、株主の権利や時系列の流れについて、日本証券業協会のサイトの解説(※1)をもとにおさらいしてみましょう。
<株主の権利>
・株主は、その発行会社に対して出資額に応じた権利、すなわち「株主権」をもちます。株主権は主に3つです。
(1)株主総会に参加して議決に加わる権利(議決権)
(2)配当金などの利益分配を受け取る権利(利益配当請求権)
(3)会社の解散などに際しては、残った会社の資産を分配して受け取る権利(残余財産分配請求権)
<株主総会の開催時期>
・株式会社は、一定の日(=「基準日」)に株主名簿に記載され又は記録されている株主を、議決権や配当を受け取る権利などを行使できる株主とすることができます。そしてこの権利は、基準日から3ヶ月以内に行使することとされています(会社法第124条第2項)。
・日本の多くの上場会社は決算月末日を基準日としているため、決算月の3ヶ月後に株主総会が開かれるケースが多くなっています。日本では6月が株主総会の季節といわれているのは、3月決算会社が多く、3月が基準日となっているためです。
新型コロナウイルス問題の影響とは
新型コロナウイルス問題は、上記のような内容にも影響を及ぼしています。まず、3月末決算の会社は通期の決算内容を集計して監査法人などの監査を受けてから、5月中旬頃までに決算発表をするのが通例でした。
しかし事務所への出勤に自粛が要請される中、会社にも監査法人にもこれらの作業への制約が生じます。
そして、会議室やホールで開催されるケースが多いのが株主総会です。たくさんの株主がいる会社で多人数が来場すると、密閉・密集・密接の「3つの密」問題を発生させかねません。
株主総会の議決権は郵送やインターネットで事前に行使することも可能で、今の状況では、こうした実際に来場しない手続きが推奨されるでしょう。しかし会社法では、株主総会は日時および場所を定めて召集すること、つまり「リアル」に開催する義務が課されています。
この点は結果的に、新型コロナウイルス問題への現実の対処に大きく逆行するように見えます。そこで、経済産業省と法務省は連名で4月2日にQ&Aを公表しました(※2)。
株主総会への出席自粛を呼びかけること、総会の規模縮小や時間短縮、出席人数の制限なども状況によって可能という内容で、「現下の状況においては、その結果として、会場に事実上株主が出席していなかったとしても、株主総会を開催することは可能と考えます」と踏み込んだ見解まで示されました。
まとめ
株主総会は、会社の意思決定をする最高レベルの機会です。株主がそこに出席して(質疑応答も交えながら)議決に参加することは、とても意義のあることだと思われます。
とはいえ、多くの株主総会が開催される今年の6月下旬の時点で、新型コロナウイルス問題がどのような状況になっているかは予断を許しません。
一定の手続きをすれば株主総会や決算承認議決の時期を7月以降にできなくもありませんが、いずれにせよ今回は、総会に実際に出席することが推奨される状況ではないと予想されるでしょう。
IT技術などがどんどん発達し、それに伴って人びとの意識や価値観も大きく変化しています。例えばシェアリングエコノミーの進展で、現実に「モノ」を保有することから、必要なときだけ「コト」として利用することに軸足が動くなどです。
そんな流れを見ていると、株主総会などのイベントについても「リアル」から実質的に「バーチャル」へと移り変わっていくのが当たり前になる日は、そう遠くないようにも思われます。
[出典]
(※1)日本証券業協会「投資の時間」~「株主になるとどんな権利があるの?」
日本証券業協会「投資の時間」~「株主総会っていつ開催されるの?」
(※2)経済産業省「新型コロナウイルス感染症関連」~「株主総会運営に係るQ&A」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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