医療費が心配…医療費負担を軽減できる公的制度とは?(1)
ファイナンシャルフィールド / 2020年5月18日 9時15分
![医療費が心配…医療費負担を軽減できる公的制度とは?(1)](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_77454_0-small.jpg)
病気になったときにかかる医療費。日本では国民皆保険制度により、医療費にかかる自己負担割合が3割以下になるなどの負担軽減が図られています。 それでも治療が長期になれば負担は重くなります。負担をさらに軽減できる公的制度がないか、人工透析が必要になったAさん(後期高齢者)のケースを例に、2回に分けて見ていきたいと思います。
Aさんが必要となった人工透析とは
Aさんは腎臓の機能が低下し、回復の見込みがない慢性腎不全を患っていました。通院により薬や食事療法での治療を行っていましたが、腎臓の働きの一部を補うために人工透析を受けることになりました。
腎臓は血液から必要なものと不要なものを分けて、不要なものを尿として体外に出す働きをしています。人工透析は腎臓の働きを補うための腎代替療法で、その治療は長期にわたるものになります。
人工透析には「血液透析」や「腹膜透析」などの方法があります。血液透析は週に数回、透析ができる医療機関に通い、機械を使って血液をきれいにする方法です。腹膜透析は、おなかの中に透析液を入れ、自分の腹膜を利用して血液をきれいにする方法です。Aさんの場合は自宅でできる「腹膜透析」を選択しました。
人工透析にかかる医療費は、血液透析で月に約40万円、腹膜透析では約35万円から75万円ほどかかるといわれています。Aさんは後期高齢者医療制度の被保険者で自己負担割合は1割でしたが、それでも数万円の負担が発生するのではと月々の医療費について心配されていました。
それでは、Aさんの医療費負担を軽減できる公的制度にどのようなものがあるか見ていきます。
高額療養費制度
月々の医療費が高額になった場合、負担を軽減するため、自己負担に限度額を設ける「高額療養費制度」があります。
これはAさんだけでなく医療保険制度に加入している全員に適用できる制度で、自己負担額が一定額を超えた場合に、その超えた金額が支給されます。限度額は年齢および所得状況などにより設定され、いくつかの条件を満たすことにより、さらに負担を軽減する仕組みもあります。
Aさんは後期高齢者(75歳以上)ですが、145万円未満の住民税の課税所得がありました。下記の表では後期高齢者に適用される所得区分「一般」に該当します。
所得区分が一般以外の後期高齢者は、課税所得が145万円以上の場合は「現役並み所得者」となり、課税所得額に応じてさらに区分が分かれています。「低所得者」は同一世帯の全員が住民税非課税の場合などが対象です。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2020/05/c8a0305ac62526260baef24833f7602b-7.jpg)
(注1)過去12ヶ月に4回以上高額療養費に該当したときの4回目からの限度額です(多数回該当)。
(注2)8月から翌年7月までの1年間で計算します。
出典:横浜市 「後期高齢者医療制度」
Aさんの場合は治療のため月に一度、同じ病院に通院する必要がありました。1割負担でも月に3万円程度の医療費がかかるのではと心配されていましたが、高額療養費制度により自己負担を月1万8000円に抑えることができます。さらに継続しての治療となる場合は、年間上限額は14万4000円となります。
高額療養費制度は、月単位(月初から月末)でかかった医療費の合計をもとに自己負担限度額が計算されます。そのため、月をまたがって複数回の治療を受けたときは、同一月内で治療を受けた場合より医療費負担が多くなる可能性もあることに注意が必要です。
高額療養費の計算は医療機関ごとであることや、個人単位と世帯単位での計算の違い、差額ベッド代のように保険診療の対象とならないものは除かれるなど、いくつか注意点があります。
また、70歳未満では年収が約370万円以下の自己負担限度額は5万7600円、住民税非課税で3万5400円と限度額も異なってきます。詳しくは加入している公的医療保険の組合や自治体のウェブサイトなどでご確認ください。
まとめ
今回はAさんのケースだけでなく、全ての人に適用できる高額療養費制度を見てきました。次回は、Aさんのケースにおいて適用できた他の制度をチェックしていきます。
出典 横浜市 「後期高齢者医療制度」
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)
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