【FP解説】年金の「知らないと損!」 事後重症受給決定後の遡及(そきゅう)請求について
ファイナンシャルフィールド / 2020年5月31日 23時15分
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全員が加入しているにもかかわらず、学校でも習わないし、周りに知っている人も少ない年金制度。そのような理由からか、「さあ、もらおう」とすると、すでに手遅れになっている場合も。「しまった!」と、ほぞをかむ思いをしなくてもすむように、あらかじめ知っておきたい知識の数々をお伝えします。 第16回は「事後重症受給決定後の遡及請求」です。
受給決定後でも遡及請求ができる
障害年金の事後重症請求をして受給が決まった後で、遡及請求ができたことが分かり、がっかりする人が少なくありません。しかし、受給が決まった後でも遡及請求をすることは可能です。
やはり遡及請求のほうが有利
障害年金の裁定請求には、いろいろな請求方法がありますが、今回取り上げるのは、遡及請求と事後重症請求です。遡及請求は、初診日から原則として1年6ヶ月後の障害認定日当時の障害の程度を理由に、請求日から過去にさかのぼって受給を求めるものです。
一方、事後重症請求は、障害認定日には障害等級に該当しなかった人や障害認定日当時のカルテが保存されていないなどの理由で、障害等級に該当していたことを証明できない人が請求日現在の障害の程度を理由に、請求日以降の受給を求めるものです。遡及請求の場合も、請求日以降の受給が可能ですので、一般的には遡及請求をしたほうが有利です。
その遡及請求ができることが後から分かるというのは、次のような場合です。
珍しいケースではない
■本当は障害認定日請求をしたかったが、あきらめていた例
・障害認定日当時に通院していた病院の名前が思い出せなかったが、最近になって、病院名の入った書類等を見つけた。
・障害認定日当時に通院していたと思っていた病院を間違っていたため「カルテがない」と言われていたが、最近になって別の病院だったことに気づいた。
■障害認定日請求ができることを知らなかった例
・障害年金制度を十分に理解していなかったので、思い込みで事後重症請求をしたが、最近になって、障害認定日請求も可能だったことを知った。
珍しいケース? いいえ、障害年金の相談を受けていると、こうした相談が多いのです。
請求には「取り下げ書」などが必要
今回のような遡及請求をする場合は、通常の請求よりも多くの書類が必要です。裁定請求書など事後重症請求をしたときに提出したのと同じ種類の書類のほかに、次の書類が必要です。
・障害認定日当時の診断書
・事後重症請求で受け取った年金証書
・取り下げ書
・事後重症請求時以降のことを書いた病歴・就労状況等申立書
・前回、事後重症請求をした理由と矛盾する場合は、その理由を説明する文書
取り下げ書の提出を求められると、事後重症請求で得た受給権まで返還しなければならないように思われて、腰が引けてしまうかも知れません。
しかし、事後重症請求で得た受給権を実際に返還するのは、新たな受給権を得たとき、つまり、障害認定日請求が認定されたときで良いのです。同一の傷病で受給権を2つ得ることはできませんので、一方の取り下げは当然のことですね。ご心配は無用です。
時効制度があることに注意
あらかじめ知っておかなければならないことがあります。遡及請求をして障害認定日での受給権が認められれば、確かに、さかのぼって障害年金が支給されます。
ただし、年金の支給には時効制度が適用されますので、受け取れるのは直近の5年間分だけです。障害認定日からの5年間分ではなく、障害年金請求時から過去にさかのぼっての5年間分です。
次の図をご覧ください。Aは、事後重症請求から5年以内に障害認定日請求をして、どちらも認定された場合です。障害認定日請求で5年間遡及できますので、5年前から事後重症請求をするまでの間の障害年金が新たに受給できます。
Bは、事後重症請求から5年以上経過して障害認定日請求をして、どちらも認定された場合です。この場合は、障害認定日請求が認定されても、新たな受給はありません。この5年間は、すでに受給済みだからです。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2020/05/75e53d4448e1e2458319d198b7c42715-59.jpg)
国民年金保険料の返還が受けられる
頑張って障害認定日請求をしただけに、Bの場合はがっかりですね。
しかし、少しは成果があります。障害認定日請求が認定され、障害等級2級以上になった場合は、障害認定日以降に納付した国民年金保険料を返還してもらうことができるのです。
もちろん、納付したままにしておけば、将来、老齢基礎年金を受給する場合には、年金額が多くなるので、必ずしも返還を求める必要はありません。国民年金保険料の返還は、Aの場合もBの場合も適用されます。
※ 2020/06/02 内容を一部、修正いたしました。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
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