遺言書を書く!と決めたら考えよう。遺言書作成の「4つのW」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2020年6月18日 9時30分
![遺言書を書く!と決めたら考えよう。遺言書作成の「4つのW」とは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_79898_0-small.jpg)
「今年こそ遺言書を書こう」そう決めたものの、何から始めたら良いか分からず、先へ進めない方は多いと思います。そんな方のために、遺言書を書く前に考えていただきたい「4つのW」をご紹介します。 1.実現したいことは何か(=What) 2.誰が書くか(=Who) 3.どこで保管するか(=Where) 4.誰が実現するか(=Who) それでは、順を追って説明します。
実現したいことは何か(=What)
まずは、遺言書を作成するにあたり最も大切なことを考えましょう。なぜ、遺言書を書くのでしょうか? そして、遺言書がないと、本当に実現できないことでしょうか?
例えば、自分の財産を2人の息子に均等に分けたいのであれば、自分が元気なうちに口頭等でそう伝えておけば済むかもしれません。一方、2人の息子が疎遠な場合は、死後にも自分の意思をしっかり伝えることができる遺言書の存在が役に立ちます。
実現したいことがある程度イメージできたら、それが法律上、遺言でできることかどうかも調べておきましょう。遺言でできることは、民法などの法律で決まっているからです(図1)。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2020/06/75e53d4448e1e2458319d198b7c42715-49.jpg)
気を付けたいのは、せっかく書いた遺言書が相続時に無駄になってしまうことです。
例えば、「夫婦仲が悪いので、自分の財産を妻に相続させたくない」と考え、全財産を娘に相続する旨の遺言書を作った場合です。この遺言を見て、妻と娘の関係が悪化してしまうかもしれません。
それを避けるために、妻が財産の全部または一部を相続することに娘が合意すれば、せっかくの遺言書が無駄になってしまいます。そうならないように、残された相続人のこともしっかり考えておきましょう。
誰が書くか(=Who)
次に、誰がその願いを法律的に有効な遺言書に仕上げるか、を考えてみましょう。 ここでのポイントは、「できるだけ1人で考えず、信頼できる人と話し合いながら進める」ことです。
筆者は、1人ですべてを判断し、自分で書くことはおすすめしません。
すべてを専門家に委ねるのは、費用の面からも慎重に考える必要はありますが、遺言書の執筆(もしくは、前項の「実現したいこと」の検討)は、法律や財務に詳しい専門家か、信頼できる友人・知人と話し合いながら進めたほうが良いでしょう。思いもよらないアイデアや、気づきを得られるかもしれません。
なお、民法に規定される主な遺言書の方式は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」そして「秘密証書遺言」です(※1)。このうち、自筆証書遺言は自分で書く方法ですが、法律上の要件が厳格に定められており、従わない場合無効になります(※2)。
公正証書遺言は、公証役場で公証人に書いてもらう方法ですが、費用がかかることも知っておきましょう(※3)。なお、一例として、財産が8000万円、遺言の相手が妻・子2人で、相続割合がそれぞれ1/2、1/4、1/4の場合、公証人手数料は8万6000円です(※4)。
どこで保管するか(=Where)
保管場所も、遺言を書く前にあらかじめ考えておきたいところです。 もし、遺言書を公正証書遺言で作成した場合、公証役場で預かってもらえるので問題になりません。しかし、その他の方式で作成した場合は、自分で保管場所を決めなければなりません。
ここで、保管場所を決めるポイントは、「身近な場所」ではなく、自身の相続まで「確実に保管」でき、「確実に発見できる」場所であることです。自宅での保管は手軽ですが、誰かが勝手に開けて改ざんするおそれがあれば、自宅以外の場所で保管する必要があります。
これらの保管場所に加え、2020年7月10日からは、法務局に自筆証書遺言を預けることができるようになります(※5)。
遺言書1件につき3900円の手数料で預けることができるので(※6)、これから自筆証書遺言を書く方や、すでに自宅で保管しているが不安を感じている方は、選択肢の1つとして検討すると良いでしょう。
誰が実現するか(=Who)
意外に見過ごされやすいのが、遺言書の内容を誰が実行するかについてです。
遺言書の内容を正確に読み取り、財産の目録を作成し、相続人へ説明(または説得)した上で遺産を分割し、相続人に振り分ける、という作業は労力を伴います。それができる人物を遺言執行者に指名し、場合によっては遺言書に記載する必要があります。
遺言執行者に、特別な資格は必要ありません。専門家に依頼するのが確実ですが、通常、相続財産の額に応じた費用がかかります(※7)。
もし、相続人、家族や知人友人などを指定する場合は、安易に決めず、「この人は自分の相続まで、今の(親密な)関係でいてくれるのか、また、自分の遺言書を確実に実行してくれるか」を、しっかり考えた上で依頼しましょう。
(出典および注釈)
(※1)その他、特別方式の遺言(死亡危急時遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言、船舶遭難者遺言)がある。
(※2)「自筆証書遺言」の記載方法例として、以下のサイトをご覧ください。法務省「自筆証書遺言に関するルールが変わります。」
(※3)公証人手数料の詳細は、以下のサイトをご覧ください。日本公証人連合会「公証事務」
(※4)
手数料8万6000円の計算根拠は以下のとおりです。
妻:4000万円(財産価額)・・・2万9000円(公証人手数料)
子:2000万円( 〃 )・・・2万3000円( 〃 )
小計:妻+子×2= 7万5000円
遺言加算=1万1000円(財産の合計が1億円以下の場合)
手数料合計=8万6000円
なお、公正証書正本または謄本の交付手数料(1枚につき250円)などその他の費用は除く。
(※5)法務省「法務局における自筆証書遺言書保管制度について」
(※6)法務省「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧」
(※7)遺言の執行は、弁護士や司法書士などの専門家や、信託銀行や信託会社などがサービスを提供しています。料率はまちまちですが、遺言書作成費用よりもかなり高額になります。また、最低報酬額を設けているところもあり、相続財産の額と報酬が必ずしも比例しない点に注意が必要です。
執筆者:酒井 乙
AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員
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