いまさら聞けない不動産投資の基本(9)ワンルームマンション投資の落とし穴
ファイナンシャルフィールド / 2020年6月24日 9時30分
![いまさら聞けない不動産投資の基本(9)ワンルームマンション投資の落とし穴](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_80351_0-small.jpg)
「いまさら聞けない不動産投資の基本」シリーズでは、主に不動産投資をこれから始めようと考えている人、始めたものの不安を感じている人などを対象として書かせていただいています。 ここ数年で急速に増えたワンルームマンション投資。しかしながら、投資用ワンルームマンションを購入された方の中には、その仕組みやメリット・デメリットをあまり深く知らずに始められている方も少なくありません。 今回はワンルームマンション投資の特徴について考え、個人的な見解も含めてお伝えします。
ワンルームマンション投資の特徴
これまでもお伝えしてきたとおり、不動産投資はしっかり検討・分析して行えば、比較的リスクの低い投資法だといえます。不動産にはそれぞれに特性があり、その特性をしっかり理解することが必要です。
これからの日本は人口減少が進行していきます。世帯数も2035年くらいをピークに減少に転じるといわれていますが、単独世帯の数は今後も増加が予想されています。
核家族化が進行し、進学や就職、結婚を機に親元を離れる若者が増えています。結果として地方では人口減少がより顕著になり、都市部近郊でも人口が減少するところが増えていきます。
ワンルームマンションは、地方から出てくる若者を中心とした単身世帯の受け皿であるといえます。こうした人たちは交通の便や生活利便施設の充実など、利便性の高いエリアへの居住を希望する人が多いことも確かです。
こうしたマーケットを狙い、首都圏でのワンルームマンションの新規分譲戸数はここ15年ほどの間で毎年8000戸前後が供給されています。あわせて、こうした物件のオーナーとなる大家さんも増えました。
ワンルームマンションの価格推移
ワンルームマンションだけでなく、一般分譲マンションも含めたマンションの価格は、2013年以降右肩上がりに上昇してきました。
2019年には首都圏の新築マンションの平均価格が6000万円を越え、バブル期のピークの価格にほぼ並んでいます。2020年以降はコロナウイルスによる経済へのダメージの状況しだいでは下落していく可能性もあると感じます。
一方、このところ新築マンションの供給戸数は減っています。2000年をピークに減少し始め、2008年のリーマンショックのころには大きく減り、その後少し持ち直したものの、直近5年間の供給戸数はピーク時の半分以下です。
この間、新築分譲マンションのデベロッパー(開発分譲会社)は大手寡占が進みました。現在は体力のある大手が売り急がず、長期間かけて販売するケースが増え、価格をコントロールしている印象があります。
一方、投資用マンションに限った供給は直近5年程度の間、年間約7000戸前後の戸数を維持しています。価格も上昇してきており、やや過熱感があるように感じます。
投資用マンションに関していえば、大手のシェアは減少しており、中小のデベロッパーが一般向けでは体力が続かないために、投資用の需要に流れ込んでいるようにも感じます。価格が高騰した結果として、販売価格を抑えるために1戸当たりの面積を小さくしたり、郊外の物件が増える傾向も見て取れます。
新築であれば物件のきれいさや、日本人ならではの「新築志向」の強さから、多少強気の家賃設定でも入居者が決まるケースは多いと考えられますが、投資対象として考える場合は、今後の予測も含め慎重に判断しなければ行けない状況であるといえるでしょう。
ワンルームマンション投資の落とし穴
ワンルームマンションへの投資を考える際に、抑えておきたいポイント・リスクを考えます。これらを見誤ると落とし穴があるかもしれません。
・新築でも一度人が住めば中古(新築プレミアムの落とし穴)
ワンルームマンションを投資用として分譲する会社の中には、高級分譲マンションのような立派なパンフレットを作成している会社もあります。新築分譲時の価格にはこうした資料の作成費も含めた広告宣伝費が含まれています。
また、先述のように新築を選ぶ入居者も多く、結果として、よほど市場相場とかけ離れない限り、最初の入居者は高めの賃料でも埋まる可能性が高いといえます。一度人が住めば中古マンションですので、入居者が入れ替わった時に同じ賃料で再入居してもらえるかどうかが重要になります。
・賃料の下落(需要と競合物件)
入居者の入れ替わりのことを考え、当該エリアの人口予測、賃料の周辺相場、競合物件の数など確認が重要になります。
駅から少し距離のある物件の場合、より駅に近いところに競合物件が建ち、その物件が同じ賃料で募集し始めると、遠いほうの物件は同じ賃料では埋まらない可能性が高くなります。長期保有するつもりでいても、賃料の下落により毎年赤字に陥るようなケースもあります。
・資産価値の下落(需要と周辺環境)
投資用不動産の場合、その価格は土地価格の推移よりも賃料、利回りの影響を強く受けます。賃料が下がれば当然利回りが下がり、結果として、売却しようとした時の価格も下がります。
売却の際、借入金の残債が物件価格よりも多く残っているような場合には、追加費用が必要になり、売るに売れないというケースもあります。
・家賃滞納
投資用不動産の場合、入居者からの家賃が滞納するケースもあります。サブリースしている場合には、サブリース会社が傾かない限りこうしたことはないでしょうが、個人と直接契約している、あるいは入退去管理だけを業者に依頼している場合は、こうしたリスクに備えることも必要です。
管理会社で賃料の督促まではやってくれても、それより先には突っ込んでくれないケースもありますので、保証会社の利用なども検討すべきです。
・サブリース会社からの賃料見直し要請
前回のサブリースのコラムでもお伝えしましたが、サブリースもずっと賃料を保証してくれるわけではありません。周辺の賃料が下落し、想定家賃が取れなくなったり、空室が増えてくるとサブリース会社からの値下げ要請が来る可能性もあります。
・管理組合の運営と修繕積立金の不足
最近の投資用マンションは、先述のように比較的小さな会社がデベロッパーであるケースが増えています。投資用マンションの場合、同じ建物内のすべての分譲住戸が投資用であることも少なくありません。
一般のマンションと異なり、投資用マンションでは所有者(=個々の住戸のオーナー)が管理組合の集まりに出席することも少なく、管理組合が機能していないケースも多々あります。建物管理の状況や長期修繕計画と修繕積立金の積み立て状況などに、あまり関心がないことが多いと考えられます。
分譲会社としても、実質利回りを落とす管理費や修繕積立金を分譲時に安く設定し、分譲後はほったらかしということにもなりかねません。
一般のマンションでも最近、修繕積立金の不足が問題になっています。いずれ、投資用マンションでも同じような事態に発展しかねません。管理が行き届かないマンションはいずれ、入居者からのクレームが増え、結果として賃料の下落、空室の増加、資産価値の減少を招きます。
まとめ
東京の人口も2025年ごろをピークになだらかに減少していくと予測されています。
東京都の中でも人口が減るところ、横ばいのところ、わずかながらも増えていくところがあるでしょう。単独世帯は今後も増加が見込まれていますが、エリアによって増加率にはばらつきがあり、減少するエリアもあると考えられます。
ワンルームマンション投資に関するネガティブな部分を主に見てきましたが、逆にいえば、これらのチェックポイントをクリアできる物件であれば、投資対象として検討できると考えます。
都心部でのワンルームマンションの供給数は少なくなっていますが、表面利回りだけで判断するのではなく、立地を厳選する必要があるでしょう。
郊外に広がり始めている供給状況ですが、今後の投資対象としては都心部に回帰していくと考えられます。個人的には、あえて都心部で今後希少になるであろうエリアの中古物件を狙うという選択肢が手堅いのではないかと感じています。
このところ投資用中古マンションの価格も高くなっています。投資タイミングの見極めも重要だと感じます。
<参照>
不動産経済研究所「2019年上期及び2018年年間の首都圏投資用マンション市場動向」(2019年8月6日付)
東京都政策企画局「2060年までの東京の人口推計」
東京都「東京都世帯数の予測」
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
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