有期契約で働いているときに、もし解雇や雇止めになったら?
ファイナンシャルフィールド / 2020年6月29日 3時0分
新型コロナウイルス感染症の影響で、解雇や雇止めになったという事例が多くなっています。特に有期労働契約で働いている方(期間1年間等の更新契約で働いている方)は心配ですね。 今回は解雇と雇止めの2点から考えてみましょう。
解雇
最初に、正規の従業員の場合についてご説明します。
会社側がやむを得ず従業員の解雇を検討する場合、会社側は次の点に気を付ける必要があります。まず、業務上の傷病による休業期間およびその後30日間や、女性の産前産後の休業期間およびその後30日間(労働基準法第65条)は、解雇が禁止されています(労働基準法第19条)。
上記に該当しない場合でも、解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、その権利を乱用したものとして、無効とされます(労働契約法第16条)。
また、整理解雇(経営上の理由から余剰人員削減のためになされる解雇)については、裁判例において、解雇の有効性の判断にあたり
(1)人員整理を行う必要性
(2)できる限り解雇を回避するための措置が尽くされているか
(3)解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であるか
(4)労働組合との協議や労働者への説明が行われているか
という4つの事項が考慮されなければなりません。
そして、会社は従業員を解雇する場合には、30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法第20条)。
加えて、会社には離職する従業員の再就職支援を援助するなど、従業員の職業の安定を図るよう努める必要があり、一定規模以上の従業員の離職を余儀なくされることが見込まれる場合には、最初の離職が発生する1ヶ月前までに「再就職援助計画」をハローワークに提出し、認定を受ける必要があります。
最後の離職が発生する1ヶ月前までに、「大量雇用変動の届出」を提出する必要があります(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)。
このように、正規の従業員の解雇は会社側にとってとてもハードルの高いものになっています。
有期契約の従業員の場合は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間中に解雇はできません。期間の定めのない契約を結んでいる場合の解雇よりも、本当に解雇しなければならないかを厳しく判断されます(労働契約法第17条第1項)。
つまり、いかに新型コロナウイルスの影響があったとしても、有期契約の従業員を契約期間中には簡単に解雇できないのです。
雇止め
雇止めとは、有期雇用の従業員について、契約更新をせずに契約期間満了を理由に契約を終了させることです。
今回の新型コロナウイルスの影響を理由として、会社が有期契約の雇止めをしようとする場合でも、直ちに有期契約の雇止めが認められるものではなく、法律などにより、以下のような決まりがあります。
有期契約の従業員から、有期契約の更新の申込みがあった場合、その方の雇止めについては、以下のいずれかにあたると認められる場合には、会社が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、会社はこれまでと同一の労働条件で、その申込みを承諾したものとみなされます(労働契約法第19条)。
(1)過去に反復更新された有期契約で、その雇止めが無期契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
(2)労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの
有期契約を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、雇止めの予告をしなければなりません。
このように有期契約の労働者の方は、労働基準法や労働契約法で守られていますので、会社側からの解雇や雇止めの依頼があっても、すぐに受け入れるのではなく、会社側にまだ働きたい旨をしっかりと説明してください。
困ったらまず最寄りの労働局・労働基準監督署や「新型コロナウイルス感染症に関する特別労働相談窓口」・「労働条件相談ほっとライン」に相談しましょう。
(参考)厚生労働省
「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント
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