こっそり学ぶ遺族年金(1) まずは制度の基礎知識をざっくりと解説
ファイナンシャルフィールド / 2020年6月30日 10時10分
![こっそり学ぶ遺族年金(1) まずは制度の基礎知識をざっくりと解説](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_80799_0-small.jpg)
一家の働き手が亡くなったあと、配偶者や子どもたちの生活を支える遺族年金。仕組みが複雑なせいで、あてにしていたのに受給できなくて慌てる人や、受給できるのに受給できないと思い込んでいる人が少なくありません。遺族年金の知識は、きちんと持っておきたいものです。 でも、あまり大っぴらに『予習』をするのもはばかられるところ。さりげなく学んでおきましょう。第1回は「基礎知識をざっくりと」です。
遺族年金の受給者は意外に少ない
遺族年金は、国民年金や厚生年金保険の被保険者または被保険者であった人が亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた遺族が受けることができます。遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、亡くなった人の年金保険料の納付状況などによって、いずれかまたは両方の年金を受給できます。
厚生労働省の統計によると、2019年12月現在、遺族厚生年金の受給者は約560万人、遺族基礎年金の受給者は約9万人です。両方を受給している人は、それぞれの受給者数にカウントされています。
「国民皆年金」で基本的に20歳以上のほとんどの人が被保険者または被保険者であった人なのに、受給者は意外に少ないと感じるのではないでしょうか。遺族年金を受給するには、それだけ高いハードルがあるともいえるのです。
遺族厚生年金の受給要件は
そんな中でも、受給者が多いのが遺族厚生年金です。受給要件は次の3点です。
【1】亡くなった人の要件(どれかに当てはまること)
(1)厚生年金保険の被保険者
(2)厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなった人
(3)障害等級1級または2級の障害厚生(共済)年金の受給者
(4)老齢厚生年金の受給権者。ただし、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上あること
(5)老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人。ただし、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上あること
【2】保険料納付要件(どちらかに当てはまること)
(1)上記【1】の(1)または(2)の場合は、亡くなった日の前日において、亡くなった日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が3分の2以上あること
(2)2026年3月末日までに亡くなった場合は、亡くなった人が65歳未満であれば、 亡くなった日の前日において、亡くなった日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと
【3】受給できる遺族の要件
亡くなった当時、亡くなった人によって生計を維持されていた人のうち、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。優先順位は次のとおりです。
(1)子のある妻、または子のある55歳以上の夫
(2)子
(3)子のない妻
(4)子のない55歳以上の夫
(5)55歳以上の父母
(6)孫
(7)55歳以上の祖父母
なお、次の条件があります。
▼子、孫に関して(「子のある妻」および「子のない妻」の「子」を含む)
・亡くなった当時、18歳になった年度の3月31日までの間にあること。胎児であった子は出生以降に対象
・20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にあること
・婚姻していないこと
▼30歳未満の子のない妻に関して
・5年間の有期給付
▼夫、父母、祖父母に関して
・受給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限って、60歳より前でも遺族厚生年金を併せて受給可能
遺族基礎年金は遺児の育成支援が目的
次に、遺族基礎年金です。遺族基礎年金は遺児の育成支援が目的です。このため、子がいない場合は受給できません。上記の受給者数の文中で、遺族基礎年金の受給者数が遺族厚生年金の受給者数と比べてずいぶん少なかった理由がこの点です。受給要件を見てみましょう。
【1】亡くなった人の要件(どれかに当てはまること)
(1)国民年金の被保険者
(2)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人。ただし、日本国内に住所を有していること
(3)老齢基礎年金の受給権者。ただし、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上あること
(4)老齢基礎年金の受給資格期間を満たした人。ただし、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上あること
【2】保険料納付要件
上記の遺族厚生年金の場合と同じ
【3】受給できる遺族の要件
亡くなった人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」。子の条件は、遺族厚生年金の場合と同じ
遺族年金の年金額は
遺族年金の年金額(令和2年度)は次のとおりです。
▼遺族厚生年金
亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
なお、40歳から65歳になるまでの妻には「中高齢の寡婦加算」があります。生計を同じくする子がいない、または子が遺族基礎年金を受給できなくなった、などの条件があります。58万6300円です。
▼遺族基礎年金
・子のある配偶者が受け取るとき
78万1700 円+(子の加算額)
・子が受け取るとき(次の金額を子の数で割った額が1人当たりの額)
78万1700円+(2人目以降の子の加算額)
なお、1人目および2人目の子の加算額は各22万4900円、3人目以降の子の加算額は各7万5000円です。
「寡婦年金」「死亡一時金」などの独自給付も
これらのほか、国民年金には「寡婦年金」「死亡一時金」などの独自給付の制度もあります。以上、遺族年金制度をざっくりと見てみました。次回から、もう少し掘り下げて見てみましょう。
※ 2020/07/02 本文を一部修正いたしました。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
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