個人型確定拠出年金(iDeCo)の税制優遇。資金の拠出と運用においてどんな優遇がある?
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月1日 9時10分
個人型確定拠出年金のメリットは、税制優遇が他の制度に比較して充実しているところです。 具体的には、(1)資金の拠出、(2)運用、(3)受給の3つの段階で税制優遇があります。つまり、さまざまな前提がありますが、うまく活用すれば、自分で手に入れたお金をこの制度に拠出することで、運用で増やしながら一定額までは税金を払わずに受領できます。 ここでは、その中から、(1)資金の拠出と、(2)運用の段階での税制優遇についてその概要を説明します。
資金の拠出に関わる税制優遇(拠出した額の所得控除)
所得税を支払っている人が受けられる税制優遇です。逆に課税所得がない人は受けられないものです。iDeCoの仕組みとして、1年間にiDeCoへ拠出できる金額は、自営業者か給与所得者か、あるいは給与所得者でも勤め先の企業等の年金制度によって限度額は異なります。
しかしながら、1年間に拠出した金額については、すべてを所得から控除できます。給与所得者の場合には、基本的には年末調整で手続きを行うことができます。
同様の税制優遇は、生命保険や損害保険でもありますが、必ずしも支払った保険料のすべてを控除できるとは限らず、保険の種類ごとおよび保険料の合計額により控除できる金額に制限があります。一方、iDeCoの場合は、1年間に拠出した金額の全額が所得控除の対象となります。
具体的に、自分自身の税金がどれくらい軽減されるかについては、運営管理機関のホームページ等訪れてみると、年収ベースで試算できるところが多くあります。
ここでは、簡単な例を挙げて説明します。所得控除の対象ですので、所得税および住民税が軽減されます。所得税は課税所得に応じて税率が変わる累進課税です。
課税所得ベースで所得税率は(復興特別所得税を除く)、
195万円以下 5%
195万円超 330万円以下 10%
330万円超 695万円以下 20%
695万円超 900万円以下 23%
・・・・・(以下略)・・・・・ となります。
住民税は所得に応じた部分の標準税率は所得に関わらず10%ですので、例えば、課税所得が330万円超695万以下の人は、単純に計算すれば、30%(20%+10%)分の税金が、1年間のiDeCoへの拠出額分について軽減されることになります。
所得税ですので、あくまでその年(1月1日〜12月31日まで)に実際に拠出した金額で計算しますから、新規に加入した年については、軽減金額を多く見積もり過ぎないように注意が必要です(7月から加入したのであれば、初年度は年間軽減見込みの半分になます)。
ちなみに、定まった拠出のタイミングで拠出できていないと(例えば、拠出金支払口座の振替時の残高不足等)、追加拠出はできませんので、この点についても注意が必要です。
運用に関わる税制優遇
通常、資金を運用して利益を得た場合には、税金がかかります。投資信託で運用して、普通分配金を受領した場合や、あるいは売却して利益を得た場合には、20%(復興特別所得税を除く)の税金がかかります。
しかし、iDeCoの運用の場合は、そこで得た利益については課税されません。
iDeCoについては、年間の拠出額について制限がありますので、一気に運用額を増やすことはできませんが、コツコツと積み上げていった資金を運用して得られた運用利益には課税されません。
同様に、運用利益を非課税とする制度としてNISAがありますが、同じ運用利益非課税といっても、NISAの場合は1年で“購入する”限度額が定められている点が異なります。
NISA口座で運用商品を1年間に購入できる枠なので、その年の限度額まで購入した後、売却した場合には、売却して得た資金を同じ年にNISAで再投資はできません(1年間の購入枠が決まっているため)。
一方で、iDeCoは年間の拠出枠が決まっていて、年間にiDeCoへ投入できる金額は決まっていますが、いったんiDeCoの中に入れれば、自由に売却、再投資を行うことができ、そこで得られた運用益は非課税となります。
(参考)
復興特別所得税:東日本大震災からの復興のため期限を定めて設けられたもので、基準所得税×2.1%です。
例えば、公募株式投資信託の配当所得については、15%が所得税、5%が地方税なので、 現在は、正確には15×0.021+5=20.315%の税金がかかります。
執筆者:堀内教夫
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