リスク資産は危険? それとも安全? 資産運用では「言葉の壁」にも気を付けよう
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月2日 10時0分
FP事務所を経営していると、資産形成に関する相談に直面する機会が多々あります。 会社員の場合、ここ近年、特に確定拠出年金制度やNISA(少額投資非課税制度)を活用したリスク資産で運用をされている方が増えているように感じますが、個人的にはこのような傾向に対して少なからず危惧を抱いています。 なぜならば、金融経済や金融商品などについて知る前に言葉の壁があるからです。
リスク資産を一見、危険だと思ってしまう理由
リスク資産は、安全に管理・運用することが難しい資産であると思われている方が多いかもしれません。
確かに、これは日本語としては必ずしも間違いではありませんが、その前に「リスクとはいったい何か」について考えてみると、「リスク=安全ではない=危険」ということではなく、あくまでも「不確実性」を意味しているということに気が付きます。
このため、日本人の場合その多くが資産運用を始める前から間違った解釈をしてしまっている現実があります。
これは仕方がないことですが、リスクを取りたがらない傾向をこの意味で表現すると「不確実なことは嫌」となるため、このような誤解をしている限り、どうしても金融経済や金融商品などについて理解しようと思わなくなります。
このようなことから、リスク資産は敬遠される傾向が高くなっているのかもしれませんが、国の制度としては、老後のお金は自助努力で準備しましょうという政策にかじを切ってしまっているため、ここに大きな問題が隠れています。
端的にいうと、「リスクを取る」⇒「危険は嫌」であるため、自助努力で老後のお金を準備するには安全資産で準備するほかありません。結果として、運用効率は悪くなり、お金がなかなか貯まらないという現実に直面しています。
もう1つ、日本人がリスクを取りたがらない理由は、老後を異様なほどに不安に感じている人が多いからだと思います。
超高齢化と少子化により人口が減っていくだろうといわれる中、日ごろからお世話になっている金融機関の人から投資を勧められ、老後の不安を解消するためについ手を出してしまったというケースに遭遇することがあります。
よくあるケースでは、外貨建ての生命保険を勧められた、少し複雑な株式や投資信託や外国債券などを勧められた、不動産投資を勧められたなどといった事例があります。
これらについては仕組みをしっかりと理解していればいいのですが、前述の外貨建ての生命保険の場合、一見、保険のため安全のように思ってしまいます。
販売サイドとしては、ある程度はリスクについて説明をしているはずですが、外貨建ての生命保険は、単純に保険に外貨預金がくっついているようなものなので、資産運用の中で最も難しいと言われる為替相場についてしっかりと理解していなければ、本来、加入するのに躊躇するものです。
しかし、「リスク=危険なものには手を出したくない。でも、保険だから安心だろう」と思い、つい入ってしまったという方からのご相談を受けると、リスクという言葉の壁が安心を求めてしまう日本人の心理に無用な混乱を招いていると感じてしまいます。
このような原理は他の金融商品などでも働いていて、だからこそリスクという言葉の意味を知り、その上で、金融経済や金融商品などの知識・情報についてしっかりと身に付けていく必要があると考えています。
まとめ
日本人は、特に明治期以降、外来語を日本語に組み合わせながらカタカナ語として日常に取り込んできた経緯があります。
最近では、新型コロナウイルス感染症が広がる中で「オーバーシュート」やら、「ロックダウン」など、普段、聞き慣れない言葉が飛び交っているような気がします。
「イノベーション」、「コンプライアンス」、「アライアンス」など、ビジネス用語として定着しつつある言葉もよく耳にするようになりました。
主に英語が主流ですが、英語も言葉であるため、そこには本質的な意味が隠され、日本語では翻訳上、必ずしもカバーできないニュアンスが存在していたりします。
これが、自国語と他国語のギャップだと思いますが、資産運用の世界でも、たくさんの横文字が表現されています。その代表格が「リスク」です。
重要な言葉を読み違えると、真逆な現象を引き起こすという話をしましたが、資産運用は別の意味で言語習得の機会でもあります。リテラシーを磨くにはまず言葉から。言葉を正しく身に付けることで、資産運用に慣れていくようにしましょう。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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