譲渡所得とは? その4 「その他資産」(土地・建物および株式等以外)を譲渡したとき
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月4日 11時0分
譲渡所得の対象は大きく3種類あり、土地・建物、株式等、「その他資産」に分かれます。皆さんになじみの深い前二者が分離課税方式で、「その他資産」が総合課税方式となります。 それでは譲渡所得の最後に、「その他資産」を譲渡した場合の税制について解説してみたいと思います。
「その他資産」とは? 譲渡に関する課税方式は?
「その他資産」には、金地金、宝石、書画、骨とう、船舶、機械器具、漁業権、ゴルフ会員権、特許権、著作権、鉱業権、土石(砂)などが含まれます。この中で私たちになじみの深いものとしては、金地金などの貴金属類、ゴルフ会員権、特許権・著作権などの権利が挙げられます。
「その他資産」の譲渡所得の課税方式は、総合課税です。すなわち、給与所得、事業所得などの経常的な所得と合算して課税されます。
「その他資産」の譲渡所得の計算方法、区分、特別控除額
「その他資産」を譲渡したときの譲渡所得の金額の計算式は次のとおりです。これは、短期譲渡所得と長期譲渡所得の両方があることを想定した計算式になっています。
短期譲渡所得の総収入金額-(取得費+譲渡費用)+長期譲渡所得の総収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡益
譲渡益-特別控除額(最高50万円)=譲渡所得の金額
(1)短期譲渡所得と長期譲渡所得の区分
短期譲渡所得とは、所有期間が5年以下の資産を譲渡することで生ずる所得です。
ただし、自己の研究成果である特許権、著作権などの場合は、所有期間に関係なく長期譲渡所得となります。
長期譲渡所得とは、所有期間が5年を超える資産を譲渡する際に生ずる所得のことです。
短期譲渡か長期譲渡かを判定する基準が、土地・建物の場合と少し違うことに注意が必要です。土地・建物の場合、購入した日から売却した日の所属する年の1月1日までの期間が5年以内か、5年を超えるかで短期譲渡か長期譲渡かが決まりますが、「その他資産」の場合は「売却した日の所属する年の1月1日」という限定がありません。
(2)特別控除額
特別控除額は、短期譲渡所得と長期譲渡所得を合計して50万円までです。
まずは短期譲渡所得の譲渡益から控除して、残りがあるときは長期譲渡所得の譲渡益から控除します。譲渡益が50万円より少ない場合、譲渡益がそのまま特別控除額となります。
税額の計算方法と注意点
「その他資産」を譲渡したことによる所得は、他の所得(給与所得など)と合計して総所得金額を求め、所得控除の合計額を控除した残額に所得税の税率を乗じて税額を計算しますが、そこで注意しなければいけないことがあります。
譲渡所得の金額を求める方法は上記の「譲渡所得の計算式」で説明したとおりですが、長期譲渡所得については税額を計算する際、その金額に1/2を掛けて課税所得金額を計算するということです。すなわち課税対象となる長期譲渡所得の金額は1/2になります。
土地・建物の場合は、長期譲渡所得の税率を小さくする(短期譲渡30%、長期譲渡15%)ことで長期所有の土地・建物を優遇していましたが、「その他資産」の場合、課税所得金額を小さくすることで長期所有の資産を優遇していることになります。
「その他資産」の総所得金額を計算してみよう
税額計算の仕組みを理解するために「その他資産」の譲渡所得金額および総所得金額を計算してみましょう。
以下を前提とします。
短期所有の金地金:売却収入 150万円、取得費+譲渡費用 120万円
長期所有のゴルフ会員権:売却収入 300万円、取得費+譲渡費用 200万円
譲渡所得を除く総所得金額:570万円
短期譲渡所得金額 150万円-120万円-30万円=0円(※1)
長期譲渡所所得金額 300万円-200万円-(50万円-30万円)=80万円(※2)
(※1)特別控除額は50万円までですが、まず短期譲渡所得の譲渡益から30万円を引きます。その結果、短期譲渡所得の譲渡益はゼロになります。
(※2)次に残りの20万円を長期譲渡所得の譲渡益から引きます。
譲渡所得を反映した総所得金額は以下のとおりです。
570万円(課税所得金額)+0円(短期譲渡所得)+80万円(長期譲渡所得)×1/2=610万円
課税所得金額を計算するにあたり、長期譲渡所得金額に1/2を掛けます。80万円×1/2という算式が、長期譲渡所得に対する税制優遇を示しています。
まとめ
譲渡所得に関して、全体説明、土地・建物の譲渡所得、株式等の譲渡所得、「その他資産」の譲渡所得という順序で、その内容を見てきました。
一言で譲渡所得といっても、譲渡の対象となる資産によって課税方式や税額の計算が異なり、さまざまなバリエーションがあることが分かっていただけたかと思います。
国税庁 No.1460 譲渡所得((土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき))
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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