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生活保護を受けている人たちはなぜ保護開始に至ったか?年代別の保護開始理由とは

ファイナンシャルフィールド / 2020年7月7日 9時20分

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新型コロナウイルス感染症の影響で経済的に厳しい状況の人が増えているようです。早く終息して、元の生活ができるように願うばかりですが、収入が思うように戻らなかった時のために、セーフティーネットの1つである生活保護について、すでに保護を受けている世帯の開始理由を確認してみました。

生活保護の開始は貯蓄等の減少・喪失が最多

厚生労働省の被保護者調査では、生活保護を受けている世帯に対し、保護開始理由を調査しています。下記のグラフは、2018年度の調査結果から世帯構成別に保護開始理由をまとめたものです。
 


資料:厚生労働省『平成30年度被保護者調査』
 
保護開始の理由は、傷病者世帯以外の高齢者世帯・母子世帯・障害者世帯・その他世帯で、「貯蓄等の減少・喪失」が最も多くなっています。
 
例えば、高齢者世帯では保護を開始した6万8149世帯のうち、3万1242世帯が「貯蓄等の減少・喪失」を理由にしています。傷病者世帯では「世帯主の傷病」が最も多く、母子世帯は「有職者の離別等」が2番目、障害者とその他の世帯は「世帯主の傷病」が2番目に多くなっています。
 
傷病や離別によりすぐに保護開始になったのか、その後貯蓄等で何とか耐えていたものの、最終的に保護開始に至ったのかは、各世帯によって分かれそうです。
 
その他の世帯は若年層世帯が含まれているため、「失業(定年・自己都合)」や「その他の働きによる収入減少」等、仕事の状況変化を理由としている世帯も比較的多くなっています。

働く環境の改善は保護世帯の減少に好影響

次に時代によって開始理由に違いがあるのか確認するため、2018年の結果を6年前の2012年と比較してみました。グラフでは高齢者世帯とその他の世帯を取り上げています。
 


資料:厚生労働省『平成30年度被保護者調査・平成24年度被保護者調査』
 
2012年と2018年を比べると、全体では2018年のほうが約6万世帯少なく、特にその他の世帯では、8万5756世帯から5万5190世帯へ約3万世帯も減っています。
 
開始理由を見ると、「失業(解雇等勤務先都合)」や「老齢による収入減少」、「事業不振・倒産」の減り方が大きいです。アベノミクス効果なのかは定かではありませんが、働く環境が大きく改善した結果といえそうです。
 
しかし、高齢者世帯等は働く環境が改善しても働いていない場合が多いので、貯蓄等の減少・喪失により保護開始となる人が増え、高齢者世帯全体も6年間で増えています。

高齢になるほど貯蓄等の減少・喪失を理由に保護開始となっている

最後に生活保護を受けている世帯について、世帯主の世代別に20歳代から70歳代以上まで分けて、保護開始理由を確認してみました。
 


資料:厚生労働省『平成30年度被保護者調査』
 
グラフを一目見てわかるように、高齢になるほど保護を開始する世帯が多くなっています。70歳以上世帯の開始理由では、健康状態の悪化(世帯主の傷病等)は少数で、経済状態の悪化(収入や貯蓄等の減少・喪失)を理由としている方が圧倒的に多いです。
 
経済状態の悪化が突然起きたのであれば対処が難しいですが、徐々に悪化したのであれば、改善するチャンスが1度や2度はあったかもしれません。調査では保護開始の理由が14種類挙げられていますが、その他の中にまだまだ違う理由がたくさんありそうです。
 
生活保護制度は、生活に困っている人の頼りになる必要不可欠な制度です。ただ、税金を活用している以上は納税者の納得できる運営が重要です。多くの人が生活保護制度のことを知り、状況を理解し、本当に困っている人に対して優しく手を差し伸べてほしいものです。
 
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者

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