私たちの日常生活を取り巻く約款。民法改正によって約款の存在が明記されたことをご存じですか?
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月7日 10時20分
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2020年4月、改正民法が施行されたことにより、これまで法律上明記されてこなかった約款の存在が明記されることになりました。約款は、私たちの日常生活のいたるところで契約を成立させています。これを機に約款について理解しておきましょう。
そもそも約款とは
公共交通機関やインターネットサービスの利用、電気・ガスの供給契約など、私たちが日常生活で何らかのサービスを受ける際、契約書に代わって約款や規約といったものが用いられることがあります。
その反面、従来の民法では、約款などについて直接的な規定がなく、内容の有効性について曖昧な部分もありました。
そこで、改正民法では、従来曖昧だった約款などについて次のように定義し、名称も定型約款と呼ぶこととしました(本記事では便宜上「約款」と呼びます)(※)。
(1)ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行い
(2)その内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的
(3)上記の契約で利用されるために一方が用意する条項の集まり
これを簡単にかみ砕くと、個別に詳細な契約条件を決めていくことが事務処理上困難な場合に、画一して適用されるルールが約款なのです。
約款は同意のもとに適用されるのが基本
約款は、次のような場合に当事者間の契約内容とされます。
・約款を契約の内容とする合意をしたとき
・約款を契約の内容とすることをあらかじめ相手方に表示していたとき(公共交通機関など個別の表示が困難な場合は公表すればよいなど例外あり)
しかし、実際に約款が使われる際には、法律上の争いなどが生じた場合に約款を用意する側が有利ということが多いのも現実です。そこで、あまりにも一方的にどちらかの利益が害されるようなひどい条項については、その部分は合意がなかったとみなされることになりました。
なお、取引の合意前、または合意してから相当の期間内に約款の内容を確認できるよう請求があれば、約款を準備したものは相手に約款の内容を提示しなければなりません。特に、取引の合意前にその要求を理由なく拒んだ場合、約款の内容は契約の内容となりません。
一方的な約款変更は通じないことがある
約款が用いられる契約の中には長期にわたって契約が続くものもあり、法令や社会の変化に応じて約款の内容を柔軟に変更することが適当な場合もあります。
そういった理由から、約款内に次のような条項の含まれることがあります。
本約款の内容は予告なく変更することがあります。
しかし、契約の原則からいえば、契約内容の変更は当事者双方の合意のもとに行われることが基本です。考えてもみてください、使わなくなった定期券を払い戻そうとしたところ、事前の告知など一切なく「今日から払い戻しは一切しません。」と突然いわれてしまったら、納得いかないでしょう。
そこで、改正後の民法では、約款の内容が変更できるのを次のような場合に定めました。
(1)約款の内容変更が相手方の利益になるとき
(2)契約の目的はもちろん、変更に必要性や相当性があり、その他の事情を考慮してもなお合理的であるとき
そして、約款を変更する場合は、変更後の内容や効果が発生する時期などを、インターネットやその他の方法で適切に周知しなければなりません。特に上記(2)によって変更する場合は、効力の発生時期までに周知されていなければ効力を生じないとされています。
約款を取り巻く環境は民法改正により大きく変化しました
2020年4月1日より、約款の存在が民法に明記されました。それにより、当事者が書面やメールなどによって反対の意思を明記していない限り、これから結ばれる契約はもちろん、現在有効に成立している契約で約款を利用しているものにも新しい約款のルールが適用されます。
約款は、電気や水道の契約、電車やバスの利用など、私たちの生活のいたるところで契約の内容を定めています。自分には関係ないと思わずに、約款や利用規約を提示された場合は、必ず目を通すようにしてください。
[出典]※電子政府の総合窓口e-Gov「民法:第五款 定型約款」(令和2年4月1日施行)
執筆者:柘植輝
行政書士
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