【任意後見? 法定後見?】高齢者の大切な財産を守る後見制度を事例で解説
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月17日 8時30分
人は加齢や病気によって判断能力が低下し、不要な買い物で散財をしてしまったり、弱みに付け込まれ騙されてしまったりすることがあります。今回は、そういった人たちを保護するための「後見制度」についてご紹介します。
後見制度とは
病気や精神上の理由により、人は判断能力が低下し、財産の管理や契約の締結といったことが難しくなってしまうことがあります。
場合によっては悪意に騙されてしまったり、不要な買い物を繰り返してしまうこともあるでしょう。そういった人たちを守り、支えていく制度が後見制度です。
後見制度には、大きく分けて法定後見と任意後見の2種類があります。
法定後見
法定後見とは、本人の判断能力の度合いに応じ、家庭裁判所によって選ばれた後見人など(本人の面倒を見る人)が本人の保護と支援を行っていく制度です。法定後見は、本人や配偶者、四親等以内の親族など一定範囲の人からの家庭裁判所への申し立てにより開始されます。
法定後見は、以下のように後見、保佐、補助の3種類に分けられます。
(1)後見
後見とは、病気や精神上の障害により、物事の判断能力が全くないような状態の人(成年被後見人と呼ばれます)を対象とした制度です。
例えば、植物状態にある人や認知症が進んでいるような状態がこれに当たります。成年被後見人が行った行為は、日用品の購入を除き、後見人(被後見人の保護者のようなもの)が取り消すことができますし、後見人は、本人に代わって財産の処分などの法律行為をすることができます。
後見は、次のような場面で利用されています。
- ★認知症が進んでいる父親が散財してしまわないよう、代わりに財産を管理する
- ★植物状態の叔父さんに代わり、遺産分割協議に参加する
(2)保佐
保佐とは、後見のように物事の判断能力を欠くほどではないものの不十分な人(被保佐人)を対象とした制度です。
例えば、もの忘れが激しくなり、日々の買い物でお金の受け渡しがスムーズにできないことがあるなど、日常生活に支障が出てきている状態です。被保佐人には保佐人がつけられ、お金の借り入れや相続の承認・放棄、訴訟を起こすことなど、重要な行為には保佐人の同意が必要になります。
これらの行為について、同意を得ずに行った場合は、本人または保佐人によって取り消すことができます。また、保佐人には一定の要件の下、被保佐人が同意を得なければならない行為のうち、一部について代理権が付与されることがあります。
保佐人は、次のような場面で利用されています。
- ★契約関係について大雑把になってきた親に代わり、子が親の土地を売却する事例
- ★定期的にお金が返済されているが、管理能力が低下している親に代わって、子が領収する事例
(3)補助
補助とは、軽度の認知症や知的障害により、簡単なことは理解できるが難しい話は判断できない人(被補助人)を対象とした制度です。
被補助人に課せられる制限は極めて限定的であり、家庭裁判所の審判において決定した特定の行為のみに、補助人の同意が必要であったり、補助人に取消権や代理権が与えられたりします。なお、家庭裁判所での補助開始の審判には本人の同意が必要です。
補助は、次のような場面で利用されます。
- ★もの忘れが多くなり、必要のない高額な装飾品をいくつも購入したので、10万円以上の買い物には子の同意が必要とした事例
- ★軽度の知的障害のある子が借金を繰り返してしまっており、借り入れについて補助人の同意を必要とした事例
任意後見
任意後見とは、法定後見とは異なり、本人に判断能力が充分あるうちに、本人の意思に基づいて結ばれる契約です。元気なうちに判断能力が落ちた場合に備えるという点で、法定後見とは大きく異なります。
任意後見は、本人と後見人になる人との信頼関係に基づいて成立するため、法定後見のように後見人などになれる人が限定されておらず、一定の要件を満たしていれば誰でも任意後見人になることができます。
任意後見を利用するには、公正証書によって任意後見契約を結ぶ必要があります。
任意後見は、次のような場面で利用されています。
- ★子が独り立ちして自身も高齢となり、今後も続く一人暮らしが不安といった事例
- ★最近もの忘れが激しく、自分の年齢がすぐに出てこないことがあり、将来が不安という事例
身の回りに心配な人がいれば、すぐに後見制度の利用を考えて
後見制度を利用することで、判断能力の低下した家族をアクシデントや悪意から守ることができます。
ただし、後見制度は法に定められた厳格な制度です。後見制度を利用するべきか悩んだときは、できるだけ早めに弁護士や行政書士などの専門家に相談するようにしてください。
[出典]
法務省民事局「成年後見制度 成年後見登記制度」
執筆者:柘植輝
行政書士
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