若い人の資産運用の始め方。みんながやってるから、ではなく、自分に合った方法を考えよう!
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月18日 1時10分
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新型コロナショックで、世界の株式市場が一時大幅に下落しました。 しかし、むしろこの相場の下げを良いタイミングとして、新たに運用を始める若い世代が増えているようです。(※1) 将来の年金減額なども懸念される中、運用によって資産形成を図ることは重要です。 ただし、自分に合ったやり方で行うことがさらに重要です。 ※本記事は2020年5月20日に執筆されました。
まず、どのように運用を始めるか?
若い人は一般的に、毎月の収入も貯蓄もそれほど多くありません。
このため、収入のうちの一部を、定期的に運用に回していく積立投資が現実的な資産運用の始め方となるでしょう。
また、運用商品はさまざまありますが、運用初心者にとって何に投資するか見定めるのは簡単ではありません。
今回の新型コロナショックを見ても分かるとおり、長期投資ならさまざまなリスクが想定されるため、なおさらです。
このため、さまざまな資産や通貨にバランスよく分散して投資を行うことが、やはり現実的となります。
そして、この「積立投資」と「分散投資」の両方において便利な商品というと、やはり一般的には投資信託となります。
次に、どのような制度をどう使うか?
資産運用を始めるにあたっては、iDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)の制度の活用が検討できます。
どちらも個人の資産形成を助けるために設けられた制度で、税制上の優遇措置があります。
制度の詳細については、金融庁(※2)や国民年金基金連合会(※3)などが詳しい説明をサイト上でしていますので、そちらをご覧になってみてください。
ここでは、これらの制度を活用する上で、逆に注意すべき点を指摘しておきたいと思います。
iDeCoの注意点
iDeCoは、資金を拠出したとき(拠出金額を所得控除)、運用益が出たとき(利益に非課税)、年金として受け取るとき(退職金控除や公的年金等控除)の3段階で税制優遇が受けられる制度です。
この税制優遇は非常に魅力的ですが、iDeCoには大きな弱点もあります。
拠出した資金は、最低でも60歳までは引き出せないということです。
また、運用期間が10年未満の場合は、その期間に応じて受給開始年齢はさらに最高65歳まで遅くなります(国民年金の保険料免除者になるなどの一定の要件を全て満たした場合には、例外として認められます)。
受給開始年齢の手前でまとまった出費が必要となっても、iDeCoの資金をあてにすることはできないということです。
さらに受給開始年齢になっても、そのときの相場環境が非常に悪く、運用資産額が想定よりも落ち込んでいるケースもありえます。
受給を開始する時点で運用資産はいったん全て売却して現金化することになりますが、売却を先延ばしして、相場の回復を待った方が賢明な場合もあるかもしれません。
受給開始は、最高70歳まで遅らせることができます(現在、最高75歳まで受け取りを遅らせるようにする案が議論されています)。
そのような事態も想定するなら、60歳になったからといって必ず資産が使えるようになるわけではないのです。
iDeCoはあくまで老後に備える自分の年金のための制度であり、もう少し手前の事業や夢のために運用を考えている人にとって役立つものではないのです。
つみたてNISAの注意点
NISA(つみたてNISA含む)には運用資金の所得控除などはないものの、運用益が出たときに、定められた期間内なら非課税となる制度です。
NISAの制度を利用するには、現時点では一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選択する必要があります。
2024年に改正されて、一般NISAの仕組みに変更がある見通しですが、いずれにせよ、貯蓄の少ない若い人にとっては、一般NISAよりもつみたてNISAの方が使い勝手が良いと思われます。
つみたてNISAでは、最大20年間、資金を非課税で運用することができます。
年間40万円まで運用に拠出することができます。
それに対して、一般NISAは拠出金額の上限は120万円と高いものの、非課税期間は5年間、最長でも10年間です。長期の資産形成を目指す若い人にとっては、つみたてNISAの長い非課税期間は有用でしょう。
ただし、つみたてNISAにも知っておくべき限界があります。
一般NISAでは上場株式や国内投資信託などの中から幅広く投資対象を選べるのに対し、つみたてNISAで投資対象となるのは金融庁が選別した投資信託のみです。
そして、その約9割がインデックス投信となっています。
インデックス投信とは、市場平均を示すインデックス(指標)と同程度のリターンを目指すものです。
これに対するのが、アクティブ投信と呼ばれるもので、市場平均以上のリターンをあげることを目指します。
運用会社の経験や分析力が試されるアクティブ投信には調査や分析に労力やコストがかかるため、どうしてもインデックス投信より手数料が高くなりがちです。
つみたてNISAの制度では手数料の安さを重視した結果、対象商品のほとんどがインデックス投信となりました。
しかし、「市場平均並み」ということは、市場平均がマイナスになれば、インデックス投信の成績も必ずマイナスになるということになります。
日経平均が下がっている中でも上昇する優秀な企業の株もありますが、インデックス投信ではそうしたものを多めに組み入れることはできません。
逆に、航空会社や自動車会社、商社など、分かりやすい理由で現在株価が下落しているものを避けることもできません。
経済や社会のことを勉強し、自身で有望な投資先企業などを選別したいと考える人には、魅力的な商品が見つけにくい制度といえます。
また、これは一般NISAでもそうなのですが、損失が出た場合に、他の投資との損益通算ができないことにも注意が必要です。
運用を成功させるためには、まずは一定の預貯金を
最初に、若い人は収入のうちの一部を運用に回していく積立投資が現実的であると書きました。
しかし運用を成功させるためには、一定程度の預貯金を作ることを実は優先すべきだと考えます。
少しでも運用を早く始めた方が、より資産形成が進むように感じるかもしれません。
しかし運用していると、必ず成績が良くない時期もでてきます。
そのときに、相場が次に回復してくるまで待てるかどうかによって、自分の思うような資産運用ができなくなる場合があります。
すぐに使える預貯金が手元になければ、急な出費が必要となったとき、成績が悪くても運用商品を売却しないといけません。
またiDeCoで運用しているなら、そもそも売却ができません。
予定している出費だけでなく、想定外の出来事にも対応できる程度の預貯金をまず確保しておくべきでしょう。
最低でも、半年分の生活費程度は預貯金で持っておきたいところです。
資産運用のために用意されている優遇制度も、目的によって選別し、また使い分ける必要があります。
さらに、人によっては預貯金を優先すべきかもしれません。
まずは自分の資産状況を確認し、そして運用の目的を定めることが資産運用のスタートとなります。
(参考)
※1 日本経済新聞 ネット証券、口座開設が急増 株価急落で初心者が参入
※2 金融庁 iDeCoが良いという話も聞くけど…つみたてNISAもやった方がいいの? 両制度の違いは?
金融庁 あなたとNISA
※3 iDeCo 公式サイト
執筆者:北垣愛
マネー・マーケット・アドバイザー
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