価格は5倍も違うのに、サービスは同じ! そんなチケットを売っているところとは?
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月18日 11時10分
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が、5月25日に全国で解除されました。 広域的な移動や観光などは段階的に緩和されていくことになりますが、ヒトの動きは回復しつつあります。 ターミナル駅近辺などでよく見かける「金券ショップ」も、緊急事態宣言の期間中は一時休業するところが多かったようですが、営業を再開して賑わいが戻ってきています。
「全線優待乗車証」とは
こうした金券ショップですが、同じ商品が店によって5倍近くもの価格差で売られているのを目にしたことがあります。
それは、「全線優待乗車証」(全線乗車証)です。
呼び名は会社によって変わりますが、鉄道会社が株主優待制度の一環として一定の基準で株主へ提供しているものです。
自分では使わない人などが金券ショップに持ち込んで換金された分が店頭に並びます。
内容は鉄道会社によってそれぞれですが、例えば小田急電鉄(※)の場合、概要は次のとおりです(2020年6月時点)。
◇乗車証の種類
全線優待乗車証(きっぷ式、1枚1乗車有効)
◇提供回数・時期など
年2回
・3月31日現在の株主へ5月下旬送付(有効期限:11月30日)
・9月30日現在の株主へ11月下旬送付(有効期限:翌年5月31日)
◇保有株式数と提供枚数(半期)の例(一部抜粋)
・500株以上:4枚
・1500株以上:10枚(3年以上継続して1500株以上保有していた場合は3枚追加)
・2500株以上:20枚(同上)
◇その他
・500株以上保有の株主には、上記以外にショッピング、レジャー、飲食など系列・提携施設等での優待券を年2回送付
同社の[新宿駅-小田原駅]の片道運賃は900円(大人・切符)です。
仮に同社の株価を2650円として500株保有していれば、133万円程度の投資に対して、配当以外に年に最大7200円(900円×4枚×2回)の運賃に相当する乗車を無料で利用できる計算となります。
他の私鉄各社でも、全線乗車証を株主優待で提供しているところは多数あります。
JR系では、運賃や特急料金などが一定率割引される優待割引券タイプとなっています。
どうして5倍近くも価格の差があるの?
こうした全線乗車証の券面に「定価」などは表示されません。
金券ショップでは、最長区間などの運賃を基にケース・バイ・ケースで販売価格が設定されていますが、次のような事例が見られます(2020年6月時点の販売価格の例)。
(例1)小田急電鉄:550円
<参考運賃・片道>[新宿駅-小田原駅] 900円(大人・切符)
(例2)東武鉄道:700円
<参考運賃・片道>[浅草駅-鬼怒川温泉駅] 1580円(同上)
(例3)西武鉄道:450円
<参考運賃・片道>[西武新宿駅-西武秩父駅] 790円(同上)
(例4)京急電鉄:600円
<参考運賃・片道>[品川駅-三崎口駅] 950円(同上)
例えば小田急電鉄の全線乗車証ですが、筆者が新宿駅周辺の金券ショップ店頭の表示価格を5月25日にざっと見て回ったところ、次のように店ごとの数値にかなりの差がありました。
[A店]550円(価格ポップ上に「値下げ中」の追加表示あり)
[B店]500円
[C店]330円
[D店]200円
[E店]180円
[F店]120円(価格ポップ上に「在庫切れ・近日入荷」の追加表示あり)
A店の有人カウンター横の自動販売機では、550円で販売されていました。
以上の例だけでも、最高額と最低額では5倍近い差があったのです。
なお、E店やF店では価格ポップに「有効期限5月31日」と明示されていて、C店やD店の店頭で口頭確認すると、やはり同じ有効期限でした。
前述した小田急電鉄の全線乗車証の概要で、昨年11月に発行されたものは5月31日に有効期限を迎えます。
その直前のタイミングで在庫処分のため大きくディスカウントされる一方、今年5月発行の新しいもの(有効期限11月30日)は通常的な価格で販売されている状況だったと推察されます。
大幅に安い場合は、賞味期限や閉店時間が迫った食品を投げ売りするのと同じような事情だったわけです。
まとめ
このように、[5月下旬]や[11月下旬]などのタイミングで金券ショップを訪ねてみると、在庫があれば思いがけなくおトクな乗車券を手に入れられることがあります。
もちろん、時期にかかわらず通常的な価格で買っても、乗車区間が長くなるとかなりおトクです。
他県への移動や観光が気兼ねなくできるようになってからになりますが、日帰りのハイキングや、ちょっとした温泉旅行などに出かけようとするとき、こうした全線乗車証は使い勝手も悪くない上に、おトク度でもかなりのスグレものといえるでしょう。
[出典]
(※)小田急電鉄株式会社 「株主優待制度のご案内」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
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