老後の生活、共働き家庭なら余裕?世帯年収が多くても注意したい点とは
ファイナンシャルフィールド / 2020年7月26日 23時0分
![老後の生活、共働き家庭なら余裕?世帯年収が多くても注意したい点とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_83273_0-small.jpg)
「老後2000万円問題」が話題になったのは、ちょうど1年前です。公的年金で賄えない不足分が問題になりました。老後の生活の根幹を支えるのは公的年金です。夫婦ともに会社員だった世帯は老後も余裕がありそうですが、そこには注意すべき点があります。
世帯年収の多い夫婦は支出も多くなりがち
世帯年収が多いからといって貯蓄高には比例しない、という話を耳にすることがあります。金融広報中央委員会の調査(「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」によると、年間収入1000~1200万円未満の世帯の10.3%が金融資産を持っていないと回答しています。
その年収で貯金がゼロってどうして? と思いますが、収入が多いと、ついついお財布の紐は緩みがちです。現役時代は毎月お給料が入りますので、今月使い過ぎても翌月に補填できるという強みがあります。
そこで、ちょっと高額な家に住み、車に乗り、レストランで食事する…というパターンに陥ってしまうと考えられます。ご本人たちは「ちょっと」の感覚ですから、それほどぜいたくをしている自覚はありません。
現役時代の生活習慣はリタイアしても継続します。一般的には、リタイア後の生活費は現役時代の7割程度といわれています。
現役時代はお互いに忙しかったので、この機会に旅行に行こう。それぞれの交友関係は尊重したいので、交際費は掛かっても仕方がないね。行きつけのレストランには時々行きたいね、等々。
夫婦そろって厚生年金に加入していれば受給できる年金も多いのですが、現役時代に思うように老後資金を貯金できなかった世帯は、緩んだ生活を締める意識が必要です。
遺族年金の計算
70歳代の女性から、このような相談を受けました。
「お友だちのご主人が亡くなって遺族年金を受け取ることになったら、思っていたより少なくてびっくりしたと言っていました。そのご夫婦は共働きで、それまでは2人の年金で暮らしていたので、余裕があるようだったのに。私は専業主婦で自分の年金が少ないので心配です」
一般的な寿命を考えると、女性が「おひとりさま」になる確率は高いと思います。残された時、遺族年金がいくらくらいもらえるのかを知っておくことは大切です。厚生年金に加入していた夫が亡くなった場合に、妻が受け取る遺族年金の計算方法は下記のようになります。
(1) 夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)×3/4=A
(2) A×2/3+妻の老齢厚生年金×1/2=B
(3) AもしくはBの多い方-妻の老齢厚生年金=支給される遺族年金
「夫が亡くなった後、残された妻は夫の年金の3/4を受給できる」と勘違いしがちですが、夫の“老齢厚生年金(報酬比例部分)”つまり、年金定期便などで確認すると年金の2階部分のみの3/4が該当し、老齢基礎年金は含みません。
妻が専業主婦で厚生年金の加入履歴がない場合は、Aの金額が受給する遺族年金となります。妻も老齢厚生年金を受給している場合は(2)(3)の計算に進みます。相談者の友人の場合です。
<具体例>
*友人の場合 夫の老齢厚生年金10万円 妻の老齢厚生年金6万円と仮定します。
(1) 10×3/4=7.5万円
(2) 7.5×2/3+6×1/2=8万円
(3) 7.5<8
8-6=2万円 支給される遺族年金
*相談者の場合 夫の老齢厚生年金10万円 妻の老齢厚生年金0円と仮定します。
(1) 10×3/4=7.5万円 支給される遺族年金
(金額はイメージしやすいように月額で表しています。)
友人 :自身の老齢基礎年金+老齢厚生年金6万円+遺族年金2万円
相談者:自身の老齢基礎年金+遺族年金7.5万円
友人の「思っていたより少なかった」というゆえんです。一生懸命に働いてきたのに、遺族年金を比べてみるとがっかりしてしまうかもしれませんが、
年金を繰下げた場合はどうなる?
受け取る年金額を増やす方法として、年金の繰下げ受給があります。本来65歳から受給する年金の受取時期を後ろにずらすことで、1ヶ月当たり0.7%増額することができます。
もし70歳まで繰下げると142%にもなります。女性は男性に比べ寿命が長く、かつ年金の受給額が少ないことが多いので、検討を考える人も多いのではないでしょうか。
ですが先ほどの遺族年金の計算式を考えると、妻の厚生年金の金額を増やすと、受け取る遺族年金の金額は少なくなってしまいます。
年金は増やしたいが遺族年金も気になる、という場合の方法として、老齢基礎年金だけを繰下げ、老齢厚生年金はそのまま65歳から受給するというやり方もあります。
それでは「夫の厚生年金も繰下げて増やしておけば、遺族年金も増えて安心なのでは?」と思ってしまいますが、遺族年金の基礎となる厚生年金の金額は65歳で支給される金額と定められています。
今後は65歳以降も働き、年金の繰下げ受給を選ぶ人も増えそうなので、留意しておく必要がありそうです。
毎年、お誕生日の頃に年金定期便が届きます。内容や疑問に答える「ねんきんネット」(ウェブの他 電話0570-058-555)では、繰下げた場合の試算などもしてもらえます。ライフプランの設計に活用されてはいかがでしょうか。
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
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